糊つまみとボンドつまみ、どっちがいいの?
糊派とボンド派の仁義なき戦いに、今日こそ決着を!
というのは冗談で、別に誰も戦ってはいませんが、どっちを勉強すべきなのか迷ってらっしゃる方も多いかと思います。
このコラムでは、糊つまみとボンドつまみを比較して、あなたにとってどちらがメリットが有るか、お教えします。
伝統工芸界では糊こそが至上とされますが、最近のつまみ細工ブームに大きく貢献しているのは、誰でも簡単に入っていきやすいボンドつまみです。
では、新しくつまみ細工を始める方や、自分の作り方に疑問を持ち始めている方は、どちらを突き詰めればいいのでしょうか?
それを知るためには、なぜつまみ細工をやりたいのかをはっきりさせる必要があります。
・憧れの作家さんがいて、彼女のような作品を作ってみたいから
・子どもの七五三や成人式・結婚式のために、手作りの作品をプレゼントしたいから
・職人展で見た、職人のつまみ細工に感動して、同じように作りたいから
・雑誌などの通信講座でみて、楽しそうだったから
・作家として出店し、お金を稼ぎたいから
いろいろな理由があると思います。
糊かボンドかという技法の問題は、あくまでも作品を作るための手段です。
作品を作る事自体が目的なら、手段に拘る必要はありません。
それぞれの技法のメリット・デメリットを知った上で、選べばいいのです。
それでは、それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
糊つまみのメリット・デメリット
メリット
・慣れるとボンドよりも速い
・乾くのに時間がかかるため、葺いてから調整ができる
・つまみ細工の基礎力がアップする
・糊板に並んでいる姿がかわいい!
私が糊板のメリットで一番大きいと思うのが、4番目ですね。
糊板に並んでいる姿がかわいくて、葺くのをためらうほど。
インスタに上げる画像も、作品自体よりも乗り板に並んでいる姿のほうが多いかもw
デメリット
・慣れるのに時間がかかり、まともにつまめるまでのハードルが高い
・乾くのに時間がかかるため、完成間近に崩壊することがある
・一度始めたら、全て葺き終わるまで離れられない
・教えてくれるところが少ない
一言で言うと、ハードルが高い。
道具も材料も、なかなか売っていない。
全てにおいて敷居が高いのですね。
ボンドつまみのメリット・デメリット
メリット
・道具材料が手に入りやすく、初心者でも形になりやすい
・乾くのが早いため、葺くのも簡単
・教えてくれるところが多い
・どんな生地でも対応できる
一番のメリットは、4番目だと思います。
好きな生地を、小さくても強引につまめてしまう柔軟性は魅力です。
また、好きなところで中断できるのもいいですね。
デメリット
・きれいにつまめなくても形になるので、あるところで成長が止まりやすい
・羽二重などの薄くて小さな生地には向かない
・花びらの時点で形が固まってしまい、葺くときに融通が利きづらい
・ボンドのあとが気になる
といったところでしょうか。
どちらも極めれば、どちらに劣ることなくきれいに作ることができます。
それでは、最初の「なぜつまみ細工をしたいのか」に立ち返ってみましょう。
・憧れの作家さんがいて、彼女のような作品を作ってみたいから
・子どもの七五三や成人式・結婚式のために、手作りの作品をプレゼントしたいから
・職人展で見た、職人のつまみ細工に感動して、同じように作りたいから
・雑誌などの通信講座でみて、楽しそうだったから
・作家として出店し、お金を稼ぎたいから
・憧れの作家さんがいれば、その方に師事し、技法を教えてもらえばいい。
・子どものために作りたいのなら、製作期限までで選ぶべし。近ければボンド、1年以上あれば糊。古典的な髪飾りを羽二重で作りたければ糊。
・職人展で見た技法に感動したのなら、技法は手段ではなく目的ですね。ハードルは高いですが、糊を選んだほうが後悔はないでしょう。
・雑誌の通信講座から入ったのなら、まずはその通信講座を最後までやってみましょう。それでも満足しなかったら、次の目標を考えて、またこのページに帰ってきてください。
・作家としてお金を稼ぎたいのなら、どちらでもいいでしょう。技法ではなく、センスや創造性と、選んだ技法を突き詰める努力があれば、作家として成功するでしょうから。
結論を言うと、身も蓋もないですが、「用途や目的に合わせて選べばいい」のです。
でもね、
・子どもの七五三や成人式・結婚式のために、手作りの作品をプレゼントしたいから
この理由に勝る理由も、勝る作品もありません。
たまに、お客様から、お子様のために作ったという作品の写真を見せていただくことがあります。
もちろん、そのために初めてつまみ細工に挑戦しているので、お世辞にも整っているとは言えません。
でも、私達職人がどれだけ腕を奮っても、これ以上の作品は絶対に作れません。親が子の成長や幸せを願い祝い、心をこめて作った作品に、勝る美しさはありません。
拝見して、いつも心が震えます。
我々作り手は、そんな大切な人への想いを受け取り、その方の両の手に成り代わって作品を作っているに過ぎません。
だからこそ、一つ一つの作品に、心を込めるのです。
ちなみにこれが、息子の七五三のために作った背紋、三階松です。
やっぱり気合が入りますよね(笑)
技法がどうのという問題は、そんな想いの前ではまるで些細なこと、論ずるに及ばないことなのです。
とはいえ、どうせ作るならきれいに作りたい。そして、楽しみたい。
そんな方のために、教室や通信講座をスタートさせたわけなのですが、じゃあなぜボンドではなく糊板の講座なのか。
それについてははっきりとした理由があります。また、改めて書かせてもらいますね。