冬の朝
目が覚めた時、風の音を聴いた。
何時に寝ても、朝6時に目が覚めるようにできているらしい私の体内時計は、今日も正確だ。
階段を降り、ストーブの前でぼんやり窓の外を眺めていると、黒から青へ、そして白へと色が変わっていく。
グラデーションな景色に名前をつけた人がいたのだろうな。人々はこれを朝と呼ぶ。
ストーブの温度を上げた。
それでも部屋は寒い。
蛇口から流れる水に触れると、体中の細胞がきゅっと音を立てて目覚めそうな冷たさ。
触れたのは指先なのに、その冷たさはすぐさまお腹まで伝わり、身体が暖かいのだと分かる。
世界の不思議の触れたとき、大きな謎解きが始まった。問えば問うほど謎はその色を濃くし、私を包み込んでゆく。
ゆるやかなあたたかさ。透明の黒。私が感じるすべては私にしかないもの。私だけの真実。人と比べなくていい。同じ必要はない。私が私でいること。生きているということ。
お湯が沸いた。
ポットの中で広がりながら踊る茶葉。
枯れ葉が舞うのと似ているな、なんて思っているうちに飲み頃だ。
マグカップから伝わる温度を受け取る手。
もらった分、私は何を返せるだろうか。
はちみつの中に流れる結晶と、はらはら積もる雪に、きっと同じものを観ていた。
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