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サンタがもらったプレゼント
2年程前に投稿したものですが、削除してしまっていたみたいで、この時期になったので、再度投稿になります。
以前読んでスキやコメントくださった皆様には削除になってしまっていた事、申し訳ないです。また読んでいただけたら嬉しいです。この童話を誰かが見つけてくれますように
もうすぐクリスマス。
街は大忙し。
雪の白さは穏やかさを呼び
人々の活気は笑顔を運ぶ。
街の女衆はケーキをつくり、
子ども達は飾り付け
男衆はモミの木をとりに森へと向かう。
クリスマスは特別。
静かな森での白い息は音楽を奏で
男衆の歌声でモミの木が倒れる
弾む思いは森を沸き立たせる。
夜を迎える合図の空色が
明るさを弱めたころ
空に真っ黒な雲が覆い
雪の輝きは奪われた。
静かな暗い銀世界に包まれた。
雪を凍らすような寒々とした声が響き渡る
「ウォーンウォンウォンウォン。
ウォーンウォンウォンウォン」
泣いている。
誰かがどこかで泣いている。
悲しく、さみしく泣いている。
それを耳にした男衆。
斧を手放し近づくと
サンタクロースが泣いている。
真っ白なサンタクロース。
雪に包まれ泣いている。
男衆は声をかける。
「サンタさんどうしたんだい。」
「風邪をひいてしまうよ。」
「何がそんなに悲しいんだ。」
「もうすぐクリスマスだよ。」
「みんなが楽しみにまっているよ」
真っ白なサンタクロース
何も答えず泣いている
動かない。
涙で凍ってしまった大きな体
男衆の白い息さえ凍りだす。
男衆が出来る事
ある者はお店で、
ある者は奥さんに
ある者は恋人に
ある者は子ども達に
森の中で、悲しく泣いている
真っ白なサンタクロースの話しをする。
街を輝かせていた雪。
嘆きの雫に変わっていった。
クリスマスカラーで彩られた町も温かい色が消えていく。
真っ白なサンタクロースがいる森に
街人達は通い出す。
悲しみばかりの真っ白なサンタクロースに
街人達は会いに行く
おばあさんは毛布をかけた
真っ白なサンタクロースの体の氷か溶け始めた。
少女が温かいココアを届けた。
一口喉を通過した。
真っ白なサンタクロースは目を開けた。
男の子がクッキーを渡した。
一口かみ。
真っ白なサンタクロースの涙が止った。
男衆は寒さを凌ぐ小屋を作った。
真っ白なサンタクロースは腰をあげた。
「ありがとう」
白い息がとけだした。
来る日も来る日も街人の想いは途絶えない
真っ白なサンタクロース
それでもうずくまったまま。
街の人達は困り、考え、悩み出す。
人々の想いはペンを持つ手から紡がれる
暖かい文字の贈り物
木こりの青年は
「どうしたんだい?サンタさん。
僕は幸せだよ。サンタさんがいてくれたから
小さいころから沢山のプレゼントをありがとう」
3人の子どもをもつお母さんは
「サンタさんからのプレゼント
どれだけ子ども達の笑顔に出会えた事か。
子ども達の笑顔をありがとう」
街の子ども達は
「サンタさん。プレゼントありがとう」
サンタさんの笑顔の絵を添えた。
おじいさんも、
おばあさんも、
花屋さんも
パン屋さんも
子どもも大人も。
真っ白なサンタクロースの元気を祈って、紡いだ手紙。
届いた手紙は
机の上で山になり
虚ろとともに凍りはじめる。
届けているのに、届かない
雪の冷たさだけがみんなに積もる。
そんな様子を
ずっとみていた男の子。
名前は「モケテ」
街には馴染めない変わり者
何をやっても失敗ばかりの男の子
学校では仲間はずれ
どこにいっても、
居場所がない。
お父さんには
何をしても叱られる。
それでも大好きな場所がある。
お母さん
いつもモケテを抱きしめる
「モケテがいてくれてよかった。
大好きよ。」
モケテの居場所はそこにある。
モケテも真っ白なサンタクロースが心配。
僕にも何かできることはないのかな?
そうだ。小屋の中はくらいから、
暖かな灯りを持っていこう
何かをしないといられない。
「こんばんは。サンタさん。
灯りを持ってきたよ。」
「僕の名前はモケテだよ。」
「ありがとう」
力のない声がきこえる。
明りに照らされる
言葉の山
机の上でかじかんでいる。
「サンタさんはすごいんだ。
みんなサンタさんが大好きだ。
サンタさんの元気がみんなの願いだよ。」
「今日は灯りを持ってきたよ。
これでみんなのお手紙読めるね。」
温もりの灯りの下で
凍り始めた言葉の山はサンタさんに届いていった。
涙となって暖まる
真っ白なサンタクロースの体を焚き染める。
モケテの気持ちも暖まる
「サンタさん。
みんなの手紙、元気になるね。」
真っ白なサンタクロースは
「ありがたいよー。」
「うれしいよー。」
温かい涙が溢れ出る。
なのに涙がまた凍る。
サンタの声がそうさせる。
「僕はみんなの気持ちにはこたえられない。」
モケテの涙も冷えていく。
「どうして?なんで?
