
多様性とアートを大事にするバークレー交響楽団とバークレーバレエ団のコラボレーションが生み出す豊かさ
今日はBerkeley Symphonyが開催しているコンサートに行ってきました。なんと、娘が通っているBerkeley Balletというバレエスタジオとのコラボが行われたのです!
実際鑑賞してみると、Berkeley SymphonyとBerkeley Balletがコラボレートすることで起きる奇跡を目の当たりにしたようで、この感動を忘れないうちに記しておこうと思いました。
はじまる前から始まる「おもてなし」
バレエ関係者の私たちにとってシンフォニーは馴染みのない分野ですが、そんな状況の人にとってもありがたい工夫がたくさんありました。
例えば、今回のコンサートは、今日演奏される曲全てが、コンサートの順番でSpotifyで聴くことができたのです。
イベントの6日前に送られてきたリマインドメールにはこのように、当日のプログラムも当日の曲の紹介も全て行ってくれていました。
Get a sneak peek! Click here to view the concert program in advance.
Set the mood! Enjoy our Spotify playlist featuring the pieces you’ll hear live!
シンフォニーなんてなんだか遠い世界のもののように感じていましたが、このちょっとした「おもてなし」のおかげで、遠い世界との距離を少し縮めた状態で当日を迎えられてありがたかったです。
おまけに、今回はラッキーなことに、Berkeley Balletに娘をお迎えに行く時に、練習している風景をちらっと見ることができていたので、心の準備はばっちりでした。
事前準備がある中で迎えた作曲家、振付師、チェリストによるトークイベントでは、何のことを話しているのかがよりよく分かるお得さを感じられました。また、音楽、踊りという分野が異なっていても、創作の背景を聴くことで、そこに共通するものがあり、コラボレートすることでお互いが刺激を受け合って高め合っていけるということも知ることができてワクワクしました。

はなされていた内容は例えば、音楽とバレエではカウントの取り方が異なる。だから、十三人のダンサーが呼吸を合わせないといけない時は全員で同じようにカウントし、けど、生演奏だからこそ起きるSpaceを感じる部分では、次の音に合わせて振り付けを入れるなど、録音された音楽では味わえない、生きた音と踊る機会を持つことで、ダンサーも大きく成長する様子が見れたことの紹介などがありました。
音楽とダンスと分野は異なって、お作法なども異なっていたとしても、共通する部分はあり、そしてだからこそ引き出される力があることを知れるのはとても興味深かったです。
そうなのです、ダンサーはBerkeley BalletのYouth divisionで娘と一緒にスタジオで練習している高校生のお姉ちゃんたち。シンフォニーの生演奏と共に大きなホールで踊るという新しさ。わくわくが大きくなります!
尊重し合う優しさが溢れ出てくるバークレー交響楽団とバークレーバレエ団のコラボレーション
そして、迎えた開演時間。シンフォニーの演奏らか始まり、いよいよBerkeley Balletとのコラボが始まります。
音楽は事前にSpotifyで聴いておりましたし、ダンスは娘のお迎えの時にみていたので、何が起きるかわかっていたはずなのに、シンフォニーとチェリストが揃い、Berkeley Balletのダンサーがでてきた瞬間からもう私は涙が出そうになりました。
ダンスと音楽がこれからはじまる緊張感のようなものを感じたからだと思います。さっきトークしていたチェリストが綺麗なドレスとチェロを持って堂々とした姿で座っている様子と、静止した状態で一音目が鳴るのを待つダンサー。バレエスタジオで練習の様子を見ていた時には想像だにできなかった光景と空気感。
裸足で踊るダンサーは静かでエレガントで、音を邪魔しない気配りのようなものを感じます。ダンススタジオとは異なるステージという限られた空間の中、音と相手と自分と踊りのどれも大事にしながら踊る姿にはBerkeley Balletが大事にしている「尊重」「優しさ」の文化を存分に感じました。
