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あの日の君に恋をした。第五話

ぼんぼんぼんぼん
会場には大きな音が響き渡っている。

今日はライブの日である。
「髪型良し、髭のそり残し良し、顔面、、、 うん大丈夫だ!ちゃんと寝れて、、ない」
そう、喜びのあまり寝れなかったのだ。
トレイで確認した後会場に戻った。
緊張はしていない。
…………たぶん

多分って毎回こんなことの繰り返しで、ふられている。
そんなことを考えている間に待ち合わせの約束の時間になってしまった。
ライブが始まる二時間前の集合は割と長いのかもと思いながらひでは、なごみ達がいるところに向かった。
なごみは友達と一緒にいた。
それは知っている。
実は前日にも同じ会場で偶然あってしまったのだ。
そのため、なごみの友人は第一声がはじめましてではなかった。
「優しくてモテそうだね~。」
振られかけのジンクスだ。
なごみの友達が気を使っていってくれたセリフだけども
あんま、言わないでほしいセリフであった。
それに気を使ったのかなごみは笑ってごまかしながら話してくれた。
「ごめんね~私の友達自然とこういう事いうだけで、そんな気をもたないようにね」
あたかも私に意識向けてねって意味かと感じてしまった。
それからなごみのお友達は空気を読んで移動してくれた。

ひでは、まず良い人であろうとした。
「あの子優しいね!」
「でしょ!あの子が私をアイドルにハマったんだ!」
少し笑った顔に顔をすくめている。そして、僕が惚れた彼女の眼だ。輝いている。
この子のこういうところが好きなんだよな。
心の声が聞こえていないか心配になった。

隙を取られたと思わせるレベルでゼロ距離になったのだ。
なんだ何が起きてるんだ。
なごみは僕の肩にかかっているタオルを見て目を輝かせている。
髪の毛が顔にたどり着き匂いを感じてしまうレベルであった。

なごみはひでの肩にかかったタオルを見て昔を思い出していた。
なんでも昔の記憶は今は更新されないがために強い。
「本当に好きだったな~」
「へっ?」
頭から声でも出ているのかと思うくらい抜けている声だった。
気が付いたら猫背の体がピンっと背筋が伸びていた。
ずっとこのまま続けば幸せなうえに姿勢が良くなりそうだ。
それと同時に心臓まで止まってしまわないか心配であった。

少し距離を置いて話し始めた。
昨日も話した話をとてもうれしかったのかまたも話してくれた。
「昨日もこれ話したけどそれくらいこの興奮を共有したかったんだ」
昨日のピークエンドの法則をうまく使ってくれた。
なんて素直で良い子なんだろう。
きっとそんな風にとらえられる僕は素直でなんてピュアなんだ!

この時すでにライブ開始まで一時間前であった。
一時間くらい立ち話で疲れた。そのうえ好きな子の前だ。気持も疲れているだろう。
「イス座ろう。」
ひでなりに良いタイミングで良いチョイスの気遣いができたと思った。

その後はたわいもない話からお互いの恋愛話、こういう車に乗りたいんだよね。など将来についてまでなぜか話していた。
今度は一緒にライブ行きたいなーと僕は言った。
そうしたら思いがけない反応だった。
「え!本当行きたい!」
こんな前のめりで距離感近いなごみは僕をお天に召そうとしているのか。
そう思うくらい今日は距離が近かった。

沈黙を作ってみよう。耐えれる人か見てみよう。そう思った時だ。
なごみの隣に知らない40くらいのガタイの良いおじさんが座ってきた。
ここまでわかるくらいキツイ焼き鳥とキムチ納豆の匂いが香ってきた。
それこそなごみとゼロ距離だ。
なごみは一瞬目をつぶった。
この表情をするときは少し嫌な時のアクションだ。
僕は気が付いた。上に腹が立った。
二人掛けのイスに座ってきた事や周りを考えないことに。
今の日本がどんどん落ちぶれている。それは政治家のせいだ。
そう、訴える大人たちがいる。ただそれ以上にその大人がなにもせず、抗わないからだろう。
人のせいにしたり、期待をするな。そんな時間があるなら自分のための時間を作れ。
そう思った。きっと怒りの感情からもう一人の自分が起きてきたのだと感じた。

その瞬間自分でも思いがけず声をかけてしまった。
「場所変わって」
自然と出た言葉であったがために、言い訳など何もない。
不思議そうな目をするなごみとそれを気にしない冷徹な目の僕

「ちぇ、なんだよ」
図太い男の声がした。そう隣のおじさんからであった。
その瞬間聞こえるように場所買えようぜ、女の方もいまいちだと言う声が聞こえた。
「片耳聞こえないから変わってほしかったんだよね~」
声が聞こえないようにかぶせた。
笑い声が聞こえる。
「じゃあライブ来るなよな。チケット外したやつがかわいそうだぜ」

皮肉だ。こんなにも冷たい人間は存在するのだな。
その瞬間だ!
隣で立ち上がったなごみがいた。
「なんでよ」
なごみは少し怒っていた。
ただひでは何も言わず首を横に振った
それと同時に手をつかんでいた。なんでだろう。嬉しかったんだ。
僕は自分の痛みをわかってくれる人はなんて素敵なんだろう。
それに比べて僕は言い返せず、声をかぶせるしかできなかった。
なごみはこの時ひでに対して、ひでの耳について酷い事を言われているのに我慢できる強さに感心した。ただ、少し頭の中でハテナが浮かび上がっていた。

それから沈黙が続いた。
気が付いたらライブが始まる10分前だ。

「急ごう、じゃあまた学校でね!」

ライブが終わった。
そこからはなにも覚えていない。
もしかしたらライブがそれ以上に良かったんだろうか。
たしかに良かった。ただ記憶もそこまで濃くはない。
なんでなんだろう。僕はパラレルワールドにでももぐりこんでしまったのだろうか。

眠いな。
気が付いたら二カ月経っていた。
眼を開けた時には1/7だった。
記憶がないくらいボーっとして生きていたのだ。
「あれ僕はこの二カ月間何をしていたんだ。」

そうだ。車を走らせるくらいしかしてなかったな。
「あ、そうだ。真一ともドライブに行って恋愛話をしたんだ。」
真一は自信ありげにひでに宣戦布告してきたのだった。
「どっちが付き合っても恨みっこなしな?」
楽しかった。正直負ける気もしなかった。
帰りは東京スカイツリーに寄り、
FastFoodを買いオープンカーにしながら食べてから帰った。

そして、その日の夜の事はあまり覚えていない。
家に帰った後寝ようとしたら、元々好きでいてくれた子から電話が来たんだ。
夜に「助けて」
結構緊迫した印象を受けた。ただどこか喜びの音も聞こえた。
とりあえず向かった。隣の県まで行ったんだよな
そして、着いた時馬鹿にされた。
「ただ会いたかっただけだよ」
そのまま誘われるがままに朝を迎えたんだっけ。
なごみに対する思いってなんだったんだろう。
ふられたんだっけ。そう思っていた。この車も一緒にドライブ行くために買ったんだよな。

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