【第29話】呪いの言葉さん、さようなら
未だ私にまとわりつく、呪いの言葉たち。これらは、怒りが最高潮に達した父の口から「必ず」吐き出されていた。毎日のように、その言葉で心をめった刺しにされ、傷口をえぐられるように感じていた。
癒やす方法はただ一つ。
自分にかける言葉を変えること。
*読む時のお願い*
このエッセイは「自分の経験・目線・記憶”のみ”」で構成されています。家族のことを恨むとか悲観するのではなく、私なりの情をもって、自分の中で区切りをつけるたに書いています。先にわかって欲しいのは、私は家族の誰も恨んでいないということ。だから、もしも辛いエピソードが出てきても、誰も責めないでください。私を可哀想と思わないでください。もし当人たちが誰か分かっても、流してほしいです。できれば”そういう読み物”として楽しんで読んでください。そうすれば私の体験全部、まるっと報われると思うんです。どうぞよろしくお願いします。
*読む時の注意*
このエッセイには、少々刺激が強かったり、R指定だったり、警察沙汰だったりする内容が含まれる可能性があります。ただし、本内容に、登場人物に責任を追求する意図は全くありません。事実に基づいてはいますが、作者の判断で公表が難しいと思われる事柄については脚色をしたりぼかして表現しています。また、予告なく変更・修正・削除する場合があります。ご了承ください。
呪いの言葉集(ほんの一部)
・しょーもない女
・親に感謝しろ!
・女のくせに…
・俺はいつも正しい。だからお前が悪い!
・親を見捨てるんか!薄情者!親不孝者!
・お前なんか娘じゃない。勘当や!
・親に楽させるのは当たり前
・誰のおかげで大きくなったと思ってるんや
・親孝行するのは当たり前。だから、金よこせ
・金がない!どうすんねん!
・子供は親の言うとおりにしろ!逆らうな!
・お前が我慢しとけばええ
・男をたてろ!女は黙ってろ!
・俺はこれだけしてやってるのに、喜べよ!
・お前は何もできてない
・お前は立派なことはできひん。無理や
などなど…挙げ始めるときりがない。父は男尊女卑を絵に描いたような人で、自分に従う人”のみ”を良しとしていた。成長に合わせて、父の理不尽や暴力に耐えかねた私は、少しずつ彼に言い返すようになっていったが、その度に「女」で「彼の子供」である私が反抗するのが、何よりも腹がたったのだろう。虫の居所が悪い時などは「死ね」「生まれてこんかったらよかったのに」とさえ罵られる始末だった。
父は、私や妹を物理的に殴ることはしなかったが、言葉の暴力は日常茶飯事。単に「言葉」と侮ることなかれ。上記を怒鳴る声を毎日浴び続けた結果、突然の大きな声・音を聞くだけで、心臓のあたりがズキズキと痛むようになってしまった。
実は、バッタモン家族を抜け出した今も、”傷口”は開ききったまま。まだまだリハビリ中の身と言えるだろう。例えば、少し気分が落ち込んだり、新しいことを始めようとすると…
お前には無理。価値がない。しょーもない女。私は何もできない。今まではトライしなかったから、これからもできないまま。これから頑張っても無駄。駄目、しょうもないやつだ…
こんな、”なごり”のような言葉が心の中に浮かんでくることがある。でも、これは錯覚。もう私を傷つける相手がいないのに、自分に酷い言葉を投げかける必要はないと気がついた。
そして、私は自分で、自分にかける言葉を変えることにした。
私にならできる。素晴らしい価値が眠ってる。私はできる。今まではトライしなかったから、できひんかっただけ。これから頑張ればいい。成長、成長。
父の言葉がよぎったら、心の中でこんな風につぶやくのだ。
友達、旦那さん、信頼できる人たちの存在も、私を支えてくれる。でも、人の言葉「だけ」では変われない。自分の思考を支配しているのは私だから、呪いの言葉は自分で拭わないとね。
自分に「できる」という声かけをしてから、父の呪いの言葉に負けてしまうことは少なくなってきた。些細な「できた」ことも見逃さずに、心の成長も認める。
自分にかける言葉が変わったから、意識も変わった。私は、ちょっとずつ「私」を成長させたい。時間が必要なこともあるから、焦らずに自分のペースで進んでいこうと思う。
呪いの言葉さん、さようなら。