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17、8年前、東京医大病院の医者から「あなたの体は10万人に1人」と言われたことについて書いてみる

昔、東京医大病院の先生から「織田さん、あなたの体は10万人に1人ですよ」と言われたことがある。最近、不意に思い出した。

「10万人に1人」というレア的事象を忘れていたとはどういうことか? と訝しがる方もおられるかもだが、いや、けっして自慢できることではないので。筋肉的にどうとか、身体能力に関わることなら忘れるはずはないが、要はそういうことではなくて。

最近はそうでもないが、一時、自分は結石に苦しんだ。腎臓結石や尿管結石の類。35歳のときに初めて発症して、それから7、8年、コンスタントに症状が現れて痛み苦しんだ。一度でもなったことがある人ならわかると思うが、本当に痛い。一部ネットによると「病気の痛みではダントツ」という説もある由。その真偽はともかく、文字どおり、七転八倒悶絶して苦しむものというのは間違いない。

あれは何度目の発症だったろうか。夜(9時頃?)、街を歩いてたら、急にお腹が痛くなった。猛烈な痛みで歩くことができず、しゃがんだまま動けない。

あらためて思い出したが、あのときは、それまでの痛みとは微妙に異なる感じで、結石以外の病気のように思われたのだった。しょーがなくケータイで救急車を呼んだ。すぐに来てくれて、事情を説明。「自分のために呼んだ」旨告げると、隊員の方はちょっと驚いた表情を見せたが(印象的)、よけいな説明をしている余裕はない。とにかく乗せてもらった。

「医大病院でいいですか? どこか指定の病院があるとか……」
「どこでもいいです……」

西新宿の医大病院に着くと、さっそく検査。猛烈な、痛みが続く中、医者にグリグリ腹部や腰を押されて診断され、その後、レントゲンとCT検査を受けた。

時間にして3、4時間経過した頃だったろうか。ベッドで寝てると急に痛みがやわらいできた。「ん? 痛みがひいてきたような?」。医者にその旨伝えると、「今日は帰っていい」と言う。そのあたりで自分も思い当たるフシが出てきて、「これは例の結石というやつだったか」(知る人ぞ知るように、結石は詰まりの状態から脱するとまるで痛くなくなる)。医者に聞くと、「まだ検査の結果が出ないので、なにも言えない。あらためて、今日(日付は変わっている)の午後に来てください」と言われる。

午後、病院へ。痛みはもうまったくなく、自分としては結石のつもりで気持ちに多少余裕があった。大病の心配はないだろう、と。名前を呼ばれて、診察室に入る。

中央に若い医者が座っている。「こちらへどうぞ」と促され、座った……のだが、奥を見ると、医者がもう2人いるではないか。2人で光に浮かんだレントゲンかCTの画像を見ている。「ふむ」「ほおー」などと言いながら。2人を見ると、医者のコントにいかにも出てきそうな、髭を生やした年配の方々。重鎮の教授という感じ。

状況を鑑みるに、2人が見ている画像は、どう考えても自分のものだろう。瞬時に心配になってきた。「おいおい、まさか厄介な病気とか……?」。しばし、静寂。最初に言葉を発したのは、重鎮教授の1人だった。

「織田さん、あなたの体は非常に珍しいものですよ。たぶん、10万人に1人ぐらい……」

当方、まったく状況が呑み込めず。すると、もう一人の重鎮教授が続けた。

「2つの腎臓から膀胱に繋がる尿管は通常1本ずつですが、あなたのは片方は1本で、片方は2本あるんですよ。なかなか珍しい体です」

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ここに至って、理解できた。なるほど、そういうことか(ホッと安堵)。聞けば、2本のほうは本来1本のものが(胎内時に)分かれたせいかどちらも細く、結果的に、単に2倍の確率以上に結石が詰まりやすい状態ということらしい。

と、ここで疑問が口に出た。

「えーと、結石はこれまで何度かできて、病院で検査も受けてるんですが、そういうことは初めて言われました……」
「病院はどこで?」
「中野の●●とか、阿佐ヶ谷の■■とか……」
「ああ、そこらじゃ気づかないでしょう。ハッハッハ!」

医師3人が大笑い。さながら、大団円の様相。

これが「10万人に1人の体」の話の顚末。実際、正確な数値としてそういう割合かどうかはよくわからない。もう何年も結石にはご無沙汰なので、尿管のことを考えることなどほぼ皆無になっている。

うーん、なにかの学会で、レアケース代表で自分の画像が使われることがあれば、なんとなく嬉しい気もするが……(苦笑)。



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