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泊まれる本屋で、自分のために本を選んでもらったら


先日、数年前から気になっていた岐阜県恵那市にある「庭文庫」さんへ泊まりに行ってきた。

2月はどの地域も一番寒いと思うのだが、案の定恵那も寒かった。
普段いる山の拠点と似たような気温でもあり親近感が沸いた。

目の前に映る山と川はとても大きく、向こう側から橋を渡ってくる車のライトが川に反射して、薄暗くなった世界に異空間が広がっていた。

庭文庫の古民家までは、すっかり運動不足の私が息切れ手前になるくらいの曲がりくねった坂がある。

扉を開けると玄関で店主の百瀬さんがギターを触っていた。
玄関にもたくさんの情報が飛び込んで来たので、前を向く前にいろんなところをきょろきょろしてしまったかもしれない。


もっとここで本を眺めたかった


今回は一泊しか(しかも到着も18時ごろとか)できなかったのだが、数日そこで過ごしたような気分になった。

宿泊の前日になると、
選書サービスのご案内が届き、最近の話や読んだ後にどんな気持ちになりたいのか、好きな作品などについて自由に記入することができる。

なんて惹かれるサービスなんだ…

店主の百瀬さんご家族が選書をして、どんな本をなぜ選んだのかつらつらと話してくれる。

私はその日は全く思いつかなかったので、夜(23:30くらい)に内容を返した。

泊まった洋室のベットはぽかぽかで、布団のなかに潜ると出ていくのは難しい感じだった。

興味のある問い、キーワード
・つくる行為と開放/解放
・逍遙するような生き方暮らし方
・わたしとは何か
・日常にある美しさ
・日本家屋と暮らし
・変化、選択、衝動
好きな作家
・森見登美彦
・道尾秀介
・伊坂幸太郎
・荻上直子
・サルバドールダリ
・横尾忠則
・magma
好きな作品
・マチネの終わりに
・little forest夏/秋
・舟を編む
・ホノカアボーイ
・コーヒーが冷めないうちに

明日も生きようと思える本
自分に小さな宇宙の存在を教えてくれる本

記載した内容


そろそろ寝るかとうとうとしていると
0:30ごろに扉の外で今から選書した本を説明しますか?と言われたので、明日の朝にお願いします。と返事した。

その日は移動で疲れていたのでとてもぐっすり寝られた。

朝起きると、古いミシンの上に選書された本が置かれていた。他のテーブルには昨日泊まっている他のお客さんの本も置かれていた。

どんなことを書いて選んでどんな言葉を受け取ったのだろうととても気になった。

そして百瀬さんの、やりますか?という声掛けでその時間は始まった。



選書してもらってまず最初に思ったことは、
書店で見つけたり気になっている本を買うよりも、誰かに選んでもらった本はなんか特別嬉しい感じがした。

ずっと欲しかったものをもらった時の嬉しさではなくて、
この人はこれを選んでくれたんだ!という嬉しさ。

まず百瀬さんがつらつらと一冊づつ説明してくれるのですが、
声とトーンがとても良くて、ちょっとうとうとしつつ、
聞いていてその言葉を聞き流さないように、本の中身も見つつ必死に聞いていた。

話が進んでいって、ふとその気持ちいい音に聞き入ってしまっていたけど、
せっかく私のために選んでくれたのに、何か返したいなという気持ちになって、
どうしてそういう内容を記載したのか、最近考えていることを話してみるのだった。
その時間があったことで、ようやくその時間が熱をもち、お互いちょっとほっとしたような、そんな気がした。

その後百瀬さんに、

大橋さんは絶対こいつには何も見せないぞ(借りてきた猫のような)というように感じてたけど、話を聞いていたらとても優しい人なんだなあと思いました。

と言われて、私は子供の頃からそう言われてきたので、
そこは全然変わってないんだなあと思った。(嫌ではない)


結局購入した本(現在みみみに置いています。)

持ち帰ろうと思った本は、
こころの処方箋とあるように、実際はビタミン剤のような本になるのかなと思ったものや(こころの処方箋、ものがたりの余白)、
自分では選ばないからこそ持ち帰ってみようと思ったもの(よっちぼっち)、
今まで出会ったことがなかったもの(試行錯誤に漂う)、
なんとなく今読んだらいいかもと思ったもの(山影の町から)
惹かれたもの(孤独な散歩者の夢想)


持ち帰ると思ってたから小さめの本を選んでた


やはり直感で気になっていた本は手元で読みたいと思い持ち帰ることにした。実際は2人合わせて3万円くらい購入してしまったので(言われるまで全く気づかなかった)読みたい本以外は郵送してもらった。

手で持ち帰ろうと思った本は「孤独な散歩者の夢想 / ルソー」
文字の並びと表紙と、なんとなく大橋さんにはこれが合うと思うという百瀬さんの言葉と、片手で持てる軽さと、開く前から気になっていた存在感のある本だったので迷わずバックに入れた。


まずは仲良くなれそうな本から読んでいる。

話を聞きながらちょっとだけ読んでみた時とは印象はちがって、読めるのか不安になったが、
こんな出会い方をすると意地でも読んでみたい気持ちになってある部分まで進めてみると、
この本がルソー本人のために書かれたことが分かって、
そこからはなんとなくこの本から何かを得ようとか見つけようという態度ではなくて、ルソーが自分のために書いた言葉をちょっとずつ読み進めてみようと思うようになった。

まさに散歩のような気持ちで。

詩はまだどう関わっていいか分からないと百瀬さんに言うと、絵と一緒で分からないままでいいんじゃないですか?と言われて、
確かに文字になるとなんだか理解しなくてはいけないような気持ちになってしまうことに気づいた。


庭文庫前の木曽川と山


分かるではなく、感じるということや
なんかいいなあすきだなあを思い出しながら見ようと思った。

エッセイというものも実はあまり手に取ったことがなくて、今回選んでもらった中には何冊かあって、そうかと思った。

自分のみる映画はどれもエッセイのような空気感があったのかもしれないし、自分が生きたい世界もそんな感じがした。

読み終わったらまた違うものが感じられるのかもしれない。

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