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【転職教材:組織文化人類学① 】事業会社、支援会社でのボクの脳について

考えなくてもいいためにAIを使うの?
考えるためにAIを使うの?
 
 
生成AIの浸透で、ひとの労働時間が確かに減ってきてるみたいです。
多くのワーカーにとっての「作業」を肩代わりしてくれてるわけですね。
 
生成AIが本当に儲かるかどうか問われていた時間帯もありましたが、
もたらす生産性の向上はどうやら実証され始めている様子。
 
さらに「AIエージェント」化が進むと
自律的に情報を取りまとめて勝手に仕事をこなしてくれるみたいで、
一層ひとの作業時間は減っていきそうです。
 
そんな話題からちょっと思うところをメモしておきます。
事業会社と支援会社におけるボク自身の「脳」の働き方の違いについての振り返りメモです。(あくまで個人的経験からの意見に過ぎません)

事業会社のときの脳の状態

事業会社って事業を回して利潤を得ているわけで、うまく回ってるか
具体的事実(お金とか情報とか)をみんなで追っかけてます。
知的労働の主眼は「知る」「調べる」ことに向けられ、
その上で「調整する」「対処する」ことで仕事が完了していく。
 
要するに「調べる」ことで「わかる!」、これを組織に「報・連・相」して「合意」や「判断」につなげていくというサイクルですね。
 
Fact/Knowledgeベーシスの「知」だから、
DX化してAI導入して効率化・高速化!って話がハマります。
 
そんな仕組みで回ってる組織にいると、当然自分の仕事もその観点で回す必要があって、平たいFactと、コンセンサスを得やすい集合知ベースで標準化されたKnowledgeをしっかり押さえていればコトは回るし、その観点に立っていること自体が組織内における心理的安全性を担保するわけです。
 
いい時はいい、ではダメな時はどうかというと、、
「もっと調べてみましょう!」ということでせいぜい「探索」という
調べを深めた感じの話で終わるというお作法ですかね。 

事業会社の脳

その範囲を超えて、そもそもこれってなぜだろう、こんな見方もできるんじゃない、なんていうモヤモヤとした議論を向けても、せいぜい「以前こうだった」「ウチはこうだから」という過去事例や社内事情を参照した検証が交わされるだけ。それ以上突っ込もうとすると大抵は集団的に脳のブレーカーが落ちるみたいな状態になります。変にやりすぎると感情的な拒否反応まで出かねません。
 
だから新入社員における「お前も成長したな」の意は、会社のお作法に順応したな、のこと。いわゆるGoogleとかの心理的安全性で言われるような自由な発言や行動は、はみ出したバリであるかのように研磨され、先輩諸氏によって滑らかにポリッシュされていきます。

そんなふうに新人を美しく磨き上げる文化的精錬過程が「いい会社」ほど根付いているようです。
ひとがいい、と世間的には映るピカピカしたフィニッシュ感。
本人も、それが自分の成長だと認識しちゃいますよね。
 
異なる意見が表現できないのではなくて、そういうことを受け止めながらも、暗黙的に集団のアラインメントが図られていくような作用、なんとも日本的な美意識ですね。
優秀な学生のその優秀さを、その会社特有の思考回路に順応させる伝統的日本企業の文化・報酬システムは、すごいのですよ。
 
ちなみに、そんな組織文化の中においては、情報感応度がちょっと高めで、あくまで順目方向に強い態度で振る舞い、リスクに対しても咄嗟にファイティングポーズを取れるタイプが役員や社長になっていくように見受けられます。ホモジーニアスな組織だから、そういうアティチュードでもって統治しやすいし統治されたいんでしょう。外部から破壊的なイノベーターを迎えることは、まずしないですよね。
 
さて、そんな環境にいると、わざわざ現状に疑問をもって思考を広げたり深めたりするインセンティブは生まれません。丁寧にFactをつかんでよく知られる打ち手を回せばみんながハッピーな日々を送れます。
この周囲のハッピーな「顔」こそが、実は脳には強力なインセンティブになります。曇った「顔」の発生を避けるようになるんですね、普通の人間の脳は。相手の「顔」が、こっちの「脳」の働きをマニピュレートするってことですね。
時短で帰る、育休で休むみたいな場面で、この表情の圧は、口で言ってること以上のメッセージを発しているわけです。みなさん大丈夫ですか?

