引っ越し前日にスマホを紛失した話(後編)

※この話は以下の記事の後編となります。


引っ越しの前日。私はスマホを紛失してしまいました。
正確にはスマホを妻の車の中に置き忘れてしまったのです。
※細かい話は、どうか上述の前編をご覧ください。

現在時刻は、午後十時半。
前編の通り、迷惑電話まがいの鬼電により、やっと出てくれた弟に賭けて
私は再度実家に電話を掛けることにしました。

目的は以下の通りです。
・母と通話し、妻の電話番号を聞く。
・妻に電話し、車の中を確認してもらい、
 スマホを明日の引っ越し時に持ってきてもらう。

ここまでを実現するために、まず弟の警戒を解かなくてはなりません。
私は公衆電話に積んだ10円玉を投入し、ダイヤルしました。

トゥルルルルル...

(まずは弟に実兄であると伝える。
 その後、母に代わってもらう…話はそれからだ…)

既にこの時点で不安要素があります。
首都圏から県外まで、10円では十数秒しか通話できません。
弟に繋いでも、母に電話を代わるまでに電話が切れてしまうでしょう。

しかしながら、公衆電話の上にはありったけの10円玉(4枚)があります。
(すでに1枚浪費しているが)

私は「これだけあれば、要件を伝えられるだろう」と思っていました。

トゥルルル、ガチャ!

弟「もしもし」

私「(よし!弟だ!)もしもし!久しぶり!○○だけど!」

弟「…あぁ!○○君か!こんな時間に電話来たからビビったわ笑」

私「(さすが、兄の声と一発で判断できたか涙)悪いね💦
  実はスマホを紛失してしまって、公衆電話から掛けているんだ!
  お母さんに代わってくれる?!」


弟「あぁ、分かった。」

…しばしの沈黙…

ツー、ツー、ツー

ここまでで約12秒。第一段階は突破。

(次に電話をした時に母が出てくれば、ゴールは目前だ!)

私は2枚目の10円玉を投入してダイヤルしました。

トゥルル、ガチャ!

弟「もしもし」

私「(いや弟かよ)もしもし!○○だけど!お母さんに代わって!」

弟「笑…了解。ちょっと待っててね。」

私「(母さん、待機しててくれよ…)」

…しばしの沈黙…

ツー、ツー、ツー

間髪入れずに3枚目の10円玉でダイヤルします。

トゥル、ガチャ!

弟「もしもし」

私「(なんでだよ)お母さんに代わって!」

弟「笑笑…了解。」

母「もすもす~スマホ無くしたんだって~こんな遅くに大変だね!」

私「いや~、心配掛けて申し訳ない!
  悪いんだけど○○ちゃん(妻)の電話番号教えて!」


母「オーケー。ちょっと待っててね。」

…しばしの沈黙…

ツー、ツー、ツー


ダメだ!10円じゃ真面に会話できない!!

私は(最初からそうすれば良いのだが)100円で電話することにしました。
とは言っても、財布には1000円札1枚しかありません(悲しいことに)
とりあえず、気分転換も兼てて自販機でお札を崩すことにしました。

私「(落ち着け…こういう時はお茶だろ…)」

ピピッ!ガシャン!!

お茶を取って、大急ぎで公衆電話に戻ります。
電話機の上にお茶のペットボトルを置いて受話器を手に取ります。


途端に凍り付きました。



「職業病」という言葉があります。

医学的には、職業上の特定の業務に起因する危険因子によって生じる疾病の総称を指します(画面の凝視による眼精疲労などが一例)

一方で派生的な意味として、特定の業種・業界において常識とされているものが、世間一般から見れば非常識だったり、不可思議に映ることがらも「職業病」と言われます。

ちなみに10年以上IT業界に従事している私の職業病は…

①机に突っ伏して寝る。
②椅子を倒して寝る。
③机の下で寝る。
④人の顔を見ないで会話をする(ただの人見知り)
⑤虚空に文字を書く。
⑥ろくろを回す(画像検索してください)
⑦日常生活でミスをした時に(Ctrl + z)と思う。
⑧なんでも電子マネーで決済する。

他多数。

生活を豊かにするために仕事に注力することは大事なことだと思います。
しかし、それ故に私生活に悪影響が及んでは元も子もありません。

心当たりがありますでしょうか?
もしそうなら、落ち着いて自らの一日を見直してみてはいかがでしょうか。
きっと新しい発見があると思います。

私は皆さんの健康的な【Work & Private Life】をお祈りしております。


時は遡り。
受話器を取った私は激しく狼狽していました。

私「(あれ…100円玉は…?)」

おつりを取り忘れたわけではありません。
いつもの癖で電子マネー(Suica)でお茶を購入してしまったのです。

私はとりあえず、気分転換も兼てて自販機でお札を崩すことにしました。

私「(落ち着け…こういう時はお茶だろ…)」

ウィ~ン!ガシャン!!

忘れずに100円玉を取り、公衆電話までダッシュしました。
2本目のお茶を公衆電話の上に置き、100円玉で実家にダイヤルします。

トゥルルルルル…トゥルルルルル…ガチャ!

母「もすもす~」

私「お母さん!折り返し遅れてごめん!!」

母「いや大丈夫。○○ちゃん(妻)の電話番号だよね。」

…大急ぎでメモする私…

私「ありがとう!夜遅くに本当にごめんね!
  ○○(次男)にもお礼を伝えて!!!」


母「う~ん、分かったよ。」

私「あ、ちょっと待って!
  ○○ちゃん(妻)にこれから公衆電話から電話が来るけど、
  それは僕であることを伝えて!!」


同じ失敗は踏みません。

母「電話終わったら、すぐに寝なさいよ」

私「…はーい」

ツー、ツー、ツー

私は数分待ってから妻の電話番号にダイヤルしました。
妻は呆れ笑いながらも車の中から携帯電話を探して連絡してくれました。
翌日持ってきてくれるお願いもできたので、これで一安心です。

家に帰ったら引っ越しの最終確認をしなければなりません。
胸を撫で下ろした私は、2本のお茶を鞄に突っ込んで公衆電話を出ました。

「どうかされましたか?」

オタオタしながら公衆電話を出た私に、警察官がそう尋ねました。

どうやら小一時間近く、公衆電話や自販機を行ったり来たりしていた私を不信に思って心配して話掛けてくださったようです。
駅前が交番なので、私の姿はさぞ怪しく見えたことでしょう。

結局、家に着いたのは12時を回ってからで、翌日は引っ越しなのにも関わらず、興奮して私は一睡もできずに夜を明かしましたとさ。

めでたしめでたし




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