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『無理(上・下)』〜こんな終わり方ってあり?!

「理屈の通らない人間の怖さを改めて知った」―本文より。

この小説は、まさにそんな人間がたくさん出てきます。世の中には、話しても分からない人もいるんですよね。この物語に出てくる理屈の通らない人は、物事を歪めて解釈し、犯罪に手をかけてもなお自分は悪くないと言い、人を巻き込んでいきます。迷惑極まりない…。

*あらすじ*

合併で生まれた地方都市・ゆめので、鬱屈を抱えながら暮らす5人の男女―人間不信の地方公務員、東京にあこがれる女子高生、暴走族あがりのセールスマン、新興宗教にすがる中年女性、もっと大きな仕事がしたい市議会議員―。縁もゆかりもなかった5人の人生が、ひょんなことから交錯し、思いもよらない事態を引き起こす。【「BOOK」データベースより】

*本について*
・ミステリー
・群像劇
・グロさ無し

*ボリューム*
720ページ(上下巻合わせて)
私は読むのが遅いので、1冊4時間くらいかかりました。

*登場人物*
5人の登場人物の目線で、お話が進んでいきます。

久保史恵
受験に悩む高校生。東京で女子大生になるのが夢。

相原友則
市役所職員。生活保護課。妻と離婚し、一人暮らし。人間不信。悪趣味に走る。

加藤裕也
元暴走族。電気保安センターで働く23歳。詐欺商法に近いことをしている。別れた妻との間に息子がいる。元妻は、生活保護を受けている。

堀部妙子
48歳の警備保安員。スーパーでの万引き犯を捕まえる仕事。新興宗教に入っている。現実に不満を持つ。

山本順一
市議会議員。もっと大きな仕事がしたいと思っている。23歳の秘書と愛人関係。ヤクザとも関係がある。

*感想*

この5人は全く関わりがないのですが、最後に一つに繋がります。「ここぞ!」とばかりに話が盛り上がって、次の展開に期待してたら、完結!?高揚した気分をどこに持っていっていいのか分からなかったです。 不完全燃焼。

登場人物5人の「無理」なシチュエーションに、私は踊らされ、振りまわされました。

学歴、欲望、着飾ることしか見えてない、登場人物たちが無理でした。でも、こんなに読者をイラっとさせたり、「こんな人いるよね!」と思わせたりするのが上手いな〜と感心しました。気がつけば、物語の世界に引き込まれて、それぞれの登場人物の隣にいるような気分でした。「もうやめなよー!騙されてるよー!」、「もっと頭使おうよー!」と、心の中で口出ししていました。”自分しか見えてない”のは、人や環境に流されて、取り返しのつかないことにもなるんですね。

この物語に出てくる登場人物たちは、弱い者にだけ強いです。さらに孤独で、拠り所を必要として、依存していくような印象を受けました。

新興宗教にハマる妙子にはツッコミどころ満載でした。「現世の苦痛を捌けは、来世にはしあわせが待っている」。いや、来世とか自分にはわからんやん?いま、幸せになれよ!と、言いたくなりました。

史恵のその後は描いてほしかったですね!裕也と先輩の柴田は結局どうなったのか…裕也の子供はどうなったのか?文則の子供の話も、うやむやになってしまってました。妙子は良い兆しが唯一、見えた登場人物ですが、それからどうなったのか。順一は特に救いようがないなー。小狡い悪。権力にものを言わす、強欲な政治家。彼の家族の目線でも、お話が描かれたらおもしろそう。お金も地位も無くなったあとの順一に、家族や愛人がどんな風な態度になるのか見てみたい。私って性格悪いですね。

キャラは批判しましたけど奥田さんが描くキャラは、奥田さんの愛情が込められていると感じました。絶妙な嫌味感、不気味さ、強欲さでした。それがリアルで、人間の汚い部分が見せつけられました。

「まだ書きかけ?」と思うような終わり方で、納得がいきませんでしたが、その他は楽しめて読めました。


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