過小評価? 意欲的な失敗作? 大好きなアルバム、ザ・ローリング・ストーンズ『ビトウィーン・ザ・バトンズ』(1967年1月)について語ろう・その1
織田祐二 今回は、ストーンズにおける微妙なポジション、微妙な評価のアルバムの最高峰と呼んで過言じゃない、このアルバムについて語ってみたい
相方 アナタ、かなり好きなアルバムですよね
織田 なんだかんだ、ストーンズで一番好きかもしれない
相方 相当珍しいですよ
織田 うむ。それはよーくわかってるつもり
相方 やはりそれは、ブライアンびいきゆえの……
織田 それもあるし、60年代中盤以降のビートルズやホリーズやタートルズあたりの音が好きな身として、もうドンピシャな音というか
相方 『リボルバー』とか、『フリーク・アウト!』とかキンクスの音あたり、引合いに出されるアルバムですよね
織田 そうですね。で、あえて言うまでもないですが、自分が好きなのはUK盤のほうで
相方 そこは譲れない部分と。でも、ネット見ると、そういう人はけっこういるようで
織田 多いはず。やはり、「イエスタデイズ・ペイパーズ」から始まらないとダメ。『アフター・マス』もUK仕様の「マザーズ・リトル・ヘルパー」からじゃなきゃダメだし
相方 作品の特長、方向性をまず頭で示してくれる楽曲。シングルの「レッツ・スペンド~」だと、アルバムが持つカラーと微妙に色合いが違う……
織田 自分がこのアルバムを最初に聴いたのは10代のとき。1987、8年? に最初に国内盤でCD化されたヤツを買ったんだけど、アラフィフの音楽ファンならご承知のとおりUS盤なもので、長らくピンと来なくて
相方 10代でそこまで違和感持ちました?(笑)
織田 言い過ぎか(笑)。まあ、単純に一緒に買った『12×5』や『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』に比べて、なんだか小難しい感じで地味だったということなんだけど
相方 でも、やはり、US盤で抜けている「バック・ストリート・ガール」あたりの重要性はありますよね
織田 曲の並び、流れですね。『アフター・マス』の「レディ・ジェーン」しかり、3曲目にとびっきりのバラードを持ってくるセンスが大切
相方 1曲目の「イエスタデイズ・ペイパー」って、そんなにいいですか?(苦笑)。ビートルズの曲のタイトルを2つくっつけたような印象で作風もいかにもビートルズ的な……。確かにブライアンのマリンバやジャック・ニッチェのハープシコードの音が幻想的ですが
織田 そこで躓くと、もうこのアルバムはダメでしょうね。まったくストーンズらしくないのがよい
相方 身も蓋もない言い方(苦笑)
織田 そうなんだから、仕方がない。1分15秒から、およびラストの「フー・ウォント・イエスタデイズペイパーズ」のシンギング。片チャンネルずつ交互に来て、最後両チャンネルで合唱、「ペイパーズ!」と相成る。微笑ましいなあ
相方 ………(笑)
織田 2曲目の『マイ・オブセッション』は、これは厄介なシロモノでね
相方 というか、全曲語るんですか?
織田 まあ、行けるところまで(苦笑)。この曲はなにがいいのか、長らくわからなかった
相方 単調で、なんとも斬新ですよね
織田 最初に買ったCDの解説には、確か「『ゲット・オフ・オブ・マイ・クラウド』を彷彿させるドラミング」みたいなことが書かれていたんだけど、いまいち理解できなかった
相方 書いたのはもちろん越谷氏……
織田 まだまだロックには疎い身でしたが、うーん、これはほかに書きようがないからなんじゃないか? というのを敏感に感じとった(苦笑)
相方 のちに、ブライアン・ウィルソンがこの曲をベタ誉めしていることを知るわけですね
織田 それもねえ、冷静に考えるとよくわからない言説。たまたま精神的に不安定なときに本作のレコーディング・スタジオに表敬で行って、そのときたまたま録音していたのがこの曲だったという。「チャーリーのパワフルなドラミングに感銘を覚えた」みたいな話が伝えられているわけですが
相方 確かに割り引いて話を受け止める必要ありそう(苦笑)。「ストーンズではこの曲と『サティスファクション』が好きだ」みたいな言い方もなんだか腑に落ちない、スッキリしない話で
織田 案外、その2曲しか聴いてないんじゃあ
相方 さすがにそれはないと思いますが(笑)。コーラスのハモりは「ペイパーバック・ライター」あたりを意識してるということでいいんですかね
織田 うむ。まあ、そんな感じですよね
相方 なんか投げやりな言い方(笑)
織田 いやいや。個人的には、のちのテクノへの影響なんてのも考えてしまう
相方 なるほど、そういう評価も成り立ちますか。3曲目は前述の「バック・ストリート・ガール」
織田 ゲスト奏者のニック・デカロのアコーディオンがとても心地よい楽曲。越谷氏は、「ブライアンが弾いている」と書いてますが、誤りですね
相方 ファンのブログでもそういう記述は見受けられますね。正直、「レディ・ジェーン」に比べると出来はやや落ちるような
織田 このアルバムには至極合ってるという見方、評価で……っていうのは無理くりの結論ですかね(笑)。この曲に限らず、本作は大半の曲がステージでは披露されてないので、地味な印象や評価が下されるのは仕方ない
相方 ワルツのリズムにあわせたアコギの音色がとても切ない
織田 ストーンズ十八番の、歌メロを奏でる間奏も。いや、ほんといい曲です
(つづく)
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