仮想の往復書簡 第4便
事務仕事の移り変わり
こんにちは。
毎日どのようなお仕事をされていますか?
あるいはお子さんや家族の誰かのお世話をすることが生活の中心でしょうか?
私はごくごく平凡な事務の仕事をしています。
メールと、電話と、書類を、あれやこれやとクルクル回して1日が終わります。
昔、幼稚園の卒園文集に、大人になったらお花屋さんになりたいと書きました。
大人になったら何になりたい?と質問されるのは、子どもなら誰しも通る道ですね。お花屋さんになりたかった5歳の私には、メールや電話や書類をクルクル回すお仕事がこの世にあるなんて想像もしませんでした。だいいち当時はメールなんてありませんでした。
5歳の子に、私の仕事を説明するとしたら、いろんな人にパソコンでお手紙を書いたり、電話でお話ししたり、紙に書いてあることばを読んだりするんだよ、と言えば良いでしょうか。
ふーん、わたしはお花屋さんのほうがいい!と言われてしまいそうですね。
それはそうと、最近は人の仕事の大半がAIにとって替わるようになる、という話をよく聞くようになりました。
私の職場でも、効率化、時間短縮、と呪文のように唱えられて、少しずつ手作業がデジタルに置き換わっています。
ほんの数十年前、パソコンがなかった時代は、帳簿ひとつ付けるにも、紙に定規で線を引いて、鉛筆で数字を書き込んで、間違えたら消しゴムで消して、消しゴムのカスを払って、ということを人はやっていたのでした。
その頃からきっと、この作業をどうやったらもっと簡素化できるだろう、楽に、早く、間違えずにこなせるだろう、と考えていたのでしょう。考えて、ためして、いろんな方法を編み出し続けて、やがてAIのような人間の頭脳に替わる存在が誕生したのだと思います。
昔の人は、本を読むときは、文机に向かって正座をして本を開いたと聞きます。
蓄音機でレコードを聞く時も、正座をして、他のことは何もせず、ただ音楽を聞くことに集中して聞いていた、ということも何かの本で読みました。
本を読む時間は本を読む。音楽を聞く時間はただ音楽だけを聞く。そういう仕方は、現代ではもはや重要無形文化財くらいに貴重な行為になってしまいました。
これから数十年先に、現在私がやっているようなメール電話書類くるくる仕事は、どのように思い返されるのでしょうか。
今の私がひと昔前の定規や鉛筆で書いたり消したりしていた人たちの仕事を慈しむように、懐しく思い返して貰えるでしょうか。
どの時代に生きていても、常に変化の途上にいるのかもしれませんね。
それではまた。
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