「生きのびるためのデザイン」
「生きのびるためのデザイン」(ヴィクター・パパネック 没1998)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4794974132/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o02_s00?ie=UTF8&psc=1
1974年つまり自分が大学に入った年に刊行された本で、50周年の今年2月に新版として再刊行された。題名は耳にしていたが未読だったのでこれを機に購入。
「デザインの本」は基本的には自分はほとんど読まない。自分にとって「デザイン」はデザイナー各自が自分で考えるべきもので、教わるものという感じではない。読んでもたいていはイライラする。
自分がいろいろとデザインを考えるにあたって、デザインは人が生物として「生きている」ことに繋がっているという思いがあって、この本は読もうと思った。
さすがに出てくる状況や作例などは古いもので、真意がくみとりにくい部分はある。現代的な感覚からすると話しが冗長で端的でない感じもする。それでも芯にある問題意識は強く支持したい。骨のある文章を読める人にはお勧めしておく。
まえがき
第一部 デザイン、その現状
1. デザインとは何か/デザインの定義と機能複合体
2. 集団自殺/職業としてのインダストリアル・デザインの歴史
3. 高貴な俗物の神話/デザイン、〈美術〉、工芸
4. 〈自分でやる〉式の殺人/デザイナーの社会的、道徳的責任
5. 現代のクリネックス文化/廃物化、長持ち、価格
6. いんちき薬売りとサリドマイド/豊かな社会のマス・レジャーといんちき流行品
第二部 デザイン、その可能性
7. わかある反乱/創造性対同調性
8.努力もしないでデザインに成功する法/責任あるデザインの新しい目標
9. 知識の木ーー生体工学/生物学的原形の人工系デザインへの適用
10. 人目をひくようなはでな消費/環境汚染、混み合い、飢餓、およびデザインされた環境
11. ネオン・ブラックボード/デザイナーの教育と総合デザイン・チームの構成
12, 生き残りのためのデザインとデザインによる生き残り/われわれのなしうること
現時点とくに日本で一般的にいえば、デザインおよびデザイナーは基本的にはひとつの「職業」として捉えられている。つまりそれは「経済活動」に組み込まれた行為である。
だからデザインの語り口のほとんどは、「現状の社会」にどうやって対応するか、「どうすれば売れるか」に焦点(フォーカス)されている。多くのデザイン書籍やSNSメディアのとりあげるデザインは「ハウツー」に関してである。
本書の冒頭「人はだれでもデザイナーであり、われわれのすることはすべてデザイン」とある。つまりここでは「人の行為としてのデザイン」が主題である。そして我々が今後生きのびていくためには、そういうデザイン行為が重要な意味を持ってくる、と説く。そして「形を考えるだけのデザイン」を糾弾している。
自分は、この二つのスタンスのどちらかに軍配をあげるつもりはない。これらは現在あるデザインの「二つの側面」である。自分はただ、後者が忘れられてしまうことを危惧する。経済一辺倒でデザインを語られることに声をあげたい。
(240324)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?