こころ、くもりのちはれ
幸せそうな人を見ると、あまりに眩しくて、雨の日の曇ったガラス窓のように自分がくすんでいくのを感じることがある。
そんな時、その人の幸せを純粋に受け止めることができない自分が悲しくなるし、
それができないのはきっと、「わたしはわたし」って自分を受け入れてあげられていないからなのだろうな、と思う。
だけど、そうだとわかっていても、やっぱり心がくすむのを止めることは今のわたしには難しそうで。
くすみが増していく自分に耐えられなくなって、お昼休憩の時間になると、逃げるようにいつもの定食屋さんに来たのだった。
***
上の記事でも紹介した行きつけの定食屋さんは、いわばわたしの充電スポットだ。
唐揚げ定食が絶品で、これまでは唐揚げ定食と角煮定食(こちらもとても美味しい)しか頼んだことがなかったのだけれど、今日は最初から違うものを頼むと決めていた。
席に座り、メニューを見る。
瞬間的に目に飛び込んだ「アジフライ定食」の文字に目を奪われ、あっという間にお昼ごはんが決まった。
———ほどなくして、頼んだ定食が運ばれてきた。
まずは豚汁から口に運ぶ。
どの定食にもついている豚汁は、野菜たっぷりで優しい味がして、こころをそっとほぐしてくれる。
付け合わせのサラダを食べたら、そのままアジフライを一口。
衣がさくっと軽快な音を立て、アジそのものの柔らかい塩味がそっと口に広がった。
やっぱりここのお店は何を頼んでも美味しい。
夢中で食べ進め、完食する頃には、満足感でこころがいっぱいになっていた。
来た時よりもお客さんが増えて賑わっているお店を後にすると、商業ビルの一角にあるベンチに腰掛ける。
東屋のようになっているそこは、屋根にいくつも風鈴がついていて、少し強めに吹く風に揺られて涼やかな音を鳴らしていた。
頬を撫でる風と、軽やかな風鈴の音色。
こころのくすみをそっと拭ってくれるような、そんな優しさを感じた。
———きっとこれも、一時的な応急処置に過ぎない。
わたし自身が変わらない限り、彼女の眩い幸せに触れるたび、わたしのこころはくすむのだろうと思う。
それでも、くすむこころに、ちっぽけなわたしにそっと寄り添いながら、
時々こうして自分のご機嫌を取って、日々を過ごしていきたい。
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