もし君を一途に愛していたならば… Ⅵ
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私は昼頃、大介の家を出た。
そして、勇也と同棲していた家へと向かう。
一歩一歩、近づくたびに憂鬱と微小な怒りが心の奥に溜まっていく感覚を味わった。
鍵を開け、家に入ると泥棒が入ったように荒らされていた。
「うっわ、汚」
そう不満を漏らしつつ、自分の部屋に入って片づけを始めた。
スーツケースに必要最低限のものをひたすら無心で詰め込んだ。
そして、リビングに置いてあった私の1番気に入ってた写真もカバンに入れた。
まだ、未練があるのかもしれない。
そう思ったけど、過去を振り返っても無駄だと思った。
いや、そう思うしかなかった。
じゃないとずっと過去を引きずってしまうような気がするから。
私は、潔癖というわけではないけど綺麗好きだった。
こんな汚い部屋、すぐにでも去りたい。
私は最後に、彼の大好物だったオムレツを作った。
そしてラップに包んで冷蔵庫に入れた。
「バイバイ。」
そう呟いて、家を出た。
鍵はポストに入れて、もう、振り返らないと決めた。