書いたもの一覧(長編)
これまでの作品を並べてみました。
・『大江戸ぱん屋事始』(角川文庫)
”「ぱん」が江戸の町に旋風を起こす!?”
装画:中島梨絵さま
デザイン:二見亜矢子さま
2024年3月22日 発行:KADOKAWA
最新刊です。
江戸時代後期。一人の若者が西洋の主食「ぱん」に憧れ、自ら「ぱん屋」を開こうと努力する物語です。
私は高校生のころに小説を書きはじめたのですが、当時からの夢の一つが「時代/歴史小説を書きたい」ということで……それが昂じて大学では歴史学を専攻しました。
ただ、歴史を学べば学ぶほど(というほど深められはしませんでしたが)「これは……生半可な考えでは書けないぞ」と思いはじめ、長いあいだ途方に暮れていました。
歴史の本を読むのは好きだったので、常になにかしら持ち歩くようにしていましたが(活字中毒なので、外出時には①メインの本②予備の本③スマホの電子書籍を完備しないと外に出られない)、そうやって長いあいだにちまちまと読んだ本が蓄積したおかげか、ある時期から「なんか書けそうかも……?」と思えるようになってきました。
たぶんそれは、ある種の「諦め」というか、「昔の空気を完璧に再現するなんてどうせ不可能なんだから、できる範囲で努めるしかない」という納得感みたいなものが、自分の中で固まってきた、ともいえるのかもしれません。
ということで、「パン」です(唐突に)。
歴史上、日本にパンが伝来したのは安土桃山時代。ザビエルによって伝えられたといわれ、以降は長崎の出島だけで焼かれたそうです。保存がきくことから幕末に着目され、日本中に広がったのはそれ以降です。
そんな「正史」に反逆し、「もし江戸にパンがあったら?」という好奇心から、実際に店を出してみることにしました。主人公・喜助の奮闘はそのまま、私の悪戦苦闘と試作の日々ということになります。
そのぶん、物語の展望がひらけていく瞬間をリアルに味わえましたし、その喜びが物語にも反映された気がします。それは、物語とのけっこういい関係なのではないかな、なんて。
「大江戸ぱん屋事始」大平しおり [角川文庫] - KADOKAWA
・『美桜のペットさがしノート 大切な家族がいなくなった⁉』(角川つばさ文庫)
”ぜったい見つけるよ。大好きだもん! 人と動物のキズナの物語!”
装画:福きつねさま
監修:藤原博史さま
2022年8月8日 発行:KADOKAWA
TVなどでおなじみの、ペット捜索の第一人者、藤原博史さまに監修をお願いした作品です。取材でお話しさせていただき、動物へ大きな愛を持っていらっしゃることをひしひしと感じましたので、人物描写にもそれを取り入れました。
まったく個人的なことですが、今作品で初めて児童文庫に挑戦しました。思えば、私が一番最初に小説の魅力を感じたのは、小学生のときに読んだ『ズッコケ三人組』だったので、子供向けにこそ人を揺さぶるものすごいパワーが秘められている…という一種の畏怖(信仰?)を抱いてきました。
子供時代、誰しも「孤独」を感じることがあるかと思います。
私にとって、そんなときにやり場のない心の助けになったのはまぎれもなく「物語」でした。
まだまだ、その高い山は見上げるばかりですが…それだけに、特別な気持ちをこめて書きました。誰かの種にはなれなくても、一滴の水くらいにはなれるといいなと、いつも願っています。
・『春くれなゐに~思ひ出和菓子店を訪ねて~』(ⅡⅤ)
"前略、あの思い出の和菓子には あたたかい縁がつまっていました。"
装画:前田ミックさま
デザイン:bookwallさま
2021年8月25日 発行:株式会社ドワンゴ 発売:KADOKAWA
初めての単行本。これまでで一番、「美しいものとは」「寂しさとは」などなど、考えながら書きました。現時点での私の一つの答えかなと。
コロナで京都の取材に行けなかったのが残念ですが、すごく好きでコロナ前は何度も行っていたので、記憶をたよりに書きました(舞台は百年前だけど)。また行きたい!
