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【サイドストーリー的な特集ページ① 宇野孝子編】

「あきとまさきのおはなしのアルバム」の制作にあたっては、たくさんの方から、数えきれないお力添えがありました。誕生にたちあった苦労やよろこび、共感や励ましのお便りが続々と里枝子さんの元に届き、その一部は文集に掲載されました。

この「サイドストーリー的な特集ページ」では、それらの寄稿文を、随時、紹介します。里枝子さんの視点から描かれている本編と重ね合わせてお読みいただくと、「おはなしのアルバム」の全体像が、より鮮やかに見えてくるのではないでしょうか?

はじめにご紹介するのは、選・校正を引き受けてくれました、点訳ボランティアの宇野孝子さんです。万感の思いを込めて…。(文責・神山)


セイヨウニンジンボク

赤エンピツをにぎって(第二集)


 昨年私は「おかあさん 木があかくなってきたよ」を拝見して、感動でぐにゃぐにゃになって、まわりの人たちに「いいから、本当にいいから、読んでみて」といって、すすめまくったものです。そんな一読者にすぎなかった私が、会話集の作成の一端にふれることになったのは、広沢さんの、一本の電話からでした。

 当初は私も、やったことがないし、選ぶなんておこがましくて、しりごみしてしまいましたが、もっと大きくなったアキちゃんたちに、もっとたくさん会えると気付いて、おもわず「やらせてください」と、お答えしてしまいました。

 原稿をいただいて、読んでは驚き、笑い、感心し、そして泣き…。案の定、しばらくの間は、選ぶ、直すなど、手につきませんでした。気をとりなおして始めてみても、どれを載せたらよいのやら、迷いに迷ってしまいました。インスピレーションで選んで、と広沢さんに助けていただいて、ようやく作業を終えることができました。

 何度見直しても、見落としてしまった私にくらべて、前回と違って、原稿をすべてワープロで打ち出された、広沢さんのパワーには改めて感心させられました。

 アキちゃんたちは、自分で見て、自分の言葉で語っています。それは、じっくり待ち、その言葉をまっすぐに受け止めてくれるお母さんが、いるからなのだとおもいます。そしてまた、お母さんを支える方々、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんがお子さんたちに対してだけでなく、互いに互いを、あるがままに受け入れ、その思いを、まっすぐに、大切に、受け止めあっておられるからだとおもいます。

 最初の会話集でいただいた贈物のお礼が、わずかでもできるかなと思い、お引き受けしたわけですが、お礼どころか、さらに大きな贈物を、いただいてしまいました。本となって、多くの方々の心に届く日を楽しみにしております。

 第二集の会話集の誕生にたちあわせていただきまして、本当にありがとうございました。

  『かみさま きょうも おひさまを つけてくれてありがとう』
  あきとまさきのおはなしのアルバム '88 第二集より

いまの里枝子さんが大好きです。(第三集)

 私の友人に第2集を送り、久しぶりに電話をもらった時です。「点字を習ってよかった。こんないい事に巡り合えるとは思ってもみなかった」と言うと、彼女は「いろいろあったから、ずっと心配していたの。本当によかったねぇ」と言ってくれました。私の気持ちを一緒に喜んでもらえるのが、こんなに嬉しいとは、思いませんでした。

 第2集を出した反響の中で里枝子さんが「私は、こういう事をするために、生まれてきたような気がする」と表現されたときがありました。「よかったねぇ。そういういい事があるから、(会話集を作るのは)やめられないねぇ」と言いながらも、彼女の歩いてきた道のりに、思いをめぐらすと、それ以上、なんと言えばいいのかわかりませんでした。

 辛い思いはしたくない、ではなく、いろいろな思いをしたから、今の自分があるんだ、と思えるのは、本当に幸せだと思います。ともすれば足をすくわれてしまいそうな、まさにそのことが、今の自分を立たせてくれる、より所となってくれているのですね。

 すてきな事があった時、そばに誰かいてくれると、ひとりでいるときよりも、それは何倍もすてきな事になります。すてきなものがあった時、あきちゃんも、まさきちゃんも、大好きなお母さんにも、わかってほしいと思うでしょう。自分の見たものがどんな風にすてきだったか、自分の力をすべて使って、よく観察し、自分のものにして表現しています。それはしなければならないことではなく、したいことだから、楽しい、うれしい作業です。そしてお母さんにわかってもらえると、自分の好きなだいじな気持ちが何倍にも大きくふくらんでいきます。そんな力の源になれる、里枝子さんは、すごい!「ほんものの おかあさん」が大好きな、あきちゃんと同じように、私も「いまの 里枝子さん」が大好きです。

 今、私の手元には、4cmの厚さの原稿の束があります。繰り返し送られてきたものです。回を追う毎に、削られ、改められ、つけ加えられて、まとまってきました。

 これは、会話集であるとともに、里枝子さん自身でもあります。またひとつ、宝物が、増えました。

『キューちゃんのおかお わんわんみたい』
あきとまさきのおはなしのアルバム '89 第三集より

流れの源 (第四集)

 あきちゃん達がまだ小さかった頃、近所の方が、子育てというものは、下の子が幼稚園にあがるまでは、長いトンネルをくぐっていくようなものだとおっしゃられたとのこと。

 毎日がすべて光に満ちていたわけでなく、不安や悩みや苦しみもあったけれど、子供達の輝くような言葉に励まされてそのトンネルを歩いてこられたと語られた時、なぜこの文集を読むと元気になれるかが、よくわかりました。私も一緒に励ましてもらっていたんですよね。

 最初、手助けできることがあるかもしれないと思ったけれど、とんでもない。いつだって相談をもちかけては、「そういう人が好きよー」とあの天女の声で、励ましていただいているのは、私のほうなのです。

 キュリーの歌ができたという話を聞いたのは、だいぶ前の事でした。はじめての歌だと聞いていたのに、その次に聞いたのは、わたぼうし大賞を受賞したというニュースでした。
 詞を作っただけなら、それで終りなのに、土屋さんという方を得て、メロディーがつき、大賞をいただき、キュリーの歌はコンサートと一緒に、日本全国をめぐっていくことになったのと、里枝子さんは言います。

 流されているような気がすることがある、と言っていた里枝子さん。でも、今いるところを大切にして、今いる人たちを大切にして、流されていくのではなく、私達をこの流れに手引きしてくださったんじゃないかしら。

 歌を歌うことで、文集を読むことで、話題にしたり、薦めたり、点訳したり、朗読したりすることで、私達は里枝子さんにつながり、里枝子さんを応援するとともに、自分もはげましています。よりたくさんの人達とつながるために、私達はあるきはじめています。この想いが大きな流れをつくりだすのです。

 どうかこの流れが、今はまだ見知らぬ人である、もっともっとたくさんの方々にも届きますように。

『お月さまー、そこから海が見えるかー!』
あきとまさきのおはなしのアルバム '90 第四集より


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