綻びのなかにも糸口を
疲れているとき、決まって聴く曲がいくつかある。
ひとしずく×やま△さんの「祝福のメシアとアイの塔」もその一つで、以前この曲をもとに小説も書いたことがあるほどだ。
仕事始め早々、イレギュラー対応が複数あった上に慣れない業務の担当が重なって疲れていたわたしは、今日もYouTubeでこの曲を聴いていた。
曲が終わり、ブラウザの戻るボタンを押すと、見たことのなかった動画のサムネイルがふと目に入る。
イラストに惹かれて再生してみると、「祝福のメシアとアイの塔」をロシア語でカバーしているものらしい。
———ロシア語の説明文を見て反射的に思い浮かべたのは、彼の国が今も続けている戦争のことだった。
でも、だからといって聴くのをやめる気にはならず、そのまま聴いてみることに。
聴き始めてすぐ、ロシア語の独特な発音が醸し出す神秘的な雰囲気と曲の雰囲気がとてもマッチしていることに驚く。
言葉の意味は、普段聴いている日本語のものからこんなことを言っているのだろうと予測をすることができるけれど、発している単語そのものは何を言っているのか全く聞き取れない。
それでも聴き惚れてしまうほど、ロシア語の響きが幻想的な雰囲気を増長させていた。
そして、歌っている人たちの声色もまた、それぞれのキャラクターのイメージにとても合っている。
声がぴったりだからこの曲をカバーしたわけではなくて、この曲が好きだからカバーしているはずなのに、よくここまで声色とイメージが一致する人が揃っていたなと思うほど。
———日本と外交関係は良好とは言いがたい国の中にも、料理や音楽など、文化的な面では広く親しまれているものはたくさんある。
ロシアがしていることは、決して許されることではない。
だけど、それを遂行しているのはあくまでも国の上層部にいる人間であって、ロシアの中にも心を痛めている人がいるというニュースは、少なからずどこかで触れたことがあるのではないかと思う。
国のトップが許されざる行為をしているからと言って、その国の何もかもを嫌ってしまうのはもったいない部分もあるのではないかな、とわたしは改めて感じた。
……それはきっと、嫌な部分ばかりがクローズアップされがちな嫌いな相手にもいいところはあるはず、という論理に似ているのではないかな、と思う。
*日本語版「祝福のメシアとアイの塔」
*ロシア語版「祝福のメシアとアイの塔」