「なぜ一部の人は、いつも質問をできるのか?」
大学や研究機関の研究者の中には、いつも当たり前のように質問をしている人がいます。そんな人がいる環境では、時に、質問しないことがなんだか悪いことのような雰囲気になることも。
「なんで質問しないの?」と聞かれることも。
当たり前のように質問が浮かばない人からすれば、なんで、と聞かれても、「それがわかったら苦労しない」としか言いようがありません。
そんな空間で、私は、博士号を取るために大学で5年間研究をしてきました。
そこで気づいた、質問ができない人のための質問マニュアルを少し紹介します。
0. 質問・疑問の背景を探る。
まず、これを読んでいる皆さんが、1番最近出会った質問を眺めてみることから始めましょう。
1番最近出会った質問なんて、覚えていない、という人も大丈夫です。
この記事の最初で出てきているので。
「なぜ一部の人は、いつも質問をできるのか?」
この文章を読んでいるということは、このタイトルを見て、何か思うことがあって、読み始めたことでしょう。なので、この質問の背景を眺めることから始めましょう。
この質問はどういう時に出てきたでしょうか。
・どんな講演会や講習会、会議でも、当たり前のようにたくさん質問する人がいた。
・質問する人が結構たくさんいて、質問する人と、しない人が明確に分かれていた。
・「なんで質問しないの?」と言われた。
状況としては、こんなところでしょうか。
でも、この状況になっても、なんで、という疑問が浮かばない、という人も多いでしょう。質問が浮かぶために必要なものは、どうやらこれだけではないようです。
では、この状況で、私は何を思ったでしょうか。
・自分としては、質問が浮かばないのが当たり前なのになあ。
・普通は、講演会の後で何か質問ありますか、と聞かれても、シーンとしているのが当たり前でしょう?
・でも、ここでは質問が出るのが普通だ。
・何が違うのだろう??
きっとここに、質問ができる人と浮かばない人の違いがあるはずです。
1.予想する、比較する、違いを知る。
先ほどの例で、一体どこで質問が浮かんだでしょうか。
それは、自分の中の当たり前と、ここでの当たり前を比べて、“何が違うのだろう“と思った時だ、と私はとらえています。
自分の中の考えが正しければ、こうなるはずだ、という予想が頭の中に浮かぶ。
それと、今目の前にあるものを比べる。
そうすると、違いがあることが明確になる。
違う。
もし、質問する、ということを、全く別の言葉で説明するなら、
予想して、比較して、違いを知る。その違いを相手に伝えること、
と言い換えることができるでしょう。
違う、という状況を相手に伝えるとき、表現として、
「なんで、これとこれは違うんですか?」
という質問になる。
こういうことではないでしょうか。
2.違いを見る。そして行動する。
質問をする上で大切なことは、違いを見る、ということ。
なんか引っかかる、なんか違う、をきちんと言葉にすること。
そして、それを相手に伝えること。
これらが大切だ、と先程述べました。
でもこれは簡単ではないかもしれません。
なんか違う、そんな思いを浮かべた時には、一度立ち止まること。
そして、“きっとコレはこういうものだ“と思い込んでいるものが、本当にそうなのか、確認すること。
わからなければ、「これは、こういう意味ですよね?」と聞くこと。
基本的な戦略としてはこれでいいでしょう。
ただ、ここで難しいことがあります。
自分の中の、“あれ、なんか違う“を、きちんと言葉にすること。
きちんと言葉にするだけの情報を集めること。
見つけた違いを、まあそんなこともあるだろう、と思わず、
相手に伝えること。
きっとこれが、「普通は質問が浮かばないよ」と、「普通は質問が出てくるでしょ」の間にある、大きな違い。
この辺りのコツを、少し見ていきましょう。
3.予想する、を深める。比較する、を深める。
ここまで読んで、そもそも“あれ、なんか違う“と思うことなんてないよ、という人がいるかもしれません。
違いに気づく、というのは、難しいことです。でも、ここにはコツがあります。
例えば、道路をぼーっと眺めていたとしましょう。
車が連続して、3台通り過ぎて行きました。
でも、3台目は、突然減速して、交差点でもないところで止まってしまいました。この状況を考えてみてください。
この状況に対して、“なんで?“と思う人もいれば、“ふーん“と思う人もいるでしょう。何が違うのでしょうか。
人によって違うのかもしれませんが、一例としては、
連続で通り過ぎる3台の車を比べること、でしょうか。
連続で通り過ぎるのだから、状況は同じだろう、と予想する。
1台目でもなく、2台目でもなく、3台目だけが止まった。3台目だけ何かが違う。比較することで違いを知る。
違いに対して、“なんで?“と思い、相手に伝える。
「何か落ちていたんじゃないか?」
「何かが飛び出してきたんじゃないか?」
「道を間違えたんじゃないか?」
確かにそうかもしれません。
“まあ、この可能性もあるしなあ“と考えることで納得することはできるかもしれません。
でも、“なんで?“と疑問を持ち、少し道に出て調べてみたら、別の可能性に気付くかも知れません。
場合によっては、“この可能性もあるしなあ“で納得してしまうと見えない物があるかも知れません。
そんな時のために、違う、ということを頭の中で明確にする訓練は、しておいて損はないと思います。
4.質問・疑問を日常に活かす。
「でも、そんな講演会とか会議で質問する能力を身につけたって、日々の生活には活かせないからなあ。」
そんなことを考える方は多いでしょう。
でも、質問・疑問をする能力は、日々の生活で活きる能力です。
例えば、調べ物をしているとき。
資料を読んでいて、出てきた話を、身近にあるものと比べてみる。
そこで、“そういえば、これとこれは似ているなあ“とか、“これとこれは、同じなのかな、違うのかな”とか、そういうことを感じる。
すると、調べ物をする際のキーワードを変えて、別の資料を探すことができる。
その別の資料で、欲しかった情報が手に入る。
こんなこともあるでしょう。
例えば、何かの試行錯誤をしているとき。
これを試してみたら、どうなるだろう、と試してみる前に時間をとって考えてみる。すると、試してみた後に、結果と事前の予想を比較することができる。比較することで、一回試してみた結果から得られる情報が、一つ増える。次に試してみるときに、使える情報が一つ増える。
質問・疑問をする時に出てくる、予想する、とか、比較する、とか、そういう能力は随所で活きる能力で、その能力を育てる方法としては、質問をする訓練をするのは効率の良い方法です。
講演会や会議のたびに、訓練ができるのですから。
5.終わりに
今回は、「なぜ、一部の人は質問がたくさんできるのだろう」という疑問に時間をかけて向き合ってきた結果を紹介しました。
もちろん、自分の場合はこんなふうではない、もっと違う方法で質問が浮かんでいる、という場合もあるかも知れません。
その場合は、ぜひコメントをお寄せください。
頂いたコメントは、きっと、多くの質問ができなくて困っている人を助けることになるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございます。私たち大学院生にとっては、多くの人に実情を知ってもらうことがなによりの支援になります。普段の会話やSNSで大学院生について話題にしていただけると大変ありがたいです。