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過小評価? 意欲的な失敗作? 大好きなアルバム、ザ・ローリング・ストーンズ『ビトウィーン・ザ・バトンズ』(1967年1月)について語ろう・その2
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織田祐二 A面4曲目「コネクション」。キースがライヴで演るほどお気に入りの曲らしい
相方 らしいですか?(苦笑)。あ、この曲はあんまりお好きではない?
織田 ブライアンの貢献度が薄い
相方 やはり、そこ(笑)。キースは、ギターにベースにピアノに大活躍です
織田 なんか、フツーに感じるロックンロールですね
相方 キース・ファンは黙っちゃいないはず
織田 あくまで自分の感想で(苦笑)。次は「シー・スマイルド・スウィートリー」。越谷氏は「オルガンはイアン・スチュアート」と書いてますが、弾いてるのはキースですね
相方 越谷氏の昔の記述のミスはいいです(苦笑)。キースは前曲に続き、ここでもベースをプレイ。ビル・ワイマンの立場は……
織田 ミックのヴォーカルとベースが前面に押し出たバランスが妙味で聴きどころ。一説には「ペイパーバック・ライター」の針飛びチャレンジに対抗したのではないかという
相方 そうなんですか(苦笑)。たぶんいまの人はわからないと思うので、あえて説明しておきますと、ビートルズの「ペイパーバック・ライター」はベースの音を殊更際立たせた形で録音がなされており、当時のレコードはそれにより針飛びを起こす可能性があったと。ビートルズのレコード会社は「そういうレコードだったら、ラジオでかけてもらえなくなる。やめてくれ」と進言したものの、「だったら、かけてもらわなくて結構」というポールの意見により、レコードはそのまま発売された経緯が……
織田 音量デカめのキースのベースとミックのヴォーカルで負けずに針飛びやったろうじゃないかという目論見……
相方 それだと、次のA面ラストの「クール、カーム・アンド・コレクティッド」がいい迷惑ですよ(笑)
織田 「クール、カーム・アンド・コレクティッド」、いい曲だなあ。大好き
相方 ブライアンの貢献度が凄まじい楽曲ですね。そして、ニッキー・ホプキンスのピアノも
織田 ただね、昔、自分が接した話では、ブライアンは、ダルシマーとバンジョーとカズーとハーモニカの4つをプレイしてるはずなんですが、最近の説によると、ハーモニカはミック説が幅を利かせてるようで
相方 越谷氏はなんて書いてるんですか(笑)
織田 とりあえず、「カズーはキースが演ってる」と
相方 じゃあ、ブライアンはダルシマーとバンジョーだけなんですね
織田 いや、自分が昔読んだ、アメリカ人だかの音楽評論家が書いた記事では、ブライアンは4つの楽器をプレイしていると。ただ、その評論家に言わせると「ブライアンはやりすぎ。バンジョーとカズーは不要でいただけない」と書いていた
相方 間奏のカズー、ノリがあっていいですよね。ブライアンにせよ、キースにせよ
織田 うむ。ラストのハーモニカはブライアンと信じたいですが、ただ、セッション的なレコーディングで、その間、ミックはなにをやってたのか? と問われると答えに窮する。やっぱ、ミックが吹いてるのかなと
相方 この曲について『CDジャーナル』はこう書いてますね。「イアン・スチュワートのホンキートンク・ピアノやカズーをフィーチャーしたラグタイム調の曲だが、さらにサイケデリック・ロック風のギミックも挿入され、最後には混乱した状態でエンディングへと雪崩れ込む。当時のストーンズらしい意欲的な失敗作」
織田 イアンは弾いてないし、イアンよりも、ミック、キース、ブライアンの担当楽器について言及していただきたい(苦笑)
相方 この性急で怒濤のエンディングの手法は、ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のエンディングに受け継がれるらしいです
織田 言われてみると、そんな感じもする
相方 あくまでネットの意見ですが
織田 まあ、自分はこの曲における「ブライアンのダルシマー、バンジョー、カズー、ハーモニカ演奏」説を頑なに信ずる者ですが、とりわけ、興味深い演奏が、我が国の明治時代の名歌? 「鉄道唱歌」風のメロディをバンジョーで奏でる箇所
相方 ありますね。えーと、2分45秒ぐらいからの演奏
織田 あれはなんなんだろう。元々、イギリスの民謡あたりにああいうフレーズがあるのかしら
相方 さあ、それは(笑)。確かにブライアンが「鉄道唱歌」を知っていたとは思えず
織田 1966年に来日したビートルズは、日本の、いかにも日本的なサウンドのレコードをかなり持ち帰ったようですが、案外、その中に「鉄道唱歌」があって、友人のブライアンが貰いうけたかなんかで聴いたというのは……
相方 それは思いきった新説かも(笑)
織田 うむ。我ながら推論としてはなかなか夢があっていいような。そうでもないか
(つづく?)