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痛みがあっても楽に動けるように

痛みについて考えてみる

普段臨床をしていると必ずと言っていいほど遭遇するのが「痛み」です。

患者さんに聞いても

「この痛みさえ取れればねぇ」

と主訴が痛みであることがとても多い印象です。

私は以前回復期に所属していたので、術後の患者さんを多く担当していました。

術創部の痛みから長期間の臥床に伴う腰痛、歩行訓練時に不慣れな状態で無理やり歩くことで生じる上肢(特に肩周辺)の痛みなどなど、、、。

痛みのバリエーションは本当に多彩です。

僕自身も昔に結構強めの腰痛や膝関節痛を持っていたりしていたので、痛みに関してはなるべくなんとかしてあげたい!!
と常日頃から思っています。


ですけど、、、。

なかなか痛みって簡単に取れないんですよね、、、。
(自分の力不足もかなりあります、、、)

特に回復期に勤務していると、主に在宅に復帰することを目標にリハビリをしています。

そのため在宅に復帰するために必要な動作を再獲得していかなければならないので、痛みがある程度残った状態でも動いていかなければならない事も多いです。

痛みがあるうちは動かないほうがいいのではと思う方もいるかもしれませんが、

実際は痛みのある中でも動いていくうちに痛みがだんだん軽減していく事も多く経験します。

それはなぜか、、、?

みなさんは以前NHKで放送された
「腰痛・治療革命〜見えてきた痛みのメカニズム〜」はご覧になられた事はありますか?

いまDVDブックスも販売されているようなので興味があれば一度読んでみてください!

この放送の中で痛みの抑制メカニズムで背外側前頭前野(DLPFC)という領域が関与していると報告されています。


DLPFCとは

DLPFCとは痛みの認知的側面との関わりがある領域と言われています。

認知的側面とは痛みに対する注意や期待などの侵害刺激としての意味以外のものを指していると思います。

本来は必要以上の疼痛はこのDLPFCによって抑制されているのですが、このDLPFCという領域はストレスに対して弱いらしく、継続した痛みなどによって長期間ストレスに晒されるとその活動が低下してしまうそうです。

痛みというのは=侵害刺激ではなく、痛みに対する情動(嫌な気持ち)も痛みの内に含まれます。

「痛みが起こるかもしれない」

「痛みがいつになったら収まるのか」

という不安感もDLPFCに対してストレスを与えてしまいます。

活動が低下する事で疼痛が残存、もしくは増強し、さらに動く事に対してストレスを感じるという負のスパイラルに陥ってしまいます。

痛みに対しての介入方法

そのため痛みに対しての介入において重要なことは、

痛くなるのが怖い!!
痛くなりそうだから動きたくない!!

という情動にたいしてもアプローチできたらいいですよね。

方法としてはざっくりいうと3つあります。

それは

運動前に痛み自体を軽減・消失させる
運動中に痛みが出るのがどこからか、その人が確認しながら動作ができる。
痛みがあっても、その人がしたいことができる。


運動前に疼痛を軽減させるには

運動をする前に、痛み自体を軽減することができれば、動作時に疼痛が増強するかもしれないという不安感も軽減し、動作が出来たという達成感が得られる為、DLPFCへのストレスが軽減するのではないかと思います。

私が普段臨床で使用しているのは主にトリガーポイントなんですが、痛みが軽減できる手技ならなんでもいいと思います。

トリガーポイントの利点は症状によって、対象となる筋が絞り込める点です。

これによって、疼痛が起きている筋を患者さんにも説明しやすいですし、セルフケアの指導も簡潔に説明することができるため、「痛みの原因がわからない不安感」や「痛みがいつまで続くかわからない不安感」に対してもアプローチすることができます。


各症状に対してのトリガーポイントのアプローチや、そのほかのトリガーポイントの個人的な使用方法は今後記事にしていく予定です!


痛みがどこで出るか、どこまで動いて大丈夫かを確認しよう

人は相手の考えを変えようと思うと、お互い消耗してしまいます。
そもそも足手の考えを意図的に変えるみたいな事はできないと思います。


僕たちの利点としては運動を分析できることです。
そのため動作を観察・分析することで、その動作のどこで痛みが出ているのか、それがどの筋活動(収縮様式も含めて)・関節の動きなどで起こっているかを客観的に説明することができます。


痛みのある方で多いのが、「痛い=動けない」という極端な考え方になってしまうことがあります。

実際は動き全てで痛みのある場合は少なく、痛みの出る動きは限定されていることが多いと思います。(急性炎症などの場合は除きます)

痛みの出ない範囲で動いていったり、痛みの出ない動きを徒手的に誘導したりすることで、

相手側に

あれ?意外と痛くなかったかも、、、?

という反応を引き出していく事が非常に重要であると考えています。

このような反応の積み重ねでストレスが軽減され、DLPFCの機能が回復し疼痛が軽減するのではないかと思っています。

痛みがあってもその人がしたいことが出来るように

これは特に病院で入院されている方が多いと思いますが、病棟生活には安静度があります。

術後であったり、能力的にまだ自立はリスクが高いなど様々な要因はありと思いますが、この安静度により患者さんは自分で選択した生活がしにくい状態になっています。

回復期においては能力がどんどん変化していく時期でもあるので、この「自分の事はある程度自分で決める事が出来る」という環境をいかにして作れるかということは非常に重要と考えています。

そのため特に病棟安静度に関してシビアに考えるようにしています。

痛みが強い場合、病棟の安静度はどうしても低い状態になりやすいです。

まぁ痛み強い場合は仕方ない部分もありますが、必要以上に安静度を制限してしまうと

「やっぱりまだ痛いから身体を動かしてはいけないんだ」

「まだ私は全然治っていないんだ」

みたいな解釈をしてしまうと余計に痛みが強くなってしまうと考えます。

そのため「痛みが我慢できそうだったら1人で動いていいですよ。痛みが強い時は無理せず呼んでくださいね。」

と相手に選択してもらうようにしています。

そのように自分で選択できるようになる事で、ある程度自身の選択での生活ができるようになり、DLPFCへのストレスも軽減するのではないかと思います。

最後に

今回は痛みに対して、今考えていることを中心に書かせていただきました。

痛みに関しては普段臨床でもよく遭遇しますし、痛みが軽減させることは私たちセラピストの役割でもあると思っています。

ですが「要は痛いけど動いときゃ痛み減るんだろ」という解釈は絶対にして欲しくないと思っています。

記事にも書きましたが、痛みとは侵害刺激という感覚だけではなく、痛みが出ることで生じる不安感や無力感も含めて痛みであるということです。

そのため私たちセラピストはそのことを理解し、患者さん・利用者さんに接していかなければならないと思います。

しかし、徒手的に軽減させるだけでは、一次的に軽減できたとしても「先生にやってもらわないとまた痛みが出ちゃうから」のように依存関係になってしまうのは避けなければなりません。

痛みを軽減させて、かつその人がその人らしく「楽で楽しい」生活が営めるようにこれからも精進して行きたいと思います。

まとめ


痛みにはDLPFCが関与している
DLPFCはストレスに弱いため、いかに痛みのストレスを減らすかが重要
動作時にどこで痛みが出るのかを理解し相手と共有しよう
痛みがあってもその人らしい生活ができるように環境を調整しよう

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