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好きだけじゃ頑張れないよ

母に「作業中はもろもろのこと手伝えないよ、ごめん」と、タイトなスケジュールのたびに頭を下げて小説書いています。そのこともあり、うちは家族全員が私が小説書いていることと印税をもらっていることを知っています。

ちなみに私が印税をもらえると知ったときの母は、私が書類書いているのを見て不思議そうにしていました。

「これなに?」
「これ出さないと印税もらえないんだよ」
「いんぜい?」
「うーんと、本書いた原稿料」(厳密には違うんですが、そう説明したほうが早いんで)
「え、本書いたらお金もらえるの?」
「……私、これで賞もらったよね? 賞もらったしこれで本出すんだからお金もらえるよ?」
「てっきり記念にただで出版してもらえるのかと思ってた」
「」

どうも、物を書いているのが趣味な人間は、ただでも本出せるなら頑張れると思っているらしいです。
ちなみに伯父にも似たようなことを言われました。

「お前どれだけ印税もらってるの? 一冊につき1円とか?」
「……もっともらってるよ」

今でこそ少なくなりましたが、ミリオンセラーは存在しています。もしミリオンセラー作家も100万冊売っても100万円しかもらえないとなったらやる気がなくなると思います(だって純文学とかでしたら校正にものすごく時間かけてますので、半年に一度しか本が出ないってざらにありますもの。二冊出しても200万円じゃ、新卒の年収と変わりませんよ)。

印税は会社やレーベルによってピンからキリまでなんで割愛します。
ただ、印税はどれだけもらえる計算でも、作業期間は全くお金がもらえません。
ライトノベルでしたら早くても三か月で出版、純文学だったら半年から一年かかりますが、その間も一切作業料はもらえません。出版業界は、何冊冊数を刷るかで印税が決定するため、発売するギリギリにならないと印税がどれだけもらえるかすらわからないのです(詳しいことはネットで検索すればいくらでも実例は出てきますので、そちらで確認お願いします)。
作業している間も、「これどういう意味だ?」と本を買ったりネットで検索したりと、細々とした出費が発生します。ゲラやっている最中に書き過ぎて赤ペン何本も購入とかもあります。

また、小説書いている人間にとって一番つらいのは。
作業やっているときであればあるほど、今作業している小説と全然違うネタができるということです。

「ほのぼのしたもの書いたあとだし、次は戦闘書きたいな、戦闘」
「恋愛もの書きたいな、糖度どれくらいまでだったら大丈夫だろう」
「ホラー! ゲラ待ちの間に読んだ本で面白いこと書いてあったからホラー書きたい!」

新鮮なネタはできても、ネタ帳は埋まっても、作業量がそれを許してくれず、作業中完全新作が書けないのです(その間も連載小説でしたら、既にネタが存在しているので書けたりしますが)。
作業やっていても最初から最後まで作業で埋まっている訳でもなく、作業のない空白時間に「時間が空いた! 新作書くよ!」と慌てて書く以外ありません。

印税欲しいを連呼すると守銭奴だと思われがちですが、拘束時間をお金で保証してもらおうとするのは、どの仕事でも一緒だと思います。
完全に趣味でしたら、自分の空き時間で作業ができますが、自分の空き時間を仕事の作業に当てている訳ですから。
好きだけじゃ頑張りきれないんですよ、本当に。

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