掌小説 オートミールクッキー
少し早めの夕飯を作っていたら、突然君がオートミールクッキー食べたいと言い出した。
今?ご飯作ってるんだけど。
最近オートミールにはまっているらしく、今食べたいと言う。仕方ない、言い出したら聞かないので作ろう。そんなに時間かかるものじゃないし。
刻んだチョコが入っているのがいいとのリクエスト。レシピでは一口大に丸めて潰すとあったが、ザクザク割るのが好きらしいので、ざっくりとまとめて大きな1枚のクッキーにした。
オーブンに入れたら20分。
ベルが鳴ったが聞こえてないので、出して冷ましておく。しばらくして香りにつられた君が台所にやってきた。
食べていい?いいよ。いつものやり取り。
半分くらい食べたところで気が済んだのだろう、舐めた指で残りのクッキーを割り、タッパーに収めていく。いやいや手洗おうよ…と言いかけたが、自分もやっているかもしれないと思い、言葉を飲み込んだ。
君はテーブルの真ん中に置かれたオレンジに目をやり、レシピ本に載っていたフルーツタルトの話を始める。タルトってちょっとめんどくさいんだよな。でも食べたいと言われたら作ってしまう。甘やかしている自覚はある。
夕飯を食べながらも話は続く。
一緒に作る約束をした後、食器を洗う君の背中を見ていた。
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