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アメリカの高校生の日本語テスト:AP Japaneseテストで求められる力

アメリカで日本語を学んでいると、高校生になるとAP Japanese Testというものを受験できると耳にする機会が増えてきました。

補習校などを通して日本語を継続しているお子さんにとると「簡単!」ということをよく耳にしますが、補習校に行かず読書と作文のみで日本語を継続してきた私の娘にはどうなのか、本人が「受けてみたい!」と言ったことをきっかけに少し調べてみたので、そのことについて今日は書いてみようと思います!


AP テストとは

AP とはAdvanced Placementの略で、Testに合格することで、高校生でもその分野では大学レベルの内容も理解できることを示せます。

APには、研究、アート、英語、歴史、社会、数学、コンピューターサイエンス、サイエンスと38科目がありますが、その中の一つにAP World languages and Culture という分野があります。

中国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ラテン語、スペイン語とそして、日本語も準備されています。

毎年5月ごろにAP Courseのある高校で試験が行われるので、その前の9月ごろからAPテストを主催しているCollege Boardへの登録など申し込みの準備を始めます。


そもそもAP Japaneseでは何が測られるのか?

AP Japaneseの試験内容についてはこちらでまとめてみました。

ここでは、APのWorld languages and Culture 全体として何を目指しているか、という点を中心に書いていこうと思います。学習する上でのスタンスをクリアーにする一助になればと思います。

APについて調べているとわかるのは、どれだけ漢字が書けるか、どれだけ語彙力があるかも大事ではありますが、それよりも、学んできたことをどれだけコミュニケーションで実際の場面で使えるか、という点を大事にしていることがわかります。

具体的には、以下の「5つのC」を身につけるためと書かれています。

ACTFL membership, 2021, "World Readiness Standards Overview"[Video], youtube, https://www.youtube.com/watch?v=GIDCLE-JsM4&ab_channel=ACTFLMembership

〈5つのCとは〉
C
ommunication:いろんな場面でコミュニケーションが取れるようになること
Culture:文化的な理解を踏まえて交流ができること
Connection:自分自身のこれまで知っているものとのつながりを見つけ、批判的に考え創造的に問題解決していけること、いろんな視点からの情報が収集できること
Comparison:自身の言語と外国語を比較検討することで、言語や文化についての本質を掴もうとすること
Communities:学校以外の文脈でもどんどん使うこと

https://www.actfl.org/uploads/files/general/World-ReadinessStandardsforLearningLanguages.pdf

その中でも最も大事にしているのが”Communication"。
コミュニケーションには三つの形態があると述べられています。

① Interepersonal:誰かとの間で行われるもの。例えば、会議のアポをメールで取ったり、Zoom会議でやりとりができるか、など。
②Interpretive:提供された情報を理解できるか。例えば、読解、聞き取り。
③Presentational:自ら情報を発信できるか。例えば、資料の作成、録画をとるなど。

ACTFL membership, 2021, "World Readiness Standards Overview"[Video], youtube, https://www.youtube.com/watch?v=GIDCLE-JsM4&ab_channel=ACTFLMembership

大事なのは、「どのように(文法)」「何を(語彙)」だけでなく、コミュニケーションで使えるように「なぜ」「誰に」そして「いつ」それらを使うかという知識も大事にしていることがわかります。

"Standards for Foreign Lanaugae Learning Preparing for the 21st Century",p4より

そして、これらの3つのコミュニケーションの形態それぞれにおいて、   以下の基準をどのくらい満たしているか、ということで採点がされます。

Functions and Task :何ができるか
Accuracy :どのくらいの正確さで
Control of Context and Content: 文脈に適応しながら
Text Type:操れる情報の範囲

ACTFL, 2024, Proficiency Guildeline 2024, p4 より

この動画がとても分かりやすかったです!

「休」という漢字を事例にAP Japaneseを考えてみる


つまり、日本の小学校一年生と同じように、花、火、休という漢字を知っていたとしても、その漢字をどんな場面で誰とどのように使えるか、それによって既存の価値観がどのように変わり、言語や文化の本質への理解が深まったか、などがAPでは問われるのでしょう。

例えば、「休」という字。
一年生だと、成り立ちで木陰で人が「休む」姿からできた、
休み時間
など自分の身近なことと繋げて考えるかもしれません。

APJapaneseになると、
「休」という字を使って、漢字の成り立ちや語彙だけでなく、日本の休暇の考え方について、アメリカのものとの違いと共通点、そのような考え方の違いの背景にある文化的な要素はなにか、休暇を通してコミュニティーと繋がっていくことができるかなどが見られることになります。

ふー。なかなかのボリュームになってきたので、今日はこの辺りで一旦ストップしようと思います。

まとめ

ここまでのことを私なりにまとめると、AP Japaneseでは日本語の漢字力や語彙力を測るというよりも、学んだ語彙を使って、

- 日本語話者と意見の交換ができますか?
- 日本語で自分の意見が伝えられますか?
- 日本語で情報を得ることができますか?
- 日本語を学ぶことを通して日本の文化、自分の文化についての理解は深まりましたか?
- 日本語を学ぶことで、他の教科や知識の理解が深まりましたか?
- 日本語を学ぶことで、これまで知らなかった価値観やものの見方があること感じましたか?
- 日本語を学ぶことで、英語、日本語、それぞれの文化の違い、共通点など何か気づくことはありましたか?
- 学校以外のコミュニティーで日本語を使うことができますか?

ということが問われるということがわかりました!
では次のNoteでは具体的にどのような問題かそして、どのような対策が必要か、について考えてみたいと思います!



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