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朗読脚本02_雨が止んでも、想い止まらず

題:雨が止んでも、想い止まらず

それは凄惨な連続殺人事件だったが、犯人は逮捕され、事件は幕を下ろした。
犯人を突き止めたのは、私の上司である探偵……いや、名探偵トゥルースだ。

名前に偽りなし。どんな難題、難事件でも必ず真実を明らかにする名探偵。
私は今回も助手として、彼のサポートに尽力した。
もっとも、私の手など借りずとも彼は事件を解決するだろう。

それでもトゥルースは私を必要だと言って、必ず事件現場に同行させる。
それは、私にとってとても誇り高いこと。
誰よりも間近で、名探偵の名推理を見ることができる。その力になることができる。

明日の朝刊も、きっとトゥルースを讃える記事が一面に並ぶだろう。
そしてトゥルースは、「あまり目立ちたくはないんだけどな」と困った顔で笑うだろう。

その横で私も、笑っていることだろう。

私にウソをつく必要なんてないんですよ。
自己顕示欲まみれのトゥルース。

いつもあなたの隣にいるのですから、分かります。
あなたは名探偵。
でもそれは、正義の味方と同義ではありませんよね?
あなたは謎を解くのが得意。それ以外に得意なことなんてない、人に認められる能力や特技など持ち合わせていないのですから。

目立ちたくない?
とんでもない。
難事件を解き、こうして人から賞賛されなくなったら、きっとあなたは死んでしまいます。
貴方の心は死んでしまうって、私には分かります。
もうあなたは、人々からの賞賛なしには生きていないんです。

でも、どうか誤解しないで名探偵。
私はそんな貴方を愛しています。
他人の罪や謎を解きながら、自分のことをまるで分かっていない貴方を、心から愛しく想っています。
だから私は今もずっと、貴方のパートナーであり続けた。
これまでも、そしてこれからも変わりません。

また私が、難事件をご用意して差し上げます。
そんなに難しいことではありません。
誰だって、簡単にお金を盗めることを知っています。
刃物を突き立てれれば人を殺せることは知っています。
そんなことをしたら、バレてしまうから。バレずに実行することが叶わないから、誰もが普通は悪いことをしないんです。

私は単に、教材を配っているようなもの。
そして学び、理解した誰かが……今日もどこかで事件を起こす。
警察が音を上げるような、難事件が起こるんです。

そうすれば、名探偵の出番。
舞台の幕が上がる。
私はその舞台を、最前列で……いいえ、同じ舞台の上で見ることを望んだ欲深い女なんです。

そう、私も罪を犯しているんです。

いつか、名探偵である貴方なら、そんな私の罪も明らかにしてくれますか?
それとも……もしかして、もう気付いていらっしゃるのですか?
気付いていて、そんな私を「助手」と呼んでくれているのでしょうか?
そんなことを考えると、私は内から溢れる興奮を抑えることができなくなってしまいます。

でも、私はこれ以上の罪を犯す気はありません。
自分の手で事件を起こすつもり、ないんです。
貴方と敵対する気はありませんから。

だから今日も、貴方から連絡が来るのを待っています。
貴方が、事件が起こるのを待っているように。

これからも、ずっとずっと、貴方の助手として。
貴方の隣に居て差し上げます。

   終わり。

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