気にとめないものさんぽ

カラカラと落葉が追っかけてきた。愛らしい。落葉と並んで歩くさんぽみち。とはいえ、別れはやって来るもの。じゃあねと添えて歩き出す。


鳥が鳴いた。そちらに耳を澄ます。黄色い花が咲く。そちらをじっとみる。足元の花びらに花の香り。見上げれば、ピンク色の花。ボール投げるよ! 少年の声。ドングリ。春も近いのに。

キョロキョロと歩くさんぽみち。


ところで、鳴く鳥がいれば、鳴かない虫がいる。綺麗な花があれば、何ともない石がいる。声をはる少年と、静かに何かを思う少年がいる。ドングリは木になるものと、ならないものがいる。


どうして、目をひくものにばかり、気にしてしまうのだろう。

見えないものに、ふと心をとめてみようか。

風のさんぽ。春のあしおと。標識のよはく。草のねっこ。心のなにか。言葉でさえも拾えなかった、名もなきものたちもあるだろう。


それで、そのドングリ、誰にも気にとめられず、木にならなかったドングリたちは、ムダだったのだろうか。いや、そんなはずはない。人間の理解できる範囲など、たかがしれている。ドングリにはきっと、なにかがあった、なにかがあると思う。けれど、なにか、切なくなるような気がする。

……。


カラカラと落葉の声。振り向くと、落葉は、落葉の仲間と遊んでいた。そんな話、なんでも良いことさ、とでも言いたげに。


目に見えないものたち、声の聞こえないものたち。気にとめないものたちをながめて歩く、さんぽみち。

森羅万象のひとかけらに出会えるような気がする。

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