・『彼女が俺を暗殺しようとしている』(電撃文庫)
”勝手に死なないでね? 私が××から。愛しくて歪な恋と青春の物語”
装画:焦茶さま
デザイン:木村デザイン・ラボさま
2019年9月10日 発行:KADOKAWA
長年、書きたいと思っていた構成です。
じつはすごく不思議なんですが、この作品だけ、男女で感想の傾向が分かれるんですよね…。私が見聞きしたかぎりでは、ですが。
この作品には、うっかり八兵衛的な少年とヤンデレ風女子が出てきますが、どちらも自分の中にある要素を拡大した感じです。
というか、全作品の全主要キャラがそうかもしれません。作者はすべての人物を演じている…と思うこともあります。少なくとも私は。
・『きみと詠う 江の島高校和歌部』(メディアワークス文庫)
”三十一文字に懸ける青春”
装画:中村ユミさま
デザイン:micro fishさま
2018年11月24日 発行:KADOKAWA
これは今までで一番生みの苦しみに七転八倒した作品です。
作中の和歌を全部考えたので……(おまえがやらずに誰がやる)。
そして私以上に監修してくださった先生が大変だったと思います。
ですが、真夏の図書館にこもってうなった日々もなんだか蜃気楼のようにキラキラしています(奇しくも作中の季節も夏です)。
・『スイーツ刑事 ウェディングケーキ殺人事件』(メディアワークス文庫)
”甘いは正義っ!(二人にとっては)”
装画:雛川まつりさま
デザイン:木村デザイン・ラボさま
2017年5月25日 発行:KADOKAWA
友人に「甘味担当ですか?」と言われたくらい、こういうものを書いています^^;
うん、甘いは正義。
(取材と称してケーキ食べまくった)
・『アンティーク贋作堂~思い出は偽物の中に~』(メディアワークス文庫)
”これは贋作と本物の家族を巡る、不器用な兄妹の心探しの物語”
装画:冬馬来彩さま
デザイン:鈴木亨さま
2016年7月23日 発行:KADOKAWA
兄と妹の組み合わせっていいなあと思っています。たぶん、自分にどちらもいないので理想化しているんでしょうが…。
ところで。取材で行った金沢、食べ物も工芸もお城も全部素晴らしかったのですが、一番感動したのは「うどん」のおいしさでした。
金沢に住んでいた身内に言ったら同意してくれたので、私の気のせいではないはず!またうどん食べに行きたいです。本当に。
・『七十年の約束~届く宛てのない手紙~』(メディアワークス文庫)
”一通の手紙が運ぶ 言葉にできなかった想い”
装画:Minoruさま
デザイン:鈴木亨さま
2015年3月25日 発行:KADOKAWA
三作目ですが、実はこれがデビューのきっかけになった投稿作品です。出版にあたり、投稿時にはなかった「平成編」を加筆しました。そういう事情ですので、個人的にとても思い入れがあります。
学生時代、友人と近所の用水路を見てだべっていたら、「魚の命は儚いね」「いや鮭の根性はすごいぞ」という話になり(どういう会話だ)、その人から得たいろいろがこの物語の核の一つです。
あとは、旅先の海岸で見た一面の白い珊瑚のかけらとか。
亡き祖父が語ってくれた戦時中の経験とか。
落ちこんだとき、やわらかく降り注いでいた霧雨とか。
いろいろ、たくさんあります。
(なお、私の推しは一番どうかしてる秘書)
・『土方美月の館内日誌~失せ物捜しは博物館で~』(メディアワークス文庫)
”良い博物館には、ほどよい「謎」と奇妙な「縁」が収蔵されている”
装画:しゅがすくさま
デザイン:木村デザイン・ラボさま
2014年12月25日 発行:KADOKAWA
「古いもの」ネタも好きなんです……。この作品でできなかったことを、『春くれなゐに』で果たせたような気もしています。
取材のため、日曜午後の動物園に一人で行った思い出(楽しかった)。
・『リリーベリー イチゴショートのない洋菓子店』(メディアワークス文庫)
”人生と恋愛は洋菓子のように甘く、そして、ほろ苦いーー”
装画:スオウさま
デザイン:鈴木亨さま
2013年3月23日 発行:アスキー・メディアワークス
デビュー作です。
等身大のキャラクター、身近にありそうなお菓子や物語、を目指しました。
私の故郷、岩手県盛岡市周辺がモデルになっています。
四季は厳しいですが美しいです。この世界観は、私の根底にある気がします。
(なお、洋菓子の話なのになぜか団子とか肉とか焼肉とか豚トロとかが頻出します)
関係ないですが、上の観覧車の写真は以前パリで撮ったものです。
パリといえばマカロン(?)、おいしかったです。
リリーベリーのマカロンはたぶんそれをイメージしています。
(序盤で派手にぶちまけてるけど)
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