表情による文化伝承

基本的には相手お構いなしにしゃべり続けると言われるボクですが、事業会社在籍中に無意識下で起こるこうした脳内の順化作用は制御できませんでした。誰かがそれを変えようとしても容易に変わることがない、精神構造と紐づいた業務標準化システムが組織に埋め込まれているわけです。
 
ここで冒頭の観点に照らし合わせると、事業会社のワーカーの仕事の多くはまさにAIエージェントに置き換わるでしょうって話です。大きなインパクトとなることが想像できます。そのときみんな何をやるんでしょうね。最初は仕事してる風に振る舞うのでしょうけど、多くの場合、個々人の純粋な作業成果や貢献を証明することは難しくなっていくのかもしれません。それでもお給料をもらえるそんな社会になっていくのかもしれませんが。
 
いま多くの名だたる伝統的日本企業は、以下のキーワード群の一番上の思考回路に偏重していることでしょう。そういう意味では、相性のいいAIの浸透は、名だたるJTC群で近い時点に一気かつ横並びに加速するんじゃないかなと思います。
 
#ロジカルシンキング
#クリティカルシンキング
#ラテラルシンキング
 
#マネジメント思考
#デザイン思考
#アート思考
 
#コーゼーション
#エフェクチュエーション

支援会社のときの脳の状態

さてもう一方で、ボクが長く経験してきた支援会社、
つまり事業会社がやってることになんらかの変化を及ぼすことで
価値を生もうとしてる側にいると、まるで違ってくる。
 
事業側が回しているPDCAのクローズドループの視野狭窄、自己正当化のバイアス(認知的不協和の解消)の積み重ねで、マーケット/ユーザーをまっすぐにみるということが無意識的にできなくなってること(意識的じゃないからこそやっかい)に由来する諸問題を相手にするからです。
 
ここでは、「調べる」ことで「わかる!」というのは入り口に過ぎません。
というか、そこをなぞる必要すらないかもしれません。
 
なぜなら、多くの場合「調べる」の対象は、表面化した結果のみであってその因果まで示すものではないし、PDCAのオペレーショナルな改善には役立っても、その積み重ねの過程でオリのように溜まってしまった「不可視領域」こそが、大抵の場合のお悩みの原因だからです。
 
結論的に言えば、その「不可視領域」とは、普通のマーケット/ユーザーの常識的感覚および、ひとの本能的・文化的特性のことです。
会社や業務に順応するって、「利潤追求のための固有の論理回路と組織文化」に疑問を持たなくなるっていう側面が大きいですからね。
もう普通の感覚のほうが視野の外にはみ出てしまっているわけです。
 
そんなわけで、支援会社ではまず普通のマーケット/ユーザーの常識的感覚およびひとの本能的・文化的特性に立脚して、事業が生み出す価値とユーザーの関係性の実像を凝視して「盲点」や「ずれ」をクリアカットに言語化することにつとめます。これをインサイトって言いますよね。
 

支援会社の脳

つまり見てるFactは同じだけど、「読む」そして「見える!=Viewを得る」が知的労働の主眼になるわけです。
Factを整理してKnowledgeとして編纂していく可視領域の行為に対して、Factの奥にある本質の発見と定義によって、Viewという不可視なんだけど「見えてる!」という境地に辿り着くことがお仕事になるわけです。脳の運動量というかディメンジョンが一気に3次元になります。
 
#PDCA
#OODA
 
これってAIにできるの?という話。
「外れ値」が大事、なんていうマーケターの指摘ありますよね。
世界の知を網羅して正規分布的に標準解答を導くことを旨とするAIはいまのところこの役割には合ってない。まあ、進化中の行動経済学のような知見を元にしたAIが開発されれば別の話かもしれませんが。
 
そういう知的労働におけるAIの有用性は、いわば壁打ち。
発見、気づきの掘り下げとニッチな検証も手早くできるから、思考過程に集中できるなと実感します。ひとが生み出すことが領域としてAI生成物と区分されていくと、ひとの労働生産性というか知的成果がわかりやすく認識されていくのかもしれません。
 

脳は環境で変わる:脳の可塑性

「調べる」⇨「わかる!」
「読む」⇨「見える!」

比較対照

事業の成長やイノベーションを思えば、両方の知が必要なことは明らか。
でもこれ、そもそも両者の言語が合わないです。脳のモードが違うから。

この両者を行き来して自分の脳を実験台にしたけど、そもそも「幸せ=脳の快」のセッティングが違うってことです。
技能レベルとしての二刀流はある程度可能だけど、脳のセッティングをひとりの中で意識的に切り替えるのは難しいです。
なので、会社として人的資本政策とAI活用という経営イシューとして詰めていくべき問題になってくると思います。
 
組織文化に対する企業の関心も高まってきているようです。
さてさて、あなたの職場はどうですか?
事業のステージによって、経営方針によって、チームに対する脳の働かせ方の方向づけ、異なる脳特性をもった人材をどのように活用するか、ちゃんと考えたほうが良さそうです。
 
AI時代の組織デザイン、しっかり意識を変えてひとの脳の生産性を発揮する職場づくりをしないとですね。そんなお話を皆さんともしていきましょう。

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