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27歳契約社員、運転免許をとる

そうだ、免許とろう

と思ったきっかけは思い出せない。

でもきっと

JR東海の広告並みの唐突な衝動だった気がする。

天啓か。

車など全く運転する必要のない東京都内に電車通勤していた。

7年付き合った現夫と1年ほど同棲し、
3年続いた大手企業の契約事務社員としての仕事にも慣れ、

何かに挑戦したくなったんだと思う。

何となく運転免許。

初めて自分で組んだローンで、入校。
仕事帰りの途中下車。

教習はいつも夜だった。

東京の道は交通量が多いけど、
実は少し都心から離れた場所では
夜の道路は空いている。

路駐も昼間の比ではないので、
比較的走りやすいのだ。

見通しの悪いのは当然なのだけど。

夜の運転は嫌いだけど、
仕方なく運転するときは
初めての路上教習を思い出す。
私は夜に免許を取りに行ってた。
だから大丈夫だ、と。

仮免に1回落ちて、
本免許は一発で通った。
5ヶ月くらいでとったように思う。

運転が好きだった母は喜んだ、が、
母を乗せてのドライブはついに
叶わなかった。

なんとなくとった免許なので、
すぐにペーパードライバーになった。
どうしても運転したいと思えなかったのだ。

電車も好きだし、自転車も好き。
車を所有してなければ練習もできない。
たまに帰る実家で
乗る勇気もない。

実家の車のハンドルキーパーは常に
運転大好きな母だった。

そのまま結婚出産となだれこみ、
免許をとった7年後、
第二子を妊娠中に切迫早産になり、
沢山の人の手を借りて産前産後を過ごした。

そして初めて

「誰かに乗せてもらうんじゃなくて、
自分で車を運転して、
移動の自由が欲しい」

と感じた。

当時行きたかった場所が、
軒並み不便なところにあったせいもある。

そこからペーパードライバーを返上した。

私の強い決意に巻き込まれる形で、
中古の軽自動車を35万円で購入し、
ついでに夫も
12年のペーパードライバーを返上した。

納車日は下の子の生まれた日だった。

我が家の、
私のカーライフは、
下の子の誕生と共に始まった。

そして3年後、
自分の意思と関わりなく
高知県に住むことになり、

真の車社会の洗礼を受けるのだった。

車がないと、
子どもたちを本当にどこにも
連れて行けない。

あふれる自然、海や山や川があっても、
車がないと、行けないのだ。
遊びに行くだけでなく、
病院すらも、
車に乗る必要があった。

公共交通機関に頼るには、
あまりにも不便だった。
そして高額だった。


転入してから
ペーパードライバーを返上するのは
辛かっただろうから、
3年の街乗りを経て、
高知県の道路デビューをしたのは

幸いだった。

あの時、なんとなく免許を取った自分を
最大級に褒めてあげたい。

今、すごく役に立ってるよ、って。

心残りは母を乗せて
ドライブに行かなかったことだけ。

最期の2ヶ月前まで
自分でハンドルを握っていた母を
乗せるタイミングを失ったこと。

それでも母の最期の数週間に、
見送りに、
私の運転は家族の役に立っていたから、
良かったと思う。



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