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もし君を一途に愛していたならば… Ⅰ

 こんなはずじゃなかった。
今さらそんなこと言ったってもう遅いことは分かっている。薄汚い部屋の中、ひとり俯いた。
1
彼と1度目の再会したのはもうずっと前。私がまだ中学生だったころだ。
“隣のクラスにイケメンがいるらしい”そんなうわさを聞き付けた私たちのグループは、興味本位で見に行った。
彼は確かにイケメンだった。目つきがキリッとしていて背が高い。
少女漫画に出てきそうな顔だ。他のクラスからも女子のグループが来てて、少し迷惑そうにしていた。
「ねえ、もう行こう」
私は一緒に来ていた麻美(あさみ)と春香(はるか)に言った。でも2人はずっと騒いでいる。
「めっちゃイケメンだ」
「彼女いるのかな」
「いるに決まってるじゃない」
そんなこと、私には興味がない。

どうせ恋なんて邪魔なもの、と知っているから。それに、友情も。
ぼっちだと思われないようにこのグループに入ってるけど、はっきり言って2人ともウザい。
麻美は僻み(ひがみ)がすごい。しかも太っていて周りから笑われている。
春香は美人だけどそれを自覚しているみたいでただのナルシスト。
2人ともバカ、ただのバカだ。
私はこの世の中を理解している。中学1年生の時点で。
上に良い顔していれば人生勝ち組になれる。今まで素の自分を外に出したことはない。
友達はおろか、親にもだ。
こんな生活をしていれば疲れるけど、負け組になるよりはましだ。
恋だの友情だのに青春をつぎ込む気はない。

そう思っていた。
彼が振り返って、目が合うまでは。

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