
出居番ラジオ♯15 やまぐちなおとさん|関係のつながりが交差する場所|シェアハウス「うら町base」
出居番ラジオ パーソナリティのおーきです。
今回のゲストは、やまぐちなおとさん!
フォトグラファーで、シェアハウス「うら町base」の管理人。
人は、人生の「何か」を求め、変わりたいと願うとき、
その願いの答えが、他人との間にあると期待する。
誰かとの関係によって自分は変われると。
人生に悩み、今を変えたいなら、
なおとさんに会いに行くと、何かが始まるかもしれない。
やまぐちなおと(山口直人) さん
なおとさんは、フリーのカメラマンとして活動されています。
また、出居番ラジオ♯14のゲスト
跡部嵩幸さんが再生に携わっている「松本うらまち」で、
シェアハウス「うら町base」の管理人をされています。
「やまぐちなおとさんは、こんな人」と言い表すのは難しい。
フォトグファラーであり、シェアハウスの管理人であったり、
最近は銭湯の店長であったりと、いくつもの顔を持っています。
こうした社会的な肩書きという話だけではなく、
世間一般のなんとなくの常識では捉えられない人間性。
ぶっ飛んでいるという意味ではなく、
変態的でも、好戦的でもありません。
中学を卒業してから働き出し、
20歳代は旅をするように生きてきたと話します。
なおとさんの魅力、ひとことで言い表せない人間性の複雑さは、
なおとさんがこれまで関係してきた人、山や麓や海、土地や景色、
そうした一つひとつが、なおとさんを形成しているからだと感じました。
自分が複雑に見えるのは、やらなくていいことを辞め、シンプルに生きているからだと思う。
なおとさんはこう説明しますが、
矛盾したり反発し合うものを、なおとさんは自身に内在させている
その複雑さを感じざるを得ません。
素敵な人物を撮る、人物写真が苦手なフォトグラファー
なおとさんが撮る写真はとても魅力的です。
特に、日常の風景の中に写された人物が素敵です。
誰もが自然で、その時々の感情が見事に切り取られています。
どうしたらこんな写真が撮れるのでしょうか。
僕自身、人物を撮るのって最初から苦手で。今もめちゃめちゃ得意って訳じゃない。
ただ、カメラを持って人と話すことをした時、写る人が、カメラを意識しなくなる瞬間がでてくるんですよ。
その時に、その人のいろんな表情が見えたり、人生がちょっと見えたり、その一瞬一瞬を残していくのが、カメラをやっていて面白いなって部分。
「写真は最も効率的に人と真正面から対話するツール」
なおとさんは、自身のSNSでこんなことを書き綴っていました。
人を撮るときには、まずカメラを構えない。まずは話すことから始める。撮影中もずっと喋っています。最近どんな美味しいご飯食べましたかとか、友達ってどんな人が多ですか、これからどこへ行くんですか、とか。
「撮るときの笑顔」じゃなくて「普段喋っている笑顔」がよくて、それを残す方が有意義だと思っているので。
なおとさんは写真をつくってはいません。
対話をしながら相手の心の声を聴き取るように
シャッターを切っています。
シェアハウス「うら町base」
2023年の4月。
なおとさんは、空き家を活用したシェアハウスを始めました。
シェアハウスがある場所は長野県松本市の中心地。
そこは「うらまち」と呼ばれるエリアです。
「うら町base」は
誰かと暮らす家であり、
誰かにとっての行きつけの家になっています。
一番最初に「行きつけの家」っていうのをコンセプトにしたんです。住まない選択肢もあっていいなって思ったんです。遊びにくる家でもいいなって。
最初の年に100人ぐらい訪れました。2年目も70人ぐらいが新しく来てくれました。
いろんな人が訪れるシェアハウス。
暮らしている人と訪れた人とが円卓で鍋を囲む。
夏はバーベキューをする。秋は秋刀魚を焼いて食べる。
大学生や社会人、そして、その友達や先輩後輩、
関係性が無限に伸びていって
「うら町bass」にいろんな人が集まっています。
うちは共通言語をつくっていて、それは「全部シェアする」ということ。
煩わしさも鬱陶しさもおいしいも全部シェアする。
