ペチカ
母が「ペチカ」を好きだと言っていたので、実家のピアノで弾いてみた。
実家のピアノは調律しなくなってから長いこと真ん中あたりのラの音が出なくて困っていたが
母が退院して私が実家で弾くようになったら不思議と音が鳴るようになった。
謙虚を越えて恥じらいが過ぎる人だったので
私たちの前でピアノを弾くことはなかった母だったけど、(1回しか聴いたことがない)
きっと若い頃、この中のいくつかの曲は弾いてみたんだろう。
ピアノではなく、おそらく足踏みオルガンで練習したのかもしれない。
グレード的には初級の私にピッタリなので、
短い「ペチカ」に関してはちょっとしたら譜面を読めてゆっくり弾けた。
雪深い岩手県北の古い家で、母方の祖父母に育てられた母の幼い頃の空気を感じられる歌だと思う。
亡くなる直前に、母の好きな歌や音楽を教えてもらった。
ドライブのお供に洋楽邦楽の新旧ポップミュージックを沢山聴いていた母だったけど、
ベッドの上の母が好きだと教えてくれた曲は
「禁じられた遊び」
「古城」
「朝日のあたる家」
「鉄道員」
「ペチカ」
どれもしみじみとした古いものばかりだった。
CDがあるものは流したり、
ないものはYouTubeで聴かせたりした。
ペチカを弾こうというアイデアが湧いたのは、
母が亡くなって、
父と2人きりの時間にピアノの前に座ったときだった。
生きてるうちに、
弾いて聴かせて、母の感想を聞きたかった。
いまはもう感想は聞けないが、
多分、母の魂には聴こえているだろう。
雪がふる夜は楽しいペチカ。
母が大好きで、また孫である母を大事に育ててくれたおばあさん始め、
懐かしいふるさとの人たちと彼岸で再会して
一緒におこたにでも入ってほしい。