サンタさんをみんなが必要としているよ。
みんなに愛されているのに」
わからない
伝わらない
思いが涙を流させる。
「ごめんね。
僕の為に泣かないで。
僕はダメなサンタクロース。
失敗ばかりの落ちこぼれサンタなんだ。」
真っ白なサンタクロースのため息は
頼りにしていた灯りさえ
光を奪い始めていく。
「もうサンタをやめて。」
悲しい呟き
真っ白なサンタクロースが目を閉じる。
心も閉じる音が聴こえる。
「閉じないで」
「お願い目をあけて」
モケテの叫び。
「待って。お願い聴いてほしい。僕と同じなサンタさん」
真っ白なサンタクロースの目が開いた。
モケテは肩からかけていたカバンの中から手紙を取り出す。
誰にも見せたことのない手紙
大きな声で読みはじめる。
大好きなモケテくんへ
今日も一日ありがとう。
みんなが僕を馬鹿にする
仲間になんかいれてもらえない。
それでも今日も君だけは、僕を馬鹿にしないでいてくれた。
何をしても上手くいかないけれど、
諦めずいつも君はがんばった。
僕は知っている。
本当はいじめられて苦しくて、
きつくて泣きたい毎日を。
それでも君は励ましてくれる。
僕には特別なものが何もない
そんな自分が情けなくて、嫌い。
それでも、それでも
意地悪な心を君はもたない。
ありがとう。
モケテ君の優しさで、
僕は誰も嫌いにならないでいられる。
もう諦めたかった
でも、生きていてくれてありがとう
生き続けてくれてありがとう。
だってママの笑顔が見られるから。
僕も笑顔になれるから。
これからも僕は君の、モケテ君の味方。大好きなモケテ君。
ありがとう。
これからもよろしくね。
いつも、いつもありがとう。
モケテの声は涙に震える
モケテの手紙に綴られた
言葉の旋律は讃美歌になり
真っ白なサンタクロースに届いてく。
小屋の灯りも息を吹き返し
暖かく、暖かく揺れ動く
サンタの中に明かりが確かに灯された
真っ白なサンタクロースは問いかける
「どうして、自分に手紙を書くんだ?」
モケテは笑顔で泣いている。
「あのね。
周りの人がいくら僕を嫌いでも、
僕は自分を好きでいたい。
ママが大切に思ってくれていても、
僕が一番僕を大事にしたい。
僕は僕を好きでいたい。
だから僕は
自分へのありがとうの手紙を
自分にプレゼントする。
僕には僕への愛があるから」
・
「サンタさん。僕も…。僕も…。」
真っ白なサンタクロースはモケテを抱きしめた。
暖めるように抱きしめた。
「サンタさん。
いつもみんなにプレゼント配っているから、
今日はサンタさんがサンタさんにプレゼントをしてあげて。
ありがとうのプレゼントを
お願いサンタさん」
真っ白なサンタクロースがもったペンは
星の欠片が夜空を走る速さで
言葉が光に変わっていく
親愛なるサンタへ
僕はサンタの資格のないダメなサンタ、
サンタクロースのテストは合格できた。
嬉しかった。
がんばってくれてありがとう。
プレゼント落としても
道をまちがっても、
トナカイにしかられても、
最後までプレゼント配ってきた。
沢山の子ども達の笑顔が見られたよ。
それにこんなに沢山のお手紙をもらえる僕になれていたよ。
自分が嫌いになっていた。
でも、君は今日までサンタクロースでいてくれた。
それがなによりうれしいよ。
ありがとう。
僕は僕をもっと好きになりたい
がんばってきた僕がいたから。
世界中の人の笑顔をまた見たい。
思っていたより
僕は誰かの笑顔の力になれていた。
きづかせてくれてありがとう。
サンタクロースが僕の夢。
みんなに夢を届けたい。
大切な友達
モケテに出会えた。
本当にありがとう。
素敵なプレゼントをありがとう・
親愛なるサンタクロースの僕。
これからもよろしく
真っ白なサンタクロースの頬は
赤く染まり、
目はキラキラかがやいた。
「ホッホー」
晴れやかな涙声が森に響き渡る。
真っ白なサンタクロース
体中に熱を帯び、はやる胸の鼓動と共に立ち上がる。
モケテは真っ白なサンタクロースにドキドキする。
「モケテ。君は特別だ。
誰もプレゼントできない素敵な贈り物を持っている。」
「僕にとってのサンタクロース。
それは君。ありがとう。」
雪が踊り、風が歌い始めると
プレゼントをいっぱいソリに乗せたトナカイが真っ白なサンタクロースの前に現れた。
トナカイは
鼻を赤く光らせてモケテにウィンク。
「モケテ。
今日はクリスマスイヴ。
みんなにプレゼント配らなくちゃ。」
「手伝ってくれるかい?」
真っ白なサンタクロースはモケテを抱き上げ、ソリに乗せた。
顔を見合わせ
「ホッホー」
と笑い声を響かせ
二人は空に飛び出した。
いつのまに
真っ赤なサンタクロースになったモケテ
クリスマス
街は幸せに包まれた。
クリスマスカラーに彩られ
街人達の笑顔が雪とともに舞い上がる。
少しだけ違ったクリスマス。
世界中にとどきますように
「自分へのありがとうの手紙」
「ホッホー」
おしまい。
あなたも自分への感謝の手紙いかがですか?
#童話