多分みんなストレスを感じている。僕自身もそうです。ただ、許容する範囲を増やしていこうって話をたくさんするんです。
自分の暮らしの中に誰かが入ってくるという感覚ではなくて、誰かの暮らしの中に自分が入っていく。
なぜ「うら町base」に人は集まるのでしょうか。
煩わしさもシェアしなければならない。
にも関わらず集まる。
「うらbase」に関係する人は、人生の「何か」を探している人では。
「何か」を抱えていて、その答えや願いが、
誰かとの関わりの中にあると期待しているのではないでしょうか。
誰かとの関係によって自分は変われると。
「うらまち」という"オルタナティブ"と、
なおとさんに魅力を感じて、
変化を求める人が集まっていることを感じました。

やまぐちなおとさんの人生に迫る
旅するように生きてきて、
誰かとの暮らしの中に居続けてきたなおとさん。
だからこそ、
暮らしが個人のモノでないことを人生レベルで分かっていて、
他者との関係にこそ、暮らしがあることを悟っています。
多くの人にとって自分の暮らしは自分のもので、
邪魔してほしくない、干渉してほしくないと思っているはず。
でもそれは虚構。
なおとさんは現実を生きています。
誰かの暮らしの中に自分がいる。
自分の暮らしの中に誰かがいる。
暮らしは一人のものでない。
人と人の間に暮らしはあることを分かられています。
旅の始まり
中学を卒業し、家屋の解体屋として働き始めたなおとさん。
20歳までは今とは正反対の生活だったようです。
20歳で仕事を辞めて、10代後半を取り戻すように海外に飛び出した。
そして日本で暮らすようになると、
季節によって仕事を変えながら、旅するように暮らす生活が始まりました。
春には山の麓の農家で働く。
夏は離島の民宿で働く。
冬は雪山近くの居酒屋で働きながらスノーボードで滑る。
こうした生活の中で、「関係性の価値」を学ばれたと話します。
それまで田舎で暮らすことってあんまりしてきたことがなかった。5分かかる隣の家のおじいちゃん家に行くと、きのこの取り方を教えてくれる。山の登り方とかを教えてくれる。
山の向こう側の地域で猟をしている人がいて、罠のお手伝いをすると、報酬で鹿肉もらうことがあって。
結構僕の人生の分岐点だったなと思っていて。
そういう暮らしをしてきたら、なんか、分け与えるとか貰うっていう感性が生まれた。
「風の人」は「風の人」
2020年、長野県塩尻市に移住したなおとさん。
「風の人」だったなおとさんが、「土の人」になりました。
なぜ、暮らしに根を張ることにしたのでしょうか。
なんか、旅しているだけじゃダメだなって、帰ってくる場所があって初めて旅になるって感覚があったので、自分が拠点を持つことになったらもっと旅が楽しくなるし、自分が住んでいる場所が好きになると思ったんです。
今まで転々として、半分旅して半分暮らしているような感覚で気持ちが半々なんです。
一つ拠点を持ってみて旅することにしてみたら、もっと見えるものがあるんじゃないかと思って移住を考えましたね。
「風の人」のなおとさんは「土の人」になったのではなかった。
もっと大きな流れの中の「風の人」であり続けています。
変わらないために変わること
なおとさんの人生の話を聴いていると、
場面転換の多さに驚かされます。
と同時に、
なおとさんの人間性が
このようにして出来上がったのかという納得感もあります。
しかし、これだけの変化に怖さや躊躇はなかったのでしょうか。
ビビリはするけど、必ず怖がらない。行動力の根源は、絶対変われるって信じているのが一番かもしれない。
昔読んだ本に、"変わらないために、変わり続ける"っていう文章が出てきたんですよ。僕はそれが結構根源になっていて、自分が変わらないために、自分は変わるしかないって。
なおとさんが変わらずに願うものは何なのか。
それはきっと、
「やまぐちなおと」らしさ、
「やまぐちなおと」という生き方だと感じました。
人間五十年
もう一つ、
なおとさんらしい人生哲学に
「人生50年」という考えがあります。
