“ホワイト”研究室での日常の体験記

私は、宇宙素粒子系の大学院生でいわゆる“ホワイト”研究室に所属しています。
コアタイムはないし、研究テーマにもよるけど学生が自分でスケジュールを管理して活動しています。大学院生・大学での研究に親しみのない方に説明すると、ここで“ホワイト”研究室というのは“ブラック”研究室ではない、という意味です。世の中にはとんでもなく劣悪な環境の研究室があるといわれていてそれらは“ブラック”研究室と呼ばれています。研究室を探している大学生や大学院進学志望者にとっては非常に敏感な話題で、労働者としては認めてもらえない大学院生にとって研究環境がよいかどうか事前に確認することは研究テーマや進学する大学院を決める際の一つのテーマだと思います。ただ、ネット上には“ブラック”研究室の話は溢れているけど“ホワイト”研究室の体験談は目立たないと思います。そこで今回は“ホワイト”研究室にもいろいろあるということを体験談としてまとめてみようと思います。
(ただ、このnote知り合いから見たら誰かバレバレなので、そこら辺を差し引いて読んでもらえれば幸いです。)

“ホワイト”研究室にもいろいろある。

理系で研究室を探すとき、なにを重視するでしょうか。私の場合は、2つのことを重視しました。一つは自分の興味のある研究ができること。もう一つは睡眠時間と(実家が通いなので)移動時間がちゃんと確保できそうなことでした。幸い今の研究室に自分に合った環境があり、その環境で研究を楽しんでいるうちに数年間が経ってしまっています。ただ、私の研究室の中の環境は研究テーマによって大きく変わります。たとえ同じ研究室としてほぼ同じ基準で運営されていても、研究のスケジュールなどのグループの状況によって教員と学生の関わり方は大きく変わります。そして、個人的には、この教員と学生の関わり方がコアタイムという束縛のないホワイト研究室の中での環境を決定的に決めることになると感じています。

コアタイムのない(もしくは少ない)研究室の中に2つのグループがあったとします。
一つは、教員とのミーティングは週一回から二回程度で、その他の時間は学生側が聞きにいかないかぎり特に相談等のないグループ。もう一つは、ミィーティングは不定期だけど、頻繁に助教の先生が学生の部屋に行き議論・指導を行っているグループ。皆さんは、どちらがよいと思いますか?
私の場合は前者が良いですが、必ずしもこの選択が良いとはかぎりません。

学生の裁量が多すぎると、合わない場合がある。

私の環境は、前者、学生側が聞きに行かない限り特にミーティング以外では会わないタイプです。“ブラック”研究室というものの正反対、究極の“ホワイト”な環境です。私は普段、大まかな方針をミーティング等で議論した後は、自分で細かい部分を考え、適宜相談するというスタイルで研究しています。大まかな方針では見えてこなかった細かな問題・疑問点について、自分なりの方法で答えをだし、その上で「こんな感じです」と適宜報告することが多いです。学生の裁量がとても多く、夜型のひとなら深夜に研究することでしょう。私の研究室では半分ぐらいの人がこのスタイルです。特に解析系やスケジュール的に余裕のある開発系ではこのような形になることが多いと感じています。この環境は、私にとっては最高の環境なのですが、毎年数人が休学し、修士を取らずに卒業していきます。

つまり、この環境には合わない学生がある程度の割合でいる、ということでしょう。私の周りを見る限り、わからないと思った時に質問できる人や大まかな方針から自分のやるべきことを考えられる人はこの環境でうまくいっています。逆に、週数回のミーティングで言われたことをそのままやる人など受け身で活動してしまうとうまく行かないでしょう。大抵、こういう人はミーティングごとに一つ結果を出す程度になり、研究が全く進みません。だんだん辛くなってくるでしょう。そして、この環境の最大の欠点は周りに人がいないことです。学生はコアタイムがないので、自分のやることが終わったらさっさと帰ってしまいます。人によっては家で作業して大学にあまりこない人さえ出てくるでしょう。たとえ辛くなっても、周りに人がいないでは愚痴さえこぼす相手がいません。この環境の怖さはここにあります。

カギは適切な時に質問をすることです。質問することは難しいことです。だって、何が分かっていないのかを明確にする必要があるので。もし究極の“ホワイト”の環境でうまく行かないな、と思ったら、まず質問をしてみてください。下らないと自分では思っていても、質問を繰り返すことが重要です。たとえ自分の研究テーマに関わる人がいなくても、その場にいる別の人に聞いてみることが重要です。とにかく、手が止まったら聞くこと。これがこの環境では重要です。

教員が積極的に学生の部屋に来る環境の場合、教員との人間関係がカギとなる。

もう一つのグループ、ミィーティングは不定期だけど、頻繁に助教の先生が学生の部屋に行き議論・指導を行っているグループの場合はどうでしょうか。
私の周りではこのタイプは多くないのですが、この場合は教員側の研究スタイルに沿って活動していくことになります。日々指導してくれる教員との関係が日々の過ごしやすさに関係すると思います。もちろん、“ホワイト”研究室なら時間的拘束がきついことはないですし、先程の究極の“ホワイト”と違い、言われたことをそのままやるだけでも十分研究は進みます。また、教員と頻繁に議論することになるので、その分勉強になるでしょう。一人で途方に暮れることもありません。ただ、指導してくれる教員の生活スタイルや人間関係によっては、環境が悪化することもあると思います。教員の来る/帰る時間などは、研究室選びの際にそれとなく確認すると良いかもしれません。

“ホワイト”研究室の場合は、教員と学生の関係を知ってから研究室を選ぶべき

“ホワイト”研究室で興味のある研究を見つけたとき。そのときは、まずコアタイムやミーティングの頻度を聞くべきです。そして、1週間のスケジュールを先輩の学生に聞いてみてください。その中で、教員と学生の関わり方をチェックすると良いでしょう。“ホワイト”研究室の中にも、いろいろあります。そして、“ホワイト”研究室ならどこでもハッピー、というわけでもありません。研究室に入ってから環境が合わないことに気づくのは、とてももったいないです。

いいなと思ったら応援しよう!

KenOhashi
最後までお読みいただきありがとうございます。私たち大学院生にとっては、多くの人に実情を知ってもらうことがなによりの支援になります。普段の会話やSNSで大学院生について話題にしていただけると大変ありがたいです。