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朗読脚本08_俺はあいつの助手じゃない

題:俺はあいつの助手じゃない

路地で拾った新聞の一面に載っているのは、名探偵トゥルースの活躍だった。
どっかの一族で起きた連続殺人を見事に解決したことが、仰々しく書かれている・・・・・・のだろう。
俺は字が読めないから、載っている写真とかろうじて知っている単語から勝手にそう判断した。

この事件に、俺は関わっていない。
先月起きた連続毒殺は手伝ってやったが、今回は声がかかっていないので知らなかった。
恐らく、俺の力が及ばない界隈での事件だったのだろう。

今回のは多分、あの花屋を頼ったに違いない。
上流階級とかにやたらと詳しいあいつに・・・・・・花屋ってああいうものなのか?

それとも、住み込みのあのポンコツか?
まぁ荷物持ちとかくらいになるか。雑用とか、面倒事くらいなら、俺の出る幕じゃない。

あいつが活躍するのは、気に入らない。
それに自分が関わっていないと、もっと気に入らない。
まぁ、あいつが事件をどれだけ解決しようが関係ない。
新聞に俺らの名前が出てこないことも、そこは問題じゃない。

警察が解決できない事件を解く。
あの探偵は今、この街を守るのに必要だ。
だけど本当は、あんな探偵抜きでも暮らしていける街にしたいのに。
街はちっとも良くならない。
なんなら、探偵に挑戦してるんじゃないかってくらい、物騒な事件が増えた気さえする。
街に流れる血が・・・・・・増えた気がするのだ。
そんな事件には、街のガキ共が巻き込まれる事も少なくない。
暖かい家も、守ってくれる両親もない、街の裏側に住むしかないガキ共・・・・・・俺の家族が巻き込まれることは許せない。

それでも、事件が続く。
トゥルースの活躍が続く。

警察は俺たちを助けてくれない。
だから俺はトゥルースを手伝うことで、街を、ガキ共を守っている。
要するに利害の一致。
あいつには俺が必要で、俺にはあいつが・・・・・・いや、やっぱ認めたくないな。

俺は早く、あいつにいなくなってほしい。
街中であいつを英雄扱いしているが。
役目を終えて欲しいと思っている。
あいつがこうして新聞に載っている内は、俺たちの望む街は、望む生活は手に入らない。

新聞には笑顔を浮かべた名探偵の顔。
俺は新聞をギチギチに握りつぶして、固めて、路地から表通りに向かってぶん投げてやった。

トゥルースは街に必要かもしれないが、俺はあいつが嫌いだ。
あいつがこの街に来た時。
街を案内してしまったのは、俺だ。
あいつがこの街で、名を上げるきっかけを与えてしまったのは、俺なんだ。

俺があいつに会わなければ。
あいつに、声なんてかけなければ・・・・・・街は今みたいにならなかったんじゃないかって。
そんな風に、足りない頭で後悔する時がある。

でも、後悔しても何もならない。過去は変えられないってことだけは、俺でも知ってる。
だからせめてもの罪滅ぼし。
それが、俺があいつを手伝う理由。

強い風が吹き込み、路地にまた新聞紙が舞い込んできた。
そこには、さっきのものは違うが、またトゥルースの写真が載っていた。

目立ちたくないといいながら、笑みを浮かべて取材に応じ。
金がないと言いながら、事件解決の報酬をため込んでいる。

そんな街の英雄の顔を、俺は無言でーー踏みつけた。

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