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深いぜ。「未来の図書館計画」こと、フューチャー・ライブラリー。

100年という一世紀先を見据える「未来の図書館計画」こと、フューチャー・ライブラリー。

「未来のことを考えて、行動する」とは、どういうことなのかーー、というのを、インタビューや執筆を通して考えさせられている昨今です。

気候変動対策のような火急の問題がある一方で、

100年後の未来も紙の新刊の本を読む文化が続いていたらいいな、という

なんというか、どちらの方が急務かといった比較をすること自体、無意味だとは思うのだが、

「それ、そんなに重要かしら?」と思う節も無きにしもあらずな、大規模な取り組みというのがある。

フューチャー・ライブラリーについて、ざっくり説明すると、こんな感じ。

プロジェクトが始まったのは2013年頃。発祥はノルウェーの首都オスロ。
プロジェクトの内容は、毎年、作家や詩人を世界各地から一人選出して「新作」を書いてもらうというもので、

2014年はカナダ出身のマーガレット・アトウッド 、
15年は英国出身のデイヴィッド・ミッチェル、
16年はアイスランド出身のショーン、
17年はトルコ出身のエリフ・シャファク、
18年は韓国出身の韓江(ハン・ガン)

と、まぁ、その国や言語圏で最も読まれている著名作家たちが選出されてきました。
これが、約100年後の2114年まで続いて、合計100タイトルの新作が揃ったら一般公開されるーー、というもの。

以下、執筆記事から抜粋。

選ばれた人たちは、その国や言語圏で最も読まれている著名作家の一人。それだけに、文学ファンからの注目は熱い。しかし、それらの「新作」は100年後まで、公開されることはない。すべての原稿は、2020年に完成予定のオスロ公共図書館(ダイクマン図書館)の新館にまとめて寄蔵される予定で、100年後の解禁日まで封印される。そのときがきたら「新刊」、つまり紙に印刷された本として、まだ見ぬ未来の人たちへ届けられることになっている。

ただ、これって、言い換えると、
100年後の解禁日まで封印されるので、いまこの記事を読んでいる人たちの中で、これら新刊を読むことができる人は、まぁ、劇的な寿命改善でもされていない限りいないだろう、って話でもあります。

「タイムカプセル」や「ノアの箱船」のようなプロジェクト、と聞くと、なんだかワクワクしてきますが、「あれ、でも、読めねーじゃん」と、肩透かしを食らう感じです。
 
完成を見届けることもできないでしょう。
それを分かった上で、このプロジェクトの魅力とはなんぞや、というのを、運営者のアン・ホヴィンドさんにスカイプで聞いたわけです。

フューチャー・ライブラリーが約束するのは大きく2つ。2114年の地球上に、豊かな森があるとこと、デジタルではなく紙の新刊が世にでることだ。ただし、このプロジェクトに賛同する人たちが地球上に居続ける限りの話。

どうなるかわからないのが「未来」。
そうはいっても、未来はこうであってほしいなと「希望」を持つのが、人の常で、
その希望が強くなると、そうであるに違いないという「信念」も生まれる。

映画『マトリックス』ではないが、世界を導くのは人の信念に他ならなかったりするんじゃないかということを考えさせられるトピックでした。
 
ポイント1:
夢はときに、人の一生よりも大きく、長い時間を要するもの      

着想から実現までのスパンはなるべく短く、スピーディーであることが礼賛されがちな昨今だが、「夢」は「ときに、人ひとりの一生よりも大きく、長い時間を要するもの」とアンさん。

ポイント2
フューチャー・ライブラリーは「ノルウェーだからこその計画なのかもしれませんね」。

アンさんは、そう話していました。つまりは、金銭的な利益が最優先の国や、内戦や慢性的な貧困問題を抱えている国では、生まれなかったであろうプロジェクトだということ。
 
 ノルウェーでは、森はパブリックスペースであり、国民みんなのものという考えが浸透していたり、その管理や林業に携わる人たちの生活も、ちゃんと国が保障しているそうです。

 また、国民の税金が使われる新しい図書館の建設についても民意を反映した話し合いもちゃんと行われているとも。「そういう国だから信じ続けられる、というのはあるかもしれませんね」と言っていました。

深いなー。卵が先か、鶏が先かと通ずるところがあるような気がしていて、これ、あれこれ考え出すと、迷宮入りです。

改めて考えると、
「本当に100年も続けられるのか」「続けることに意味はあるのか」という問答には何の意味もないのかもしれません。重要なのは、人が「何を信じるのか」そして、その信念をもとに「どう行動し続けていくのか」の方で。
あくまでも個人的な意見ですが、このフューチャー・ライブラリーの一番の見所は、そんな、このプロジェクトに関わっていく人たちの信念・意思決定プロセスなんじゃないかと感じております。
もちろん、作家がどんな作品を書いているのかも気になりますが。

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