災い転じて福となす。
お昼休憩が始まるや否や、わたしは会社を出ていつものコンビニに向かった。
普段は出社前に買っているお昼ごはんを買いに行くために。
今朝、会社に着く前にお昼ごはんを買えなかったのには理由がある。
昨夜、寝ようとした頃からお腹が下っていて、今朝になっても痛みが続いたせいで家を出るのが遅くなってしまったのだ。
幸い、今の職場は休憩時間が1時間確保されている。
コンビニに行って戻ってきても余裕だろうと思いつつも、思わず足早になってしまうのだった。
***
コンビニで買えるお腹に優しいものを調べてみると、おにぎりや蒸しパン、野菜スープ、サラダチキンなども良いらしい。
毎朝白米を食べているのと、数日前に食べた蒸しパンがおいしかったのもあって、主食は蒸しパンと決めていた。
あとは、この間も買った生姜入りのスープとサラダチキンかな。
そんな風に考えながらコンビニに入ったわたしの目に、あるものが飛び込んできた。
それは、あんまんや肉まんが売られているケースの1番上の段に入った、たまご風味の蒸しパンだった。
「店内調理」のポップを見て、心がさらに踊る。
どう考えても、菓子パンコーナーの蒸しパンより蒸したてのものの方がおいしい。
そんなこんなで、一瞬のうちにメニューが決まってしまった。
こちらも迷うことなくスープとサラダチキンを手に取ったわたしは、レジに向かうと店員さんに声をかける。
「たまご蒸しパンひとつください」
レジにいたのは、50代くらいの女性の店員さん。
「蒸しパンね、ちょっと待ってね〜」とにこやかに応えてくれる。
その後も、「スープは温めます?」「お箸とスプーンと両方つけておきますね」と物腰が柔らかく、とても丁寧だった。
「これね、女性のお客さんに人気で、私も食べてみたいなって思ってるんだけど、なかなか余ることがないのよねえ」
店員さんの言葉に、思わず笑みがこぼれる。
「そうなんですね、温かいからきっとおいしいですよね」なんて話しているうちに、スープの温めが終わったようだった。
「ありがとうございました」と袋を受け取って会社に戻るわたしの足取りは、いつもの朝の数倍軽い。
外の寒さに負けないくらい、こころはほかほかと温まっていた。