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【ZINE感想文】物語の魔法にかけられて。
“ツーベンリッヒは嘘をつく”。
最初に拝見したのはいつだったか忘れてしまうほど、久しく見ていなかったそのタイトル。
それでも、見た瞬間に物語の内容をありありと思い出せてしまうほど鮮烈な“ツーベンリッヒ”というお名前と、もしも本当にあったら行ってみたいと思ってしまう“スカバ”というカフェで繰り広げられる、夢のように素敵なお話。
「こちらをいただいてもいいですか?」
1冊手に取ってお渡しすると、作者のとき子さんは太陽のように明るくあたたかい笑顔をわたしに向けてくださった。
***
とき子さんの物語に登場する人物たちはみな、自身の思いや考えをしっかりと持って行動している。
そして、思わずハッとしてしまうような言葉を発するのだ。
「鏡の伝言を読むでしょう?それを読んで愕然とした後、青ざめた自分の顔に気づくの。
そしてこの先ずっと、鏡で自分を見るたびに私を思い出す。
そういうのってなんかいいじゃない」
松任谷由実さんの名曲、「ルージュの伝言」をこんな風に捉えるだけでなく、実践してしまうウタの発想には脱帽してしまったし、
「赤ちゃんが人前で泣くのは自然なことだけど、大人が人前で泣く時は対処が必要なのよ」
初めての育児に疲れ果てた主人公にモナミがかけたこの言葉を見た時は、いい年して電車で泣くなんてと思いながらも堪えられず、うつむいて必死でごまかす日々を重ねた過去の自分を思い出して心が滲んだ。
そして、表題作でもある“ツーベンリッヒは嘘をつく”に登場するツーベンリッヒのこの言葉。
「あら、最低な自分に気付くのは早いのね。
最高を見つけるのは難しい?」
何度拝読しても圧倒されてしまうし、ツーベンリッヒのような心持ちでいられたらどれほど世渡りしやすくなるだろう、と思う。
(ツーベンリッヒご本人でさえも、たくさんの辛いことに打ちのめされた後にこの境地に至っているので、こんな風に生きられる人は本当にいろいろな意味で強い人なのだろうとも思うけれど)
———これほどまでに登場人物が素敵な台詞を残す、とき子さんの物語。
読んだら魔法にかかったような心地になるそれらに、この記事を読んだ方にもぜひ触れてみてもらいたい。
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ZINEフェスにて購入したとき子さんの短編集、「ツーベンリッヒは嘘をつく」の感想文を書かせていただきました🙇🏻♂️
文章を通じて思い描いていたとき子さんのイメージは、「太陽のように明るくてパワーに満ち溢れた方」だったのですが、実際にお会いしたとき子さんもまさにそのようなお方でした☀️
とき子さん、お話させていただけてとても嬉しかったです✨
ありがとうございました☺️
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