悩みから、ふと
どこにゆけばいいのだろう。
ここにいていいのだろうか。
周りをあちこち見渡して、遠い未来は靄がかかっている。しかたなく、昨日までの日々を、未来に当てはめると、無限に続きそうな廊下に閉じ込められているような気がした。
いけない。と、振り払うように、視線をそらせば、今を真っ直ぐに生きている、鮮やかな春の緑が、風に揺れていた。ずっと眺めていさせてくれまいか、と、願うものの、現実の忙しなさに、そんなことしている場合じゃないと、何かが囁く。それで、目をそらして、現実の問題にあれこれ悩む。
そんなことの繰り返しの日々。
まるで、悩むことが正しくて、草木を眺めることが無駄であるかのように。
振り返れば、悩んでいる時間よりも、庭で花や蝶を眺めていた時の方が、鮮やかによみがえってくる。夢中で読んだ本の世界を旅していたことも、思い出す。友の呼ぶ声に走った道。母のお迎えにお月様が笑っていた夜。
それで、何だったかなぁ。
悩んでいた時の事よりも、悩みからふと目をそらした夕焼けや音楽の方が、今も思い出せるんだ。
だから。今日は散歩をできて、本当に良かった。雨の日の桜の花びらは、美しかった。春の花のしっとりとした道は、素晴らしかった。
それで、良いのかも。
それが、良いと思う。
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