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くら寿司の決算内容を3分で解説!
今回はくら寿司の決算内容について見ていきましょう。
回転寿司業界でトップ3に位置するこの会社、業績は好調の様子です。
トップ2社の背中は見えてきたのでしょうか?
1.PLの状況
まず最初にPLの状況について見ていきましょう。
売上高は前年比+11.1%の2,349億円と過去最高を記録しました。
営業利益は前年比+132%の56億円、当期純利益は+273.7%の32億円と大幅増益且つ最高益となりました。
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では各セグメント別に内容を見ていきましょう。
「日本」「北米」「アジア」の3地域がセグメントとなっており、規模としては日本・北米・アジアの順となっています。
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◇日本
売上高は前年比+6.2%の1,742億円、経常利益は+375.5%の65億円と大幅な増益となりました。
くら寿司の強みである「まぐろ」「かに」など質の高い商品を中心にしたフェアの展開、TV放送開始から25周年となる人気アニメ「ONE PIECE」など話題性の高いコンテンツとのコラボ企画の実 施により、売上高は好調に推移しました。
また、強みである現場力を生かし、経営と現場が一体となって、個々の商品ごとにきめ細かな商品設計を適宜行うことで、原価率の低減に努めました。
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今回の決算では売上高の増加はもちろんですが、特に利益面での増加が目を引きました。
冒頭で触れたように、売上高の前年比+6.2%に対して経常利益は+375.5%と伸長の仕方が桁違いです。
全体の原価率で見ると、前年の43.6%に対して今年は40.7%と約3%減少しています。
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この原価率の低下は、現在のインフレや為替市場の動向から考えると、コスト削減ではなく売価上昇によるものと推測されます。
いわゆる「安易な安売り」はしないことが売上高と利益の増加につながったということかと考えます。
ここの売価ではありませんが、客単価の推移を見ると、安定的に客単価が前年を上回って推移していることが分かります。
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◇米国
売上高は前年比+38.1%の358億円、経常利益は前年2億円の黒字から今回は△10億円の赤字へと大幅減益となりました。
米国経済の減速で多くの外食企業が影響を受けている中、コラボ企画などを展開し売上高は回復傾向にあります。
一方で、積極的な新規出店は継続的に実施し、ニューヨーク州スミスヘブンモール店など14店舗となりました。
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出店を積極的に行った影響で売上高は堅調に推移しました。
ただその分当然ながらコストは増加しているので、利益面では大幅な減益となりました。
先行投資の回収期間になるまでは少し時間がかかると思いますので、しばらくは我慢が必要となりそうです。
◇アジア
売上高は前年比+16.5%の251億円、経常利益は△37.5%の9億円と増収減益となりました。
台湾子会社では、日本でも大変話題となった「ちいかわ」とのコラボ企画などが好評となりました。
また、沙鹿中山路店、頭份運動公園店など5店舗を新規出店しました。
一方、組織強化のための投資に加え、人件費や光熱費の上昇による影響を受けました。
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アジアの状況も米国同様に、新規出店が進んだため売上高は増加しましたが、その分コストも増加しているため、減益となっています。
先行投資の回収期間までの我慢の時期ですね。
◇2025年10月期計画
次年度の計画に関しても概要を見ておきましょう。
売上高は前年比+3.4%の2,430億円、経常利益は△16.1%の52億円と増収減益の見通しとなりました。
日本・米国では引き続き新規出店を継続するため、売上高は堅調に推移する予定です。
一方アジアでは、既存店での運営に注力していく計画です。
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2.BSの状況
次はBSの状況について見ていきましょう。
総資産としては前年末から+93億円増加しました。
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流動資産は+35億円増加しましたが、そのうち現預金で+41億円の増加がありました。この点に関しては、後のCFの状況で見ていきます。
それ以外では前年末に12億円の有価証券がありましたが、今回は残高ゼロとなっています。
この有価証券は「売買目的」若しくは「1年以内に満期が到来する社債」のどちらかではないかと推測しますが、CFの項目に「有価証券の償還による収入」があったので、「1年以内に満期が到来する社債」かと考えます。
固定資産に関しては+57億円増加しましたが、そのうち有形固定資産が+49億円増加しました。
これは国内・海外で+28店の新規出店があった影響かと考えられます。
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負債に関しては+69億円増加しましたが、なかでもリース債務+22億円の増加が一番大きな増加要因です。
これは先ほどの固定資産で触れた新規出店に伴ってリース資産・使用権資産が増加し、それに連動してリース債務も増加したという流れです。
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純資産に関しては+23億円増加しましたが、当期純利益の+32億円と剰余金の配当△7億円が主な増減要因です。
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またここ5年間の純資産と自己資本比率の推移を見ると、純資産は増加傾向にある一方で自己資本比率は減少傾向にあります。
自己資本比率は減少傾向にあるものの、40%以上はキープしているので、水準としては問題ないと考えます。
3.CFの状況
最後にCFの状況について見ていきましょう。
CF全体としては前年末から+41億円増加しました。
内訳としては営業CFで+183億円、投資CFで△103億円、財務CFで△40億円という内容です。
営業CFは税引前利益で+43億円としっかりと稼ぐ力があり問題ありません。
また減価償却費は105億円と多額の金額となっておりますが、店舗経営であるため各店舗での固定資産があり、減価償却費が大きくなる傾向にあります。
投資CFに関しては、有形固定資産で△102億円の支出がありました。
これは新規出店した店舗に対する投資かと考えられます。
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財務CFに関しては、大きな借入金はなく、運転資金に関する短期借入金の変動で+2億円の収入がありました。
支出のメインはリース債務の支払いで、△37億円の支出がありました。
配当金の支払いは△7億円と、全体に占める割合としてはあまり大きな支出ではありません。
ただ今後は株主還元を意識した動きが強まると、この配当金支払いが増加してくる可能性はあります。
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今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算を見ようかな?
マサキ タカオ