増えすぎたツルハシ #1
カンッカンッ
山奥にツルハシの音が鳴り響く
小さな村があった
カンッカンッ
10人の村人は、朝から晩まで
カンッカンッカンッ
この村は、鉱山の採掘を行い
生計をたてる村だ
ある日、一振りで3回分の掘りが出来るツルハシが手に入る
カンッカンッカンッ
カンッカンッカンッ
カンッカンッカンッ
村人は、今まで通り同じ時間で、3倍もの成果が出せるようになった。
暮らしの質も3倍だ。
しばらくして、自動で採掘してくれる
ツルハシのロボットが手に入った。
カンッカンッカンッ
村に響き渡るツルハシの音は変わらぬまま。
しかし、変わった事もある。
村人は、それぞれ以前から興味があった事に挑戦し始めた
あるものは、農業を
あるものは、畜産を
あるものは、本を書き
あるものは、ほとんど村にいなかったり
あるものは、睡眠も増えた
村長は言った。
『皆で築き上げた村であり、いわば、村はひとつの財産であり、
収益物件のようなものだ。村人で分かち合い、
そして、残り限られた人生の中で、
村の皆が好きな事を出来る時間を作ってあげたかった』のだと。
続く
お花の騎士