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カラフルなひと

「先輩はカラフルなひとですよね。」

高校3年生、部活を引退したとき、後輩からもらったメッセージにそう書いてあった。

私の見た目は決して派手ではなかった。いわゆる地味な、一般的な高校生だった。

なんせ部長なもんだったから、規則から外れるなんてご法度。部長が規則に反していたら、誰も信用なんてしてくれない。

黒髪ショート。もちろんすっぴん。スカートなんて膝下が当たり前。部活に3年間を捧げていたノーマル高校生。個性など何一つなかった。

合唱するために高校に入学した私。

歌う曲のジャンルは様々。

ポップス曲を歌うこともあれば、コンクール曲としての難しい曲も歌う。

年間通して50曲ほどは歌っていたと思う。

歌う曲はたくさんあるけど、同じような音色に、決して私はしたくなかった。

それぞれの曲の個性を最大限に引き出したかった。

もしポップスなのに合唱の声で歌われたらどうだ。

分からないけど、私だったらがっかりする。

絶対自分の歌いやすさを優先したくなかったのだ。

それが私のポリシーだった。

ちなみにメッセージには続きがあって、

「決して先輩の見た目がカラフルでは無くて、内面のことです。こんなカラフルなひとに出会ったことがありませんでした。先輩に出会えて僕の人生の刺激になりました。」

純粋に嬉しかった。ああ、彼には伝わっていたんだと。

その瞬間、自分が歌っている理由を見い出せた気がした。

いまでも歌えている理由は、彼のメッセージがあるからかもしれない。

文章は自分の想像以上に相手に伝わる。

プラスに作用することもあれば、マイナスになることもある。

文章に救われた私のように、知らないところで役割を果たせたら感無量である。

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