平成の独占男
私は一度だけ、褒め称えたくなるほどの独占男と交際したことがある。
交際を始める前に「独占はございませんね?自由を愛していますよこちらは?」と確認したはずなのに、とんでもない詐欺である。
独占術も色々あると思うが、
いわゆるよくある「予定の監視」とかっていうのはもう当たり前である。
例えば仕事に行くときの事前報告。
別々に住んでいるので「9時42分の電車に乗る予定だぴょん😘」と朝っぱらから、その日の乗車時刻をLINE通知。
そして電車が来て、乗車して、まぁだいたい1分後の9時43分に「予定通り電車に乗ったぴょん😘朝はねむねむ😘ぷりぷり😘」とお知らせ。
彼はLINEで言う。
「1分間何をしていたの?」と。
言うまでもない。電車に乗っていたのである。ニュージャージー州で男と密会していたとでもいうのか。くだらない。ばかばかしい。
他にも斬新な独占術がある。
「二人でお家にいる時に私がトイレで大をしたら、毎度目視確認」である。
随分変わった趣味である。
私は”大”を見られようが見られなかろうがそんなくだらない事はどっちでも良い。そんな小さいことを気にするような人間ではない。ただ気にするのは、限りなく”フェア”に近い関係性を保ちたいという事だ。向こうが私の大を見るなら私も向こうの大を見る。向こうが私の大を見ないなら私も向こうの大も見ない。こうだ。
しかしどうだろうか、彼は私の大を目視確認し、クサイとかなんとか感想を言い、自分の大の番になると「恥かしいヨォ😘」と座ったまま隠して流すではないか。くだらない。ばかばかしい。
他はいい所だらけなのにもったいない。この独占を沈めるためにはどうしたらいいのか。話し合いをしても無理、声を荒げても無理。何をどう力説しても無理である。
そうだもうこれは別れるしかない。これ一本しかない。当たり前である。
と思えばよかった。
しかし当時の私は「よし、超几帳面なこの人の、超几帳面に畳まれているのこの下着たち、靴下たち、お洋服たちを全部収納ケースから出してみよう😘そしたらやめるかなぁ😘」
と50万円以上は金をかけて育てた親も泣き出すであろう、大作戦を思いつくのである。
ケースから全部出した。そうすれば何かが変わると思った。
彼は言った。
「ひどい」と。
そして、散らばったそれらはまた几帳面に戻されていった。
独占は終わらなかった。
完全に戦術のミスである。
学校教育なんてものは何の意味もなかったのである。学費を親に返してほしい。
程なくして交際は終了。
これはとっくに過去の恋愛であり、一生連絡を取ることのない彼には、面白い経験をさせてもらったと大変感謝をしている。どんなこともありがとうだなのだ。
P.S.
LINEのアイコンで、今、彼は、己の子を大切そうに抱いている。