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家庭内コンセンサスと体位に顕出される心理的イニシアチヴのY軸方向の傾き

皆さんならこの音に耐えられるのだろうか。

さて、この音を8時間に引き延ばしたmp3を作成した。最終的には地中にスピーカーを埋めて、ランダムなタイミングで音源が再生されるよう設定しここを去ろうと思う。

(「何を」とは言わないが、3歳若かったら迷いもしなかっただろう…)


今日、アリさんマークの引越し屋が来た。大きな家具を運ぶのにどのくらいお金がかかるか、見積もりを出す為の下見に来てくれたらしい。

引越し業者を使って引越しするのは何気に初めてである。働きアリに「お引越しはお久しぶりですか?」と聞かれ、12回引っ越してるって言ったら和むかなあと思ったけど(気まずかったのだ笑)、そんなに引越してるのに業者を使ったことがないと言うと困惑されそうだったから、そこは適当に濁した。

よろしくお願いしますと言ってリビングに通された働きアリ-もといお兄さんは、地べたしか座るところのない部屋の中央で暫くウロウロしていた。やっと座ったと思ったら、僕がなけなしの思いやりで敷いた座布団に、片膝だけ乗せるような感じで正座していた。座りたい気持ちと、座りたくない気持ちで半々といったところか。僕も自分の家なのになんとなくバツが悪くて、ソファ、の横の床に座った。

やったことがないからよくわからないけど、ちゃんとしたテーブルと椅子がある部屋で、お茶やお茶菓子を交えながらゆっくりするタイプのお話だったのかもしれない。うちは地べたに座らせて27分で帰した。今思えば、本題に入る前に冷たい麦茶の登場を待っているような固有の間があった。

僕はこういう社会的な場面において、大人としてまったく機能していない自分を客観視して悲しくなる。

車とか家とか、何か社会的な契約を交わすということが、自分から遥か遠く無関係の世界で起こっている出来事のように感じてしまい、未だ「??」となる。仕事ですらそうだ。〝働いている〟という実感がない。自分が社会と関わり合って生きているということを、事実として実感できていない。給与明細を見ても「これって、僕がやったってことですよね??」という気持ちになる。その手のことをなんでも人に任せてきた結果だろう。終始「妻に確認してみないことには…」みたいなことを言う僕に、引越しのお兄さんは何を思っていたのだろうか?

実際、話はかなり営業的というか…なんなら商談?のような、駆け引きの介入するものだった。

最低限積んでもらいたい家具家電を伝え見積もりを出してもらったところ、お兄さんは最初「6万」と言った。微かな難色を示す僕。そこでお兄さんはすかさず!電卓を取り出し「メールから訪問までが早かったので…」とか「うちで決めてもらいたいので端数は切って…」とか色々言って、今度は4万になった。

しかし僕は、このあとエールさんとサカイさんが控えていたので「一旦検討します」と答えたのだが、お兄さんはすかさず!「3万なら即決できますか?」と鼻息荒く聞いてきたのだ!僕はゆっ…くりと汗を拭い「妻に確認してみないことには…」と言い、電話をした。「3万なら即決です」と言う僕。お兄さんは血走った目で生唾飲み飲み、汗を拭き拭き、小粋なステップ踏み踏み、支店か何処かに電話をし3万でOKとの承諾を得た。

決定権を持たざる者同士の商談だったが、晴れて引越し費用は3万円と相成ったのである。なんだか随分値切っちゃったナア、なんて、話が終わる頃にはこっちが正座、お兄さんがあぐら、と座り方の序列が入れ替わったことは言うまでもない。

それにしても、こんな…こんな高度な駆け引きがあると予想していなかった僕は、正直取引が成功したのかもよくわかっておらず、お兄さんが帰ったあとでもう一度妻に電話をし「いいよね?よかったんだよね?」と念を押した。ひとまず、これでよかったらしい。

3万、高いか安いかもわからない。最初に6万-つまり倍の値段を見せるというのは何か営業上のテクニック…(最初にエッチしようと言っておいて断られたらおっぱいを揉ませろと言うアレ)或いは心理トリックのような、そういった小賢しい罠の類だった気がしないでもない。ただ真相はわからないのでお兄さんの善意だったと信じよう。オフシーズン。同じ市内での引越しだけど3万円は安い。格安だろう。そう信じたい。

(この仏壇、を見たお兄さんの、シナプスがもつれる音が聞こえた。カサカサ…カサカサ…)



湖底、本当は書かなきゃいけないのは湖底の方だ。しかしこの文章はブログっぽいから、note向きだったから、先に書いたんだよ。

読んでいても書いていても文章は遠回りが楽しい。散々遠回りした挙句、その部分は丸ごと意味が無かった、ってのが至高だ。僕はこれを白菜の一枚目みたいな話と命名している。それを如何に自然やれるかはウデにかかっている。

例えば、職場の境界性知能が書いたこの短文、

「14850円から2750円を引かない金額、つまり14850円ですね?」

これは素晴らしい。こんなに短くて、しかも前後の文脈がわからなくてもちゃんと意味がわからない(?)。こういう文を沢山書けるようになって、既成の言語感覚を解体していきたい。結論は無いが、今日のところはこれを書いておこうと思ったので、これで全部である。


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