埼玉県の撮影会中止騒動で浮上した「グラドルは性の商品化か?」問題。森咲智美さんの重要ツイートをもとに、さらなる問題も含め、グラドル関連執筆歴25年のライターがあれこれ考えてみる
今回の騒動を受けて、何人ものグラドルが意見、持論を表明しているが、筆者が一番興味深く読んだのが、森咲智美さんのツイート。
真っ向反論ではなしに「残念だな」「じゃないかな?」といった言い回しが謙虚な彼女らしくて、とても好感が持てる。本当はもっといろいろ物申したいはずだが。
彼女が提起した「グラドルは性の商品化か?」問題。さらには「グラビアは芸術じゃないか?」問題について、ライターとしてちょっと書いてみたい気になった。
まずは「性の商品化」という言葉。よく耳にする言葉だが、グラドル・メディアではまず間違いなく使われない言葉。侮蔑的な意味合いが強いし、アイドルに対して「商品」という言葉はふさわしくない。やはり、グラドルとは相当距離をおいた外部の人間が使う言葉だろう。
ネットで調べてみたところ、上のような記述を見つけたが、「自ら進んでやっているもの」と「やらされているもの」がゴッチャになっているような印象が多分にある。おそらく、今回の議員衆もそこは精査することなく、印象と感覚だけで暴走したのだろう。
グラドルが性をウリにしているのは間違いない。このあたり、自分は下世話に忌憚なく言うが、そこを変にかっこつけて、もったいぶって言うと誤解が生じる。拙著『グラビアアイドル「幻想」論』では「使える」といった言葉を用いたはずだが、ストレートな言い回しは避けるにせよ、グラドルの楽しみ方の大きな要素としての性的な魅力を無視するのはナンセンスだろう。イメージDVDの内容の過激化が進む中、自分はインタビューでは決まって「見せ方の限界」や「印象的なシーンの撮影時の実情」などを聞くわけだが、そういう質問はして当然だろう。そういった「視聴してわかってること」を、互いに話しづらいだろうからと推し量り、あえてスルーするライターがいるなら、それはグラドルライターとして失格だ(イベントなどの取材で質問時間が1分とかしかないときにはそういうことはまず聞かない。あくまでインタビュー時。質問の内容の優先順位は当然ある)。
グラドルは性の商品では決してないが、性の魅力を全面全開に表出した存在、仕事であるのは揺るがない事実だ。
続いて、「グラビアは芸術か?」問題。森咲さんは「かな?」という言い方をしているので、あくまで問題提起された形ということで彼女がどうというわけではなく、ここからは筆者なりの感慨を。
芸術という言葉を考えるときに、自分なんかがまず思うのは、それが主観的なものか客観的なものかということ。それはグラドル本人の考えもそうだし、受け手のファンの考えもそう。
ネットでその論議を見てみると、やはり、両方の意見が出ている。作り手がそう思っているのに、受け手がそれを認めないという事例は珍しくないだろう。一方、作り手にそういう意識がまったくなくても、受け手が反応し、解釈し、絶賛し、そういう評価に至るケースも多々あるだろう。
グラドルの場合はどうか。書き手の自分の経験から言わせてもらうと、「彼女のプロポーションは芸術的」「今回のショットは芸術的」といった文章を書いたことは度々ある。あるはず。そういうふうに思わせるビジュアルやショットは確かにある。そうやたらめったらあるわけではないが、あるのは間違いない。
対して、グラドル本人が「今回の作品は芸術ですよ」といった感じで言ったケースは、あんまり記憶にない。案外内心ではそう思っていても、口に出すのはおこがましいという気持ちが先行し、言わなかった例なんてのはあったかしら。まあ、絶対ないとは言えない。
森咲さんは問題提起しただけと言っときながら、あらためて、彼女の言葉に注目してみるとして(苦笑)、「グラビアって」という客観的な言い方であって、「ワタシのグラビアって」とは言ってないのね。
そんな傲慢な言い方を殊勝な彼女がするはずもないが、トップ・グラドルの(文字どおり)誇り、気概として、彼女がそういうふうに思っていてもなんの問題もないというのは言っておきたい。実績にしろ存在感にしろ、それだけの域に到達しているグラドルであるのは間違いなく、グラドル・ファンなら否応なしに納得できる言説であるという。
上の画像を見て、いやがうえにも芸術美を感ずるグラドル・ファンは少なくないだろう。
なるほど、書いてて我ながら腑に落ちるものが……。グラビアが芸術かは当面置いておくとして、それが芸術的であったり、芸術美を感じさせるものであるのは確か(すべてのグラビアがそういうわけではない)。先ほど書いた過去の自分の言い回しも「芸術的」だった。いや、長いこと書いてきてハッキリ「芸術」と断じた局面もあったかもだが。
言い方次第で単なる言葉遊びじゃ? と言うなかれ。そもそも、「性の商品化」なんて言い回し自体、究極の言葉遊びなのだから。
「グラビアは芸術か?」の議論は、今後もことあるごとにやっていきたい。森咲さん以外のトップ・グラドルの方々の意見も聞ければ幸いだ。