自死遺族 2

そして次に思い出すのは警察とのやりとり
私は警察にいろいろ聞かれるのが嫌で、一応私より数秒先に発見した主人に任せていたが、それでもやはり私もいろいろと聞かれた
誰かに恨みをかっていたか、とか、窓には鍵がかかっていたか、とかだったと思う
多分私は「自分で死んでるのになんで?」と言ったと思うが「一応聞かせてもらわなあかんのです」と言われた
世の中には自殺に見せかけた他殺がよくあるということなのだろうか
私は今となってもどう思えば良いのかわからない感情になった
勿論自殺なんてして欲しくなかった。でも誰かに殺されたなんて考えただけでも嫌だった
なんだろう、強いて言えばカレー味のうんこを食べるかうんこ味のカレーを食べないと死ぬぞと言われたような感じ。ごめんね例えがバカすぎて
葬式が終わった頃、父方の親戚から「本当は殺されたんやない?自分で死ぬなんて考えられへん」
と、またもやうんこカレーの2択をつきつけられ
「もう考えたくないのに、そんなん言わんといてよ」と怒ってしまった。おばちゃんあの時はごめんよ、今なら「それやったら私が死ぬまでに犯人みつけなあかんな!父ちゃんの名にかけて!」とか言えるのに、あの時はさすがに余裕なかったわ

そして警察からの質問が終わるとその場にいたくなくてフラフラと外に出たところに、1人目の姉家族が来た
私は笑う必要のない時でも、いやむしろ、笑っては行けない時になぜか笑ってしまう性質があるようで、多分ヘラヘラしていたと思う
その時のことを何年も後になって姉たちに反省を込めて話した事がある
すると「うちらってそういうとこあるよな…」とかえってきたので、私だけじゃないんだと安心した。そしてこんな話を聞いた
父が死ぬ数年前に田舎のおばあちゃんが亡くなった時もうちの家族は葬式でヘラヘラしていて、それを田舎の親戚に見られており「あの人らは葬式で笑うなんて不謹慎だ」と怒られていたそうだが、父が死んでもヘラヘラしている私達を見て、おばあちゃんの葬式で怒っていた親戚から「こんな時でも気丈に振る舞って…あんたらを誤解していた」と優しく言われたらしい
どうやら父のおかげで、うちの悲しいサガに対する誤解が解けたらしい。ありがとうお父さん
話を戻そう

1人目の姉家族は車を降りるとすぐに父の元に向かったが、義兄は必死だったのだろう、少し怒ったような顔をしていた
その後、主人や周りの人にいろいろ任せて私は車の中で子供を抱いていると、姉も入ってきて、最初は姉が、次に私が、過呼吸になった
過呼吸って感染るものなんだと初めて知った

次に遠方から2人目の姉家族が来たが、そちらの義兄は車から降りるとすぐに私と、先に到着していた姉を「辛いな、辛いな」と抱きしめてくれた
普段はあまり噛み合わない義兄だっだが、その時の優しさには今でも感謝しているし、人には非常事態にしか見えない本音があるのだと、その時知った

そして父の納骨が終わった頃、仲が良かったと思っていたうちの家族はバラバラになった
後で何かの本で読んだのだが、自死遺族というのは時が経つにつれて感情の変化が複雑に起こるらしく、その経過とは

①直後の衝撃、否認
現実を受け入れがたく、なぜ、どうしてという疑問や、罪悪感、後悔が強く湧き上がる

②悲しみと喪失感の深化
数瞬間から数ヶ月すると、深い悲しみが表面化し出し、自死に至った経過を探ったり、どうにかして助けられなかったかと、心の中で何度も繰り返す

③孤独と孤立
他者が完全に理解してくれないと感じる事が増え、孤独感が増す。また自死という偏見や世間の目が気になり周囲と距離を置こうとする

(②と③の段階では、深い悲しみから「気付けなかった自分への怒り」「亡くなった人への怒り」「周囲や社会への怒り」が何度も押し寄せたり、虚しさを感じたりする)

④少しづつの受容と再建
数年経つと、痛みは消えないものの、痛みを抱きながら生きていく方法を少しづつみつけられる人もいる

⑤意味の再構築と成長
さらに時間が経つと、その経験を自分の人生の一部として受け入れ、その中で自分の生き方を見つけ直す人もいる

(④と⑤の段階でも虚しさが押し寄せる場合もあり、引いてはかえす波のように2歩進んでは1歩下がったりしながら前に進む)

うちはまさしく②と③の怒りの時期だった
みんなそれなりにおかしかったが「親しき仲にも礼儀あり」を破ってしまった
その後数年かけて仲良くはなったが、やはりギクシャクした関係性は多少なりとも当然残り、今も完全には消えていない
例えどんなにおかしな精神状態だったとしても、何をしても許されるわけではない
お互い傷もつくし、その傷が一生癒えない傷になる場合もあるのだ
今となっては取り返しがつかないし今更どうしようもないので、私はもう何もしないことに決めたが、もしあの時に戻れるのなら、「今はただ静かに悲しんでおいた方が後々気持ちが楽だよ」と自分に教えてあげたい

いいなと思ったら応援しよう!