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90年代のアイドルプレイヤー

90年代後半にトランペットを吹いていた人間なら

大体知ってるかと思う、

セルゲイ・ナカリャコフ。

ロシア出身のイケメン・天才・トランペット奏者だ。

イケメンで楽器も天才的に上手いって、
少女マンガか、
みたいな話だが、

実在の人物である。

私の3歳年上で、
高校に入学したときはちょうど入れ替わりで卒業しちゃったOBの世代である。

私は高校に入るまでプロの奏者について無知だったのだけど、
勉強熱心な先輩や後輩に教えてもらって

超有名な人くらいは知るようになった。
ナカリャコフもその1人だった。

NHKの番組で偶然、
ものすごい久しぶりにナカリャコフを観た。

全体的に肉付きがよくなってて、
変化を例えるならGLAYのTERUみたいな雰囲気。

「あ、貴公子ナカリャコフも歳をとったね…」

謎のお揃い中年気分でほっこりした気持ちになった。

でも現行の宣材写真は相変わらずのファッションモデル並の美貌で、
正直ちょっとギャップがあるかと…。

それでも美貌だけでクラシックファンのお客さんが来るわけじゃないので、
この人は本当に特別上手で努力してきたんだろうな〜
と改めて感嘆。
ロシア出身のロシア人だった気がしたけど、
フランス在住のイスラエル人になってた。
詳細はわからないけど、
色んなことがあったんだろう。

この人の特徴は

循環呼吸という、
鼻から息を吸いながら口から吐くことができることで
半永続的にノーブレスで楽器が吹けるという技術があることだ。

「唇がバテちゃう(唇の振動で音を出してる)のでずっとは無理だけどね!」ってナカリャコフも言ってた通り、息は続くけど現実的には吹き続けることはできない。

循環呼吸だから実現する「超絶技巧」というものが、
若い頃からのこの人の代名詞だった。

私は、
超絶技巧への憧れが薄く…
あと
東洋系のイケメン好きだったため…

ナカリャコフの存在は
自分と同時代を生きてるすごい人、くらいの位置付けだった。

実際、高校の吹奏楽部レベルで超絶技巧が参考になることはほとんどなく。
ソロプレイヤー志向の人は憧れたのかもしれない。

番組内で
「ウォーミングアップに2時間以上かけてるけど、ナカリャコフさんのウォーミングアップはどんな感じ?」

みたいな高校生(多分、吹奏楽部強豪校の子)からの質問があり、

「2時間以上は長いな…」
と私は思った。


ナカリャコフの答えは
「日本の若い人は基礎練習に時間をさきすぎてると思う。
僕は5から10分で低い音で口の周りの筋肉を目覚めさせて、アルペジオを吹いて、
その後はずっと本番の曲の練習をしてるよ!」

だった。


「基礎練短っ!そりゃ、循環呼吸できたらロングトーンとかいらないもんね…」
と思った。天才なのだ。
練習に多くの時間が必要はフィンガリング(指使い、速弾きには不可欠)はこの人の場合努力だけでなく天性なのかもしれない。


笑ってコラえての吹奏楽の旅で
淀工の番組みたときは
全体練以外はパート練習なしでほとんど個人の基礎練ばっかりしてるみたいな描写だったから、
ウォーミングアップに時間かけるって、
部活に時間を最大限にがっつり使う
伝統ある強豪校あるあるなんだろう。それで結果を出してるんだから間違いではない。
天才のソロプレイヤーと
スタート地点が違うだけで。

どちらにも理がある。

さて、
ナカリャコフはいま、
超絶技巧のトランペットプレイヤーというだけでなく、

フリューゲルホルンというトランペットより低くて柔らかい音がでる金管楽器の演奏にエネルギーを注いでいるそうで、

歳を重ねてちょっとふっくらした彼に、
フリューゲルホルンの優しい音色はとてもよく似合うと
思った。

同世代の演奏家として、素晴らしい円熟期を迎えてほしい。



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