ピストルズの曲の中では、『No Feelngs』が一番好きだと言う小沢一敬氏。それについて、ちょっと思うところがあるので書いてみる
依然渦中のスピードワゴン小沢一敬氏。パンク好きの彼いわく「ピストルズの曲の中で一番好きなのが『No Feelngs』」らしい。
『No Feelngs』ねえ。アルバム『NEVER MIND THE BOLLOCKS』ではA面3曲目の曲。一時期、パンク雑誌『DOLL』でライターやらせてもらっていた者から言わせていただくと、ピストルズの曲の中でこれが一番好きという人はあんまりいない気がする。むろん、人それぞれ、好きずきあってなんらかまわない。某パンク・ミュージシャンもそれを挙げているようだが、その理由は「バンドを始めたとき一番最初にプレイしたから」らしい。それなら納得できる。
いや、好きずきあってなんらかまわない。
じゃあ、お前はなにを選ぶんだ?と聞かれたら、『Holidays in the Sun』か『Bodies』か『God save the Queen』か『EMI』あたり。複数選んでしまったが、その日の気分で変わるということで。でも、まあ、ピストルズらしい派手さを優先した、フッツーの選曲じゃないだろうか。『No Feelings』は選ばない。
いや、しつこいが、どの曲を好きになるかは各自自由。ただ、こういう状況になって、なんというか、彼ならではの心に秘めたものをいろいろ深読みして、詮索したくなってくるという。
ご承知のように『No Feelngs』の邦題は「分かってたまるか」。うむ。そして、歌詞を見てみると、
鏡の中のお前に出会ったのが、この話の始まりだ
お前に惚れたのさ、お前の大罪まで愛してるぜ
お前は考えを誰にも漏らさない、でもお前といるのが大好きさ
お前から離れるのは金が尽きた時だけ
他人に心を動かされた事なんかなかったぜ
わかってくれよ、俺は自分に恋してるのさ、自分自身に 美しい自分に
「You」を適宜どう解釈するかによって変わってくるが、「自分」と解してよい箇所はいくつもあり、ナルシシズムな内容を多分相応に含んだ世界観と言ってよいだろう。うーむ。
前の曲、A面2曲目『Bodies』の邦題が「お前は売女(ばいた)」ということを踏まえると、そのギャップの妙味も出てくる。
彼は「ギターを弾いてて気持ちのいい曲だから」とも説明しているが、あんまりピンと来ず。名曲満載のピストルズにあって、この曲だけ「弾いてて気持ちがいい」と言われても、いまいち乗れない。ギターを弾けない自分だが、『Holidays in the Sun』のほうがいろんなパンク・サウンドの要素が入ってて、弾けたら気持ちいいだろうと思う。
いや、完全に好みの問題。
とはいえ、10代のパンク少年ならいざ知らず、話が単純すぎてツマラナイというか。いろいろなんだかんだ1周回って『No Feelngs』に行き着いたって話なら説得力が増すというものだが、どうもそうじゃないように受け取れるのが、同じパンク好きオッサンとしては不満……。
無感情 (No Feelngs) 無感情(No Feelngs) 自分以外には無感情(No Feelngs)なのさ
クラッシュやブルーハーツと並んで、彼の中では圧倒的にパンクな位置づけらしいダウンタウン。
「ダウンタウンの前では否応なしに(いや、努めて?)無感情になってしまった」では情けない。いくら曲を賞賛されても、ヴォーカル兼作詞作曲者のジョニー・ロットンはただただ呆れるだけだろう。