Miche Wong先生のアジアを感じる踊り、音をまっすぐに愚直に全身全霊で捉え表現される姿はまるで音を身体で彫刻しているようでした。ここまで真剣に音と踊りと向き合う姿は、自分が好きなものに、もっともっと向き合って、研ぎ澄ませていってもいいんだよ、という許しのような応援のようなものをいただいた気持ちになりました。バレエスタジオのお姉ちゃんダンサーも、これまでに見たことのない表現を輝かせていました。
今回の振り付けは、水をイメージしたとのことで、始まりも終わりもなく、ただあるのは形が変わり循環し続けるということ。人間の感情も同じで、その流れを描いたとのこと。ライトの使い方、影の演出など、心を虜にする工夫が次々と続きました。
衣装の色が音楽とシンフォニーの楽器の色とピッタリで、何よりも、耳から入る音のイメージが、目から入るダンスのイメージに増幅され、胸とお腹がポカポカしていき、終わった後、もう何も聞きたくない、と思うほど、満たされる気持ちになりました。
”Very Berkeley”なコラボレーションでつながる新しいコミュニティ
Intermissionでトイレに並んでいる時、たまたま後ろに並んでいらした方々のお話しが耳に入りました。
きっとクラッシックコンサートに行くことに慣れているベテランの方々なんだと思います。コンサートの感想を伝え合った後、
「こんなにもたくさんの子どもたちが見に来ているクラシックの音楽コンサートは初めてだわ!」と驚かれていました。
そう。クラシック音楽コンサートの観客の高齢化の課題をしばしば耳にします。特にサンフランシスコベイエリアでは、クラシックコンサートなどを支える若者が少なく、舞台芸術の分野が衰退傾向にある、と。全米屈指のお金持ちが集まるこの地域でこのギャップはとても不思議なことで、経済を牽引している人たちを含め、より多くの人たちに舞台芸術を届けるための様々な努力がなされていることを聞いていたので、今回のおばちゃま方のコメントにはなんだか嬉しくなりました。
この背景には、Berkeley Symphonyの若者への取り組みの結果であるとともに、今回は、Berkeley Balletというプロのダンサーから、小さいお子さんまで通っているバレエスタジオとコラボレーションすることで、客層の年齢がぐっと下がったという効果があったんだと思います。そして、結果として、この地域の経済を牽引している保護者世代にも届けることができたのだと思いました。
さらにおばさま方は続きます。
「私はMidwestで育ったから、クラシック音楽コンサートはみんなWhiteだったけど、ここはなんてDiverseなんでしょう!」と。
”Very Berkeley"な作品ですと紹介された前半部分。そんな多様な文化・人種・価値観が集まるバークレーらしい作品を高く評価してくださるおばさま方のお話しを聞きながら、クラシック音楽コンサートの持つ可能性の大きさに思いを馳せざるを得ませんでした。
Performing Artsに関しては、Berkeley Balletの取り組みしか知らなかった私も、今回Berkeley Symphonyのコミュニティの温かさに触れ、音楽とダンスというジャンルは異なっていたとしても、多様性、アート、表現、など大事にしている物が共通する安心感なようなものを感じました。
そして、なんと今日のコンサートは、K-12(幼稚園から高校3年生まで)学生は全員無料。付き添いの保護者も$15で見させていただけました。
それだけ多くのサポーターに応援されているBerkeley Symphony。
言葉ではなく、アートを通した表現で繋がるコミュニティ。
それを支えることを大事に思っている人がたくさん暮らす街。

そんなことを考え始めると、とても暖かい気持ちになってきました。
シンフォニーとか、コンテンポラリーダンスとか、どこか自分とは関係のない遠い世界のように感じていました。しかし、今回のこの体験は、そんな遠くにあると思っていた世界は実は、同じ一人の人間が全身全霊を込めて生み出し表現しているものなんだという、共通性に目を向けさせてもらえる機会ともなりました。
まとめ
多様性やクラシックの流れを大事にするバークレー交響楽団とバークレーバレエスタジオで作り上げられた作品を鑑賞することで思ったのは、そこで生まれるコミュニティの豊かさについてでした。
そんな豊かさは、これまで人類が築いてきたことに学びながら、自分も相手も異なる分野の取り組みも尊重しながら、自分に正直にその人にとっての「アート」を仲間と共に磨き続けることで広がっていくのかもしれないと、お腹の中がぽかぽかし続けていました。
こんな素敵な時間を本当にありがとうございました!