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ヒガンバナ

ヒガンバナを見ると死を連想する。

真っ赤な血の色。
突然地中から伸びて咲く赤い花。

生き物が死に向かう秋に咲き誇る花。

これの後に咲くコスモスにそんな思いは湧かないのに。

子どもの頃はこの花が怖かったし、
大人になってからも特段好きな花ではなかった。

でも

母が彼岸にいると思うと
ヒガンバナを見て
慰められる気持ちになった。

当たり前だけど
彼岸にいる
死んでる人間の方が多い。

この世にいる人間の方が少数派なのだ。

死はすぐそばにある。
ヒガンバナが人の生活のすぐそばに咲くように、
彼岸も遠くて、すぐそばにあるものなのかと思うと、
気持ちが和らぐ。

死が怖しいというより、
別れが怖しいのだ。

生まれた時から怖れ続けた、
この世の母との別れはもう終わった。

二度とこの世では会えないが、
二度と別れるをみることもないのだ。

母を失う恐怖を味わうことはもうない。
母が苦しんだり傷つくのをみることもない。


この生で、
死ぬのは一度きりだ。

ヒガンバナに慰められる日が来るとは思わなかった。

自分しか知らない別れの痛みは
押し黙って
時を待ち癒えるのを待つのみ。

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