"人生50年"って決めたのは、ちょうど仕事を辞めた20歳の頃です。簡単にいうと、人生50年目のところにゴールテープを引いて人生を歩こうと思いました。あと30年だったら全力疾走できるんじゃないかって思ったんです。
20歳代はいろんな経験と知識を入れて、30歳で"何者"かになる。30歳代は、今までの経験とか知識を分け与える人生にしていく。最後の10年で何かをつくり出して、誰かに渡しちゃうって感じですね。
つまり、「今を生きる」ということだと思いました。
これは我儘に生きるということではない。
未来を曖昧にせず、ゴールテープを見据えて今を生きるということです。
関係人口
「関係人口」を増やしたいと、なおとさんは話します。
「関係人口」とは、
なおとさんと直接つながる人だけでなく、
間接的につががる人も含まれる概念です。
この概念をお聴きしているとき、
スクランブル交差点の真ん中に立つ
なおとさんの映像が思い浮かびました。
右から左から、前から後ろから、人々が交差していく。
なおとさんに声をかけていく人もいれば、
素通りしていく人もいる。
たくさんの人が交差していく。
交差点の向こう側で楽しく話している人たちは、
なおとさんが知っている人同士の場合も、
知っている人と知らない人の場合も、
まったく知らない人同士の場合もある。
そうやって、人が行き交う一つの道の真ん中に、
なおとさんがいる。
人々の出会いが絶えず生まれる街のなかに、
なおとさんがいる。
なおとさんが編み出している関係性と、
その先で観測不可能に拡がり続けてく関係性、
その関係の網を、
過去も未来も全てを含めて「関係人口」と捉えていると感じました。

これから
3年目の「うら町base」
2025年、次の春が来れば「うら町base」は3年目となります。
なおとさんは、3年目の「うら町bese」を次のように語りました。
3年目は結構壮大なものなんですけど、シェアハウスの中でビジネスをつくり出すって考えています。関係人口の中でビジネスとしてやっていきたいと考えています。たまたま来た人、たまたま住んだ人、そういう人たちの力を使って1個のビジネスをつくり出す。
偶発性から生まれるビジネス。
一緒に"いただきます"を経験することで信頼から生まれるビジネス。
シェアハウスからビジネスが生まれるなんて、
とても魅力的に感じます。
写真展
2025年4月、なおとさんは初めての個展を松本市で開催します。
松本で普通に暮らしている人をモデルにした、
白黒写真がメインの写真展です。
これも多分”関係人口”ってものが関係してくるんですけど、写真展の”関係人口”増やそうと思ってクラウドファンディングをしています。
1年ぐらいかけてきた壮大なものでして。ようやくここまで来たかという思いもある。今もまだまだ走っている最中ではあるんですけど。
写真展とシェアハウスには共通項がある気がしてなりません。
写真展は、写真に写る被写体が「写る意味」を考える企画だそうです。
シェアハウスは、暮らす人や訪れる人が
人生の意味を考える場になっています。
写ることで何かが変わると期待して、なおとさんの前に座る人。
他人と関わることで何かが変わると期待して、「うら町base」に訪れる人。
人が変わるきっかけを、
なおとさんはつくっています。
写真展の先
ずっと僕が思い描いているのが、松本で一つ動画を撮りたいって考えていまして。どんな動画とかもまだ決まっていないんですけど。でもやっぱり、今まで自分がやってきたこととか、今まで関わってきたものとかを織り交ぜながら、きっとベースになるのは人であって街であると考えています。春夏秋冬を通して一つ作品を作ろうとしています。
なおとさんが挑戦するその作品は、
なおとさんがつくっている「関係人口」を映像化する創作活動です。
なおとさんの生き方を、
写真とはまた違った作品で見ることができるのは、心から楽しみです。
私たちの人格は、環境や対人関係の中で形成されます。
「うら町base」に行くことで、なおとさんと会うことで、
私たちは新しい人格を形成することができるかもしれません。
それを足がかりに、あらなた人生を歩むことができるかもしれません。
Contact us:
出居番丸西
信州まつもとシェアハウス うら町bese