かわいい食べ物・かわいいわたし
自撮りをするときに食べ物と一緒に写すときがある。
若い女の子などがSNSでよくやるパターンだ。
だいたいその際に選ばれる食材と言うのは、流行りのものが多い。
タピオカやバナナジュース、色のついた綿菓子、マカロン…過去の前例としてはこんなものだろうか。ほかにも手ごろなところで、クレープやアイスなどもある。
この自撮り食べ物に関して思うのは、食べ物よりも、「流行のものと一緒に映っている私がかわいい」という思惑がどことなく好けて見えるところだ。あざとさと言うのだろうか。食べ物は一つのアイテムに過ぎず、目的はそれを持つ自分なのだ。『ザ・テレビジョン』の表紙モデルがレモンを持っていたのに似ている。主役はあくまでも自分というメッセージが写真から伝わってくるのだ。
女装においてもこういった写真はよく見かける。
恐らく「かわいい(今流行りの!)女の子みたいなことしたいじゃん。せっかく女装してるんだし」という気持ちはあるのだろう。それに加えて、「流行のものを食べてる自分かわいいでしょ?ねえねえ!反応してよ!!」と言った思惑もあるのではなかろうか。
しかしそんなことについて私は否定しないし、女装をしていれば抱く感情だろうくらいに思っている。
折角化粧も服もばっちり装っているのだから、女の子が何のためらいもなくやっていることをしてみたいと思いもあるだろう。タピオカだろうがマリトッツォだろうがどんどんツーショットを撮ればいいのだ。
ただ女装界隈における食べ物ツーショット問題においては、流行スイーツの他に、よく見かけるアイテムがある。
それが棒状の食べ物だ。
例を挙げるとバナナ(チョコバナナ)、フランクフルトなどである。
「いただきま~す」などというハートマークを散らさんばかりのツイートを添え、舐めたりかぶりついたりしている写真をアップするのが定番だ。
この手の写真を見かけるたびに、私は何とも言えない気持ちになる。
「食べ物をそういう風に扱うな!ちゃんと食え!」
というものではない。
もちろん、かわいいとかいやらしいという感情でもない。
ベタすぎるギャグを見せられたときの、一種の寒々しさを感じてしまうのだ。
ヤマザキパンのまるごとバナナなんかを食べている女装に至っては、クリームが口や頬についている写真までついてくると、
「トホホ…」
とさえ思ってしまう。
味気ない自分の女装アカウントに、一発スパイスを効かせたかったのだろうか。
「ボク、こういうことしちゃうんです。てへっ」
というようなアピールはあるのだろうか。
本人にはいろんな思惑があるのだろうが、もはやベタで使い古された感じが否めないのである。ワンパターンが詰め込まれすぎているのだ。
これに似たようなものを考えた際にふと思ったのが、普段女装をしない人が女装させられた時にとるポーズである。
そういう人はなぜか、ぶりっ子のポーズ(あごの下に両手の拳を添える)をとってしまうことが多い。
男性にとって、かわいい=ぶりっ子ポーズな人が多いのはわかるが、そんなポーズをとっている女性を一度も見たことがない。
つまり男性にとっての「かわいい女性」のイメージでしかなく、ザ・ベタ!なものでしかないのだ。
「それはもういいよ、もっとポーズはないの…」
という思いをつい抱いてしまうのだ。
そんなな感情を、棒状の食べ物を食う女装の写真に対してもつい抱いてしまう。
そしてつい、
「同じバナナなら、ここは棒状でもない東京ばななを食べるくらいの攻めた一枚をタイムラインに放ってくれよ…」
と思ってしまう私である。
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