お前、なんでメソメソ泣いてんだよ！飲むぞ！

いかにも彼が言いそうなセリフだ。

今日、高校時代にお世話になったS先生の訃報を聞いた。

今月の21日に亡くなったらしい。

死因はくも膜下出血。

S先生とは高校時代に出会った。サッカー部の顧問で、だれからも愛されている先生だった。

先生の趣味は合唱らしく、週末パパさんコーラスに参加していると話していた。

それが理由だからか、S先生はわたしが所属する合唱部の練習やコンクールにも顔を出してくれていたし、私が高校3年生の頃にはサッカー部と合唱部の顧問を掛け持ちしていた。

S先生はいっつも明るい太陽のような存在だった。S先生と話していたら生徒は自然と笑顔だったし、その場が一気に明るくなった。

高校3年生のコンクールの時にも、課題曲で振り付けをしなければならないパートがあったときに、サッカー部の部員全員を呼んで、振り付けに対しているかどのように見えているか協力してくれた。自然と普段仲良くなれないサッカー部とも交流がもてた。

結果的に私たちは全国3位になることができて、S先生と一緒に喜んだのを覚えている。

高校を卒業したあとも、S先生とは卒業生のOGとして関わる機会が増えた。

県のコンクールはもちろん、関東大会や全国大会も合流してからは、一緒に演奏を聴いていろいろ歓談していたな。

いっつもS先生は言っていた。
「本当コンクールって何なんだろうな？それぞれの学校によって、カラーが違うのに順位つけるっておかしくないか～？みんな楽しく歌えばいいのによ～。楽しむっていう気持ちがみんな足りなすぎるよな～」

S先生の気持ちはよくわかる。わかるんだけどさ、コンクールは学生にとって戦いなんだよなんて思いながら。

「楽しく歌えばいいんですけど、なかなかこれが難しいんですよ。とくに中学からコンクールに慣れている人々は難しくて、どうしても順位が気になっちゃうんですよー」

そんな会話をコンクール毎に交わしていたな。先生は前に言ったことを忘れているのか、毎回新鮮に同じことを言ってきた。でも私は前も言ってましたよねとは言わずに、同じセリフを言い返した。

こうやって書いているだけでも、S先生との思い出が蘇ってくる。物怖じせず、正直に自分の意見を言う先生が大好きだった。

S先生の見た目は、あれだ。たぬきみたいだ。

サッカー部の顧問だから常に黒く、私が卒業したあとは教師を辞めてサッカー指導をしていたけど、久しぶりに会っても相変わらず黒かった。

眉毛が少し下がってて、つぶらな瞳で笑うと目がなくなってしまう。なんともかわいらしかった。

常に人のことを考えている先生だった。私が元気がないときもいつも励ましてくれたし、何か悩みがあったときも、じっくり飲みながら話を聞いてくれた。

先生はしばらくして、教師をやめた。

そういった経緯もあって、私が大人になったあともちょくちょく飲みに行っていた。

いっつも「おーい元気か～？」と、声をかけてくれた。

相変わらずいっつも笑顔だった。病気はしていたけども、完治し元気そうだった。

6月ごろ、私がたまたま先生の住んでいる近くに行ったので「飲みに行きましょう」と誘ったのが最期になってしまった。

久しぶりの居酒屋に感動していたものの「サッカーの放送が早くあるから帰らなきゃ」と、S先生は言っていた。

だが、酒の量が増えるにつれ、久しぶりに飲むのが楽しかったからか、結局試合が終わっていても飲んでいた。

次の日飲み過ぎてしまったと後悔したけど、今思えば私の突然誘ったのは、何かの知らせなのかもしれないと思わざるを得ない。あのタイミングを外していたらまた会えていなかったのかもしれない。

LINEのメッセージを見返すと泣けてくる。

「また飲みましょう」という私のメッセージに、

「いつでも大丈夫です！連絡待ってます！」って......。

先生、いつでも大丈夫じゃねえじゃねーかよぉぉぉぉぉ。もうまたあんなふざけた感じで飲めることはないのかよぉぉぉぉ。

酔っぱらって、思い出話して、懐かしい先生に電話して、きっと翌日電話履歴見て後悔してさ。

そんなこともできないじゃんよ。先生逝くの早すぎるよ。まだ54歳じゃない。

でもさ。こうやって悲しんでいたら、きっとS先生は

「こたじまぁぁぁ。なに泣いてんだよお前。お前らしくもっと飲んで楽しめよ～。俺ごときで泣いてるなんて、お前らしくねぇぞ？」なんて笑って言うんだろうなぁ。

そう言われてると思うと、さらに涙止まらないけど。鼻水もだらだら流しながら書いてるよ今。

LINEでメッセージをしても、もう返事がこないんだと思うと本当に意味がわからないよ。

でも私が悲しんでいて、S先生は絶対嬉しくないと思うし心配するだろうから1日1日生きてくよ。

先生、もっと飲みたかったよ。突然すぎて言葉がでないけど、本当に大好きでした。

本当に本当にありがとう。言葉では言い表せないほどの感謝でいっぱいです。

2021.08.24 あなたを愛する生徒より。