仮想の往復書簡 第6便
無数の名もなき作品
こんにちは。
毎日暑いですね。
カバー画像に使っているのは、ジョン・シンガー・サージェントという画家が描いた
「屋上のカプリの少女」という絵です。
私はとくべつ絵画に詳しい訳でもなんでもないのですが、この絵はTwitterの美術ファン@世界の名画で知って、好きになりました。
きっとスペイン・グラナダかどこかの町で、真夏の夕暮れ時にフラメンコの練習をしている風景なのかな、と想像します。
タンバリンのようなものを叩いている女性をよくみると、口を大きく開けて歌をうたっているようです。
陽が傾いてもまだ気温は高くて、海からの南風が屋上を吹き抜けているような、温度や風を感じる絵だと思います。
絵画は人並みに好きで、美術館にもたまに行ったりするのですが、
見たことも聞いたこともない作者の作品を見ていると、世界には無数の創作物があるのだなと思います。
そうやって展示されて人目に触れているならまだしも、絵でも、音楽でも、文学でも、
「後世に残らなかった」作品は古今東西、無数にあっただろうなと思うのです。
ダ・ヴィンチやボッティチェリ、ルノアール、ゴッホ、ピカソ、世界中で知られていて、世界中で展覧会が巡回している作品。
バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ワーグナー、世界中で演奏され続けている音楽。
そういうものは、これから先もずっと、世界中で作品が鑑賞されて、演奏されて、
人々の喝采を得続けます。
その影で、一回しか演奏されなかった曲、一回しか画壇に昇らなかった絵、一度だけ出版されて、数人の人の手にしか渡らなかった文学、
その場限りでそこに存在した創作物が、星の数ほどあっただろうなと想像するのは、切なくもあり、世界とはそういう場所だ、という説得力も感じてしまいます。
それからこうして、今自分が思いついたかのように書いたこの見解すらも、きっと今までに誰かも考えてきたことなのだろう、と思ったりします。
人類は壮大なデジャブを繰り返しているのかもしれませんね。
追伸:
ネット検索したところ、
サージェントの絵の舞台はスペインではなく、
イタリアのカプリ島というところでした。
正解とかハズレとか言われることなく、スペインのグラナダっぽい、と思った最初の感触が自分の体験となるのが絵画の面白いところですね。
それではまたお便